スタッフエッセイ

2022年:ゼロコロナ政策により中国の課題が浮き彫りになった年 2023.01.10 スタッフエッセイ by 沖虎令@上海

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  2022年の回顧となると、中国、かつ上海に住む身としては、ロックダウンをはじめとする新型コロナ感染・規制、しかない。3月から12月まで2/3くらいは在宅勤務だった。8月にはほぼ1ヶ月日本に一時帰国し在宅勤務だった。

 2022年上海市公表の十大ニュースは、

「1.上海市第20回共産党大会精神を深く学習:2.習近平、第5回輸入博開幕式で演説:3.江沢民同志上海で逝去、習近平追悼の辞:4.民衆が力を合わせ上海防疫戦勝利、適切な貿易措置を的確に実施:5.中国共産党上海市第12回代表大会開催、上海市幹部交代:・・・・10.通年で40度以上7日、上海市酷暑記録更新」となっている。

 中国の政治体制は政治というより、官僚機構に近い。政府というより役所だ。なので、こうした通り一遍のニュースが選ばれる。かつ、悪いことは取り上げない。

 とはいえ、上海の世間の回転は速く、ロックダウンも感染(筆者も12月にPCR陽性になり発熱した)も、すでに終わったことで、当地ではホットな話題ではなくなっている。ここでは、今後に影響を与えるであろう、新型コロナに関係する事項を列挙してみる。

1.鎖国

 2020年1月に武漢で新型コロナ感染発生が伝えられてからちょうど3年。この間をひとことでいうと、「鎖国」である。2021年まで緩急ありながらビザの取得が困難で、2022年の中盤まで、帯同家族のビザまで厳しかった。いまだに観光での海外から中国への入国は不可である。更に、一番厳しい時期、中国到着後の隔離が28日以上という都市もあった。航空便は便数が極端に減り、運賃も高騰した。

 同時期に米中摩擦が激化し、ファーウエイを筆頭とするハイテク業界への米国の規制が強まった。半導体業界はこの影響を最大に受け、2020年に世界トップ10に入ったファーウエイのスマートフォン用半導体部門は今やほぼ解体され、同社は自動車用半導体に主力を転向した。

 この状況に対し、中国国内では、「自給自足、国産代替」を掲げている。当然これは無理な話だ。そもそも、中国がハイテクの世界で躍進したのは、米国をはじめとする他国からの技術を移植しているからに他ならない。日本、韓国、台湾が身近にあり、これらの地域に中国人が大勢おり、技術やビジネスの習得は容易だった。

 技術移転には、産業スパイのような手を使うのではなく、単純にターゲットとする産業、会社、製品に関わる人材を引っ張ってきた。鎖国によりこの手が使えなくなった。各国ともコロナ禍でむき出しになった中国政府の利己的性質をみて、技術流出への警戒心が強くなった。

2.財政難

 先日、人民元で3年定期、年利2.9%の定期預金を作った。投資信託のような商品だと、4%、5%もある。逆に借金の利率をみると、定期預金の口座のある銀行のカードローンの利率が年7.2%。中国のGDPは2022年、目標の5%を下回り、4%を切ったともいわれるが、仮に5%だとしても、一般市民の標準的投資の利息とほとんど同じだ。5%成長でも、インフレ率を考えると全体として実質赤字になる計算だ。

 新型コロナ感染の流行で、中国政府の財政問題が実感されるようになった。PCR検査の費用は地方政府負担で、10月ごろから財源不足で有料検査にする自治体が出てきた。12月に中国がゼロコロナから転換した理由は財政問題である。景気停滞による税収不足と、不動産不況による土地売却減が理由だ。すでに、昨年から上海のような大都市の地方政府は公務員の給与を減らしている。

 以下はIMFによる中国政府(中央、地方)負債推移、見込み。2010年~2022年のCAGR15.8%、2020年~2027年のCAGR13.9%で、2024年に対GDP 100%に達する見込みとなっている。

(単位:兆人民元)

3.若年層への逆風

 2022年7月、景気低迷により16~24歳の失業率が19.9%と報道された。コロナ禍や、IT企業への締め付け、教育業界の規制、不動産不況、といろいろな理由が挙げられている。最大の問題は、製造業の不況だ。製造業は大量の雇用を生む。賃金上昇=コスト増とコロナによる規制、米中摩擦をはじめとした地政学的理由からの米国などの自国回帰の流れ、などが重なり中国の製造業は厳しい状況にある。

 失業が増えると結婚や出産が減り、課題となってきた人口減に拍車がかかる。

 ここ数年、中国政府は就職のミスマッチを防ぐべく、ホワイトカラー抑制策を採っており、現在上海では普通高校(高級中学)への進学枠が50%だ。普通高校に進まず工業高校などに行くと大学に進学できなくなってしまう。16歳で人生の岐路に直面する。

 等々、中国の若年層に厳しい事態が複数ある。

 「自主路線→鎖国→自給自足」、「財政難」、「若年層への逆風」はみな、ここ数年来浮上していた中国政治・社会の特徴だが、コロナ禍によりクローズアップされた。

 今後中国政府はこれらの課題に対処してゆく。そのため、関連分野に政府の優遇策や投資が発生する。中国ビジネスを行う上で、課題を認識し商機につなげることが重要である。

by 沖虎令@上海

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