社長エッセイ

社長の日曜日 vol.65 パリ・オリンピック 2024.08.05 社長エッセイ by 須毛原勲

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 先週、中国へ出張に行ってきた。北京は暑かったが、湿気が少なかったため比較的快適であった。羽田空港に戻った瞬間、湿気が肌にまとわりつき、帰国を実感した。

 北京首都空港で目に飛び込んできたのは、オリンピック選手たちの健闘をたたえる超巨大看板だった。どの国も同じように、オリンピックの開催期間中は自国の選手たちにエールを送るものだ。

 出張中、早朝の静かな時刻にホテル周辺を散策した。その地域は世界各国の大使館が立ち並ぶエリアだ。大使館街をゆっくり歩いていると、フランス大使館の壁に目が留まった。「PARIS2024」と大きく描かれた文字は、パリ・オリンピックにかける意気込みとプライドを感じさせるほど大きかった。大使館街の中でひときわ大きいのはアメリカ合衆国大使館。お屋敷のようなこぢんまりとしたブルネイ大使館。マレーシア現地の雰囲気を感じさせる建築のマレーシア大使館。更に散策を続ける中で、イスラエル大使館の塀に何かが描かれていることに気がついた。大きな人の顔の写真が連なっており、初めはその意図が読み取れなかった。塀に沿って歩いていくうちに、これらの顔が続いていることに気づき、距離をとって全体を見ると、それが現在ハマスに人質とされている人々の顔であることが理解できた。写真を撮ろうとした瞬間、私服の人が近づいてきたため、急いで携帯を下げた。普通の道行く中国人かと思ったら、警備の人が普通の格好をして周りを監視していたようだ。北京の朝の散歩は、予期せぬ発見と国際的な問題に思いを馳せる時間となった。

 夜、中国人の友人と亮馬河沿いのレストランで会食した。ゲリラ豪雨のため、普段なら人々で賑わうエリアも静かで、人通りは少なかった。レストランは雨のせいか、景気が悪いからなのか、閑散としており、私たち以外に客は一組だけだった。友人が持っていたキャンペーンのクーポンを使ったため、食事の値段は思ったよりも高くなかった。中国の景気は相変わらず良くないらしい。中国政府があらゆる分野で予算削減を進めており、それに伴い大型プロジェクトの数も減少しているとのこと。友人の会社の製品も新製品よりも古い機種の保守部品や消耗品の販売が伸びているようだ。新しい機器に買い替えるより古い製品を修理して長く使おうとしているらしい。多くの日系企業がこの経済情勢を受けて人員削減を行っているとのこと。友人は、保険の意味も込めて、最近日本にマンションを購入したという。中国の景気の回復はまだまだほど遠いようだ。

 先週のこのブログで中国自動車市場の現状をまとめたが、今回は新エネルギー車の現況について以下のように整理してみた。情報はマークラインズ及び中国自動車協会出典による。

1.新エネルギー車の全体の状況

 2024年上期における新エネルギー車(EV/PHV)の販売台数は469.5万台で、前年同期比24.0%の増加を記録した。全体の販売台数が5.7%増加していることを考慮すると、新エネルギー車の市場は順調に拡大していることが確認できる。新エネルギー車が全体に占める割合は33%で、前年同期は27%であった。特に、EVの販売台数は278.1万台で前年同期比8.5%増、PHVは191.3万台で前年同期比46.5%増と、ほぼ倍増している。

 中国の新エネルギー車市場で、プラグインハイブリッド車(PHV)の販売が増加している主な理由は以下の通りである。

技術の進化と効率性 :

PHVは、電気とガソリンの両方をエネルギー源として使用できるため、電池の持続力や充電インフラの限界に依存しない柔軟性を提供できる。これが、特に充電設備が整っていない地域での利便性を向上させている。

市場と消費者の需要 :

PHVはEVと比較して初期コストが低く、燃料の選択肢が多いため、消費者にとって魅力的な選択肢となっている。また、一部の消費者は完全な電動化よりも段階的な移行を好むため、PHVが好まれる傾向にある。

 このように、技術の柔軟性、市場の動向が相まって、中国におけるPHVの伸びが加速している。

2.BYD(比亚迪)

 BYDは中国でナンバー1の自動車メーカーであり、新エネルギー車の市場でもナンバー1の位置を占めている。2024年上期のBYDの新エネルギー車販売台数は152.3万台である。全体の伸長率が前年同期比5.7%であるのに対して、新エネルギー車の販売台数は前年同期比21.8%と大幅に増加している。新エネルギー車がBYDの全体に占める割合は11%である。特に、PHVの販売は前年同期比28.2%増であり、EVの販売台数71.7万台に対して、PHVの販売台数は80.6万台となり、初めてPHVの販売台数がEVを上回った。

3.日本企業

 中国市場で苦戦が報じられる日本企業は、確かに厳しい状況に置かれている。特に、トヨタ、ホンダ、日産といった日系三大自動車メーカーの状況は以下の通りである。

 トヨタは、2024年上期の電気自動車(EV)販売実績が27,087台であり、このうち24,079台はトヨタと中国の合弁企業のトヨタ一汽が製造販売しているbZ3である。トヨタが戦略EVとして市場に投入したSUV型EV、bZ4Xは非常に苦戦している。2023年上期には7,278台を売り上げたが、2023年下期には2,068台に減少し、2024年上期には3,008台のみの販売に留まった。ホンダと日産の状況も、詳細を述べるまでもなく非常に厳しいものがある。EVまたは市場が急成長しているプラグインハイブリッド車(PHV)の競争力ある車種を早急に中国市場に投入しなければ、さらにシェアを失うことになるだろう。

 北京では、新エネルギー車のナンバープレートは緑色であるため、すれ違う車が新エネルギー車であるかどうか一目で判別できる。今回の出張中、散歩をしているときも、車で移動しているときも、日本車の緑色ナンバープレートを1台も見かけなかった。

 オリンピック観戦を楽しみにしていたが、北京出張中は携帯での情報更新に頼るしかなく、日本選手の活躍を小さな画面越しに追う日々であった。帰国後、溜まっていた新聞を飛ばし読みしながら、日本選手の様々なシーンを思い浮かべた。特に印象に残っているのは、柔道の阿部詩選手の2回戦での敗退だ。オリンピックでの兄妹2連覇を目指す重圧、周囲からの期待、そして自己へのプレッシャーが、彼女にどれほどの感情を抱かせたのだろうか。彼女はまだ若い。次のロサンゼルスオリンピックでの活躍を期待したい。

 先月26日に開幕したパリ・オリンピックも17日間の開催期間の折り返し地点を過ぎ、残り7日間となった。寝不足になりそうだが、できる限り多くの試合を生で観戦したいと思っている。

 ひぐらしやオリンピックも後半戦

8月4日

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by 須毛原勲

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