初めての海外進出―成功への鍵

【第1回】なぜ今、海外進出なのか? ー中小企業トップとプロジェクト責任者への開戦ベル 2025.06.10

【このブログが目指すもの】 

国内需要が頭打ちの今、海外進出は「やりたい」ではなく「やらねば」の選択肢へ変わった。
しかし実務書は大企業の壮大な成功譚か、机上のマニュアルが多く、中堅・中小企業が初年度を生き延びる手順は示されていない。

本シリーズでは、中国、東アジア、東南アジア、中近東、アフリカそして米国で30年の試行錯誤を重ねた筆者が、① 何から手を付けるか、② 90日でどこまで進めるかを具体的に提示する。

▼読者は次の二者を想定する。

読み終わるたびに「次週やること」が明確になることを目指す。

海外進出=“生存戦略” その3つの理由

  1. 人口減少と購買力停滞──2035年人口1億1,900万人、高齢化率33%。
  2. 競争のコモディティ化──技術優位は短命、ニッチも瞬時に模倣される。
  3. 円安と原材料高──「国内生産=低コスト」の幻想が崩壊し、外貨で稼ぐ体質が必須。

 よって「海外も視野に」ではなく「外貨を稼げなければ淘汰される」時代に入った。

 ※トランプ米大統領の相互関税により世界経済は揺れて、一時期の円安からは多少は円高基調にはなっているが、まだまだ、円安であることには変わらない。

海外進出の動機は「攻め」と「守り」の二択

類型シナリオ成功の鍵
攻め国内好調なうちに第二成長エンジンを確保投資余力を活かしたスピード参入
守り国内停滞を打破し販路と原価を刷新小さく始め損益分岐を早期に超える

共通項は“行動こそ最大のリスクヘッジ”。調査途中で撤退しても、その学びは必ず資産になる。

海外進出では Goal と Objectives を峻別する必要がある

Goal は羅針盤、Objectives は航海術

海外進出を進める上で必要な3つの覚悟

企業のトップは海外進出を進める上で以下の3つの覚悟を持つ必要がある。

  1. 追加投資を許容する胆力──資金・人材・時間を惜しまない。
  2. 失敗を称賛する文化──挑戦後の是正を評価指標に組み込む。
  3. 即決即断の速度──情報不足を理由に決断を先送りしない。
◆Episode 01 海外で勝負するということ

1989年、私は初めて米国出張を命じられ、現地法人の社長宅に招かれた。社長は「膝の上に乗るコンピューター」という概念を製品化し、最大市場である米国での事業開拓に挑んだ人物である。

「ラップトップパーソナルコンピューターのモックアップを抱え、全米の COMDEX でディーラーを回り、『こんな PC なら買うか?』と聞き続けた。」

形すらない段階から夢を現実に変えたのだ。

「――お前、夢はあるか?」

星明かりの下で投げかけられたその言葉は、30年後の今も私の羅針盤である。

海外進出とは数字の勝負であり、同時に夢を形にする舞台なのである。

海外進出で必要な行動を加速させる3つのトリガー

  1. 数字を置く──完璧でなくてよい。数値が行動を具体化する。
  2. 期限を切る──締切がなければ計画は永遠に始まらない。
  3. 声に出す──トップの意思を明文化し、全員を同じ地図に載せる。

海外進出がもたらす“副次的リターン”

海外市場は売上・利益だけでなく、学習効果・組織変革・無形資産という3つの副産物をもたらす。

言語・商慣習・法制度の壁を乗り越えるたびに、社内には 

という企業 DNA が蓄積される。

これは為替や景気の波に左右されにくい永続資産となり、次なる海外プロジェクトや国内新規事業でも再利用できる。

三並走アプローチ―最低3か国を同時に走らせる理由

海外初年度を「一点突破」で臨むのは危険である。
文化・規制・チャネルが異なる3市場を同時に“走らせ”、比較検証 → 集中投資 → 捨てる判断を高速で回す。

これが筆者が30年の実務から編み出した「三並走アプローチ」だ。
1カ国目で躓いても2カ国目・3カ国目が残り、学習曲線と事業継続性を両立できる。
特に 北米・ASEAN・中国 の三極は市場規模と成長ドライバーが異なるため、多様な仮説検証に最適である。

今日の宿題
  1. 自社が海外へ出る動機を30文字で書く。
  2. 5年後の海外売上目標額と主要KPIを経営会議で合意する。
  3. 「90日以内にやるべきこと」をリストアップし、スケジュールに落とし込む。
次回予告

第2回「商品を“文化翻訳”せよ」――技術・行動・価値観の三層モデルで、あなたの商品を“売れる仕様”へ変換する手順を解説する。


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