【第3回】海外進出の規制・関税・為替を一気に捉える 2025.06.17
規制マップを描く――まず“通せるか”を確認
海外進出で最初につまずくのはマーケティングではなく法規である。
必要なのは「候補国×規制項目」の表を早い段階で埋めることだ。
規制層 | 主な法令例 | 具体チェック項目 |
---|---|---|
輸出管理(日本側) | 外為法、輸出貿易管理令 | 軍事転用可否、化学物質リスト該当 |
輸入規制(現地側) | 食品衛生法、医療機器指令、RoHS など | 試験報告書、現地代理人要否 |
特殊認証 | エネルギー効率ラベル、Bluetooth認証 | シール貼付義務、年次更新費 |
これを“規制マップ”と呼び、空欄がある限り量産スケジュールは確定させない。
HSコードと関税は粗利を左右する
HSコード(統計品目番号)は6桁まで世界共通だが、7桁以降は国・地域固有である。
分類を誤れば関税率が0%→12%へ跳ね上がることも珍しくない。
手順は3段階。
- 輸出国(日本税関)で仮分類
- 輸入国税関または代理業者へ事前相談
- 双方が同じ番号で見積書を作成
※FTA(自由貿易協定)適用国なら原産地証明を取得し、関税ゼロ化を狙う。
※ただし原産割合40%ルールなど原産地基準を満たさないと逆に追徴課税となるため注意が必要である。
【FTA早わかり:RCEPとCPTPP】
■RCEP(地域的な包括的経済連携)
ASEAN10か国に日本・中国・韓国・豪州・ニュージーランドを加えた計15カ国が2022年に発効。
2035年までに域内貿易の約90%で関税撤廃を目指し、累積原産地規則により部材を複数国で加工しても原産地要件を満たしやすい。
発効3年目の現在、ASEAN域内貿易は2024年に7%超増加し、2035年までに地域所得を年2,450億ドル押し上げる試算もある。
■CPTPP(包括的・先進的TPP、いわゆるTPP11)
日本、豪州、カナダ、メキシコなど11カ国が参加する高水準協定で、工業品の95%以上が即時または段階的に無税となるほか、電子商取引・投資・知財・労働など広範なルールを整備している。
2025年には英国が欧州で初めて加盟し、域内GDPシェアは約16%に拡大した。
FTAを活用する際は、(1)HSコード同一性 (2)原産地基準(累積可否) (3)バック・ツー・バック証明書の取得──この3点セットを必ず確認し、粗利試算に織り込むことが肝要である。
為替リスクを“設計段階”で封じ込める
- 決済通貨の固定:USD建てか現地通貨建てかを先に決め、見積書・契約書・請求書を統一。
- 為替感応度試算:±10%のレート変動で粗利が何%動くかをExcelで弾く。
- フォワード取引・NDF:年商規模に応じて銀行のヘッジ商品を早期に検討。(ビジネスが順調に動き出したら)
※数量が少ない初年度は粗利率より絶対額を守る方が重要である。
欧州向け家電で CE マークの高さが 5 mm 規定をわずかに下回り、通関で全量差し戻しとなった。
シール貼り替えと抜取再試験で数百万円規模の追加コストを負担し、発売は約1か月遅延。
マークの寸法ひとつでも市場投入が止まる例である。
- 商品の主要構成部品リストを作成し、日本側輸出管理番号(該非判定)を確認する。
- 輸入国税関のサイトでHSコード候補を2つ洗い出し、関税率をメモする。
- 見積FOB価格を用い、為替±10%で粗利が何円動くかを試算する。
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