価格設定の全体像
価格には2つのレイヤーが存在する。
- メーカー希望小売価格(MSRP) ― 市場での販売想定価格
- 日本からの出荷価格 ― 原価・為替・受け渡し条件などを織り込んだ卸価格
まず両者の目安を設計し、輸入国代理店に与える粗利率と物流費を見積もったうえで交渉を重ね、最終決定に至る。
MSRP と出荷価格の事前イメージがなければ適正な粗利を議論できない点に留意すべきである。
MSRP設定の3つのアプローチ
国内実勢価格換算法
日本で税別30万円の商品であれば、為替を1US$=150円と仮定して約2000US$が一つの目安となる。
現地税率や手数料を必ず確認し、後で修正可能な「たたき台」として活用する。
競合比較法
同カテゴリー製品の価格帯を調査し、自社のポジションを定義する。
消費財であればECサイト検索でも概算を把握できるが、BtoB製品では専門情報や現地ヒアリングが欠かせない。
代理店ヒアリング法
候補代理店に市場価格と必要粗利率を尋ね、エビデンスの提出を求める。
価格を意図的に低く示して有利な条件を狙う企業もあるため、証拠の提示と企業姿勢の見極めがポイントとなる。
市場価格を把握する難しさと関与姿勢
「自社が儲かれば販売価格は関係ない」という発想は危険である。
- 高値設定 → 販売停滞・ブランド毀損
- 低値設定 → 利益圧迫・安売り競争招致
市場価格は 取引先との対話・競合監視・定期レビューにより掴み取るべきであり、情報開示に消極的な企業とは長期協業が難しいと判断するのが適切である。
適正粗利と交渉術
代理店の意欲を引き出すには十分な粗利の設定が欠かせない。
ただし過度な値引きや購入数量連動の即時値下げは避けるべきである。
- 値下げ交渉が「ゲーム化」し、際限ない追加値引きを誘発する。
- 非現実的な発注数量が在庫過剰・キャッシュフロー悪化を招く。
数量が計画を大きく上回った場合は、報奨金やマーケティング協賛金で報いる方が価格一貫性を保持できる。
製品原価を俯瞰する
区分 | 主な内容 |
---|---|
直接経費 | 部材・梱包材、人件費、電力、金型・開発費など |
間接経費 | 工場維持費、間接部門人件費、管理・マーケティング費用など |
原価構成を明示しておけば、価格交渉時の説得力が高まる。
価格運用で徹底すべき2点
- 決定プロセスへの主体的関与
- 決定後も市場変動を継続モニタリング
この2点を徹底することで、利益とブランド価値を守りながら環境変化へ柔軟に対応できる。
ヒント1:事前シミュレーションが成功を呼ぶ
MSRP と出荷価格を想定し、代理店粗利・経費を織り込んで調整する姿勢が不可欠である。
ヒント2:競合調査+柔軟交渉
市場データを把握したうえで、Win-Win 条件を探る柔軟姿勢が成功への近道である。
ヒント3:恣意的値引きはブランドの敵
値下げではなく インセンティブ設計で代理店を動機付けるべきである。
マクドナルドのビッグマックやスターバックスのカフェラテ価格を基に購買力を比較する指標が存在する。
地域 | ビッグマック (US$) | カフェラテ (US$) |
---|---|---|
米国 | 5.69 | 5.00 |
中国・上海 | 3.53 | 4.25 |
シンガポール | 4.97 | 4.25 |
日本 | 3.19 | 3.50 |
地域差はあるものの 2~3 倍の開きは生じにくい。
日本での価格感覚を基に為替・税率・物流を積み上げれば、大きく外すリスクは低いという実戦知見である。
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