曼珠沙華と金木犀、そして慌ただしい日々
「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、秋彼岸を過ぎた頃から、めっきり涼しくなった。
朝のジョギングも、薄手のパーカーを羽織って走り出すようになった。いつものコースの道端には、赤と白の曼珠沙華(彼岸花)が咲き誇っている。曼珠沙華を目にすると、季節の移ろいを実感する。昨日は、今秋初めて金木犀の香りに気づいた。見上げれば鰯雲。時折気温が30度を超える日もあるが、確実に秋の様相となっている。
気づけばもう9月も終わろうとしている。今月は、新潟県の「東アジアバイヤー招へい企画運営業務」のための新潟県での長期滞在、上海・蘇州出張、そして先週の東京ゲームショウ2025では、当社パートナー企業Lan-bridge社の出展を支援するため幕張メッセに張り付いていた。大きなプロジェクトも動き出しつつあり、忙しく慌ただしい1か月であった。
季節は何となくもの悲しさを誘う秋の訪れだが、日常は容赦なく忙しさを増し、しみじみとした気持ちに浸っている間もない。
東京ゲームショウ2025と生成AI翻訳の潮流
世界最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ2025」が9月25日から28日までの4日間、幕張メッセで開催された。出展は1136社に上り、その過半を海外勢が占め、国際色豊かな場となった。テンセントをはじめとする中国・韓国の大手が大型ブースを構え、UAEや欧米企業も積極的に参戦。新作公開や多言語展開を前提とした戦略が目立ち、群雄割拠のゲーム市場で各社が競い合った。当社は初日から2日間のビジネスデーにおいて、Lan-bridge社※のブースをサポートした。(※中国の翻訳ソリューション会社、当社は日本の独占パートナー)
会場で特に注目を集めたのが、ゲーム翻訳における生成AIの活用である。グローバル展開の加速により多言語対応の必要性は急増する一方、短納期とコスト削減の要求は翻訳者に大きな負担を強いてきた。今後「AI活用が業界の焦点になる」との声は多い。ただし「翻訳の質は没入感に直結する」との指摘もあり、AIだけで完結させることは現時点では不可能である。最新のAIを活用しつつ、最終調整はプロフェッショナルの手で行うことが必須である。
ゲーム開発企業は多大な労力、資金、時間を投じて作品を生み出す以上、できるだけ多くの市場に展開して資金回収を進めたい。しかし、ゲームという特殊な翻訳領域に対応し、かつ大規模に同時並行で翻訳を進められる企業は日本には少ない。そうした中で、25年の歴史と1000人を超えるスタッフを擁し、中国の主要ゲームのローカライズやLQAで実績を重ねるLan-bridge社と、日本企業である当社SUGENAによるプロジェクトマネジメントの組み合わせは、多くの来場者から「ローカライズの最適解」として注目を浴びた。生成AIのスピードとネイティブ翻訳者による品質保証を組み合わせた仕組みは、効率と表現力を両立するものであり、大手ゲームメーカーとの個別商談においても「まさに業界が求めていた形」と高く評価された。
今回初めて東京ゲームショウに参加したが、出展者の熱気は圧倒的であった。会場にはゲームキャラクターに扮したコスプレイヤーが溢れ、カメラを構える多くの来場者に囲まれていた。ある中国ゲームメーカーのブースでは、キャラクターと瓜二つの容姿と衣装、振る舞いまで再現され、会場は大いに盛り上がっていた。コスプレ文化は中国、韓国、台湾、欧州など世界中に広がっており、今回の会場にも各国から多くのコスプレイヤーが集まっていた。
ゲームは日本が持つ強力なコンテンツであり、急成長を続けるゲームのローカライズ市場に挑むLan-bridge×SUGENAの取り組みは、AI時代における最適解であると確信した2日間であった。
故郷水戸での静かな時間
国際的な舞台を駆け抜けた後、静かに訪れたのは故郷水戸での時間だった。
久しぶりに水戸へ帰省し、少し遅めのお彼岸の墓参りをした。父が亡くなったのは10年前、そのとき私は昆明にいた。母が亡くなったのは8年前、そのとき私は北京にいた。二人とも死に目に会うことはできなかった。両親を失って初めて、その深い愛情を身に沁みて感じる。せめてお彼岸くらいは、こうして会いに行きたいと思う。
墓参のあと、介護施設に入居している叔母を訪ねた。
私が小学生の頃、伊豆・稲取の旅館で働いていた叔母に会うため、毎年夏休みには稲取へ出かけていた。 クマゼミを追いかけ、港の桟橋で小アジを釣り、夏休みに叔母に会えるのを心待ちにしていた。
やがて叔母は横浜で「梅林」という小料理屋を開いた。小さな店ながら、暖簾をくぐると煮物や焼き魚の匂いが漂い、常連客たちが安心して集う場所であった。板前さんがいたが、叔母が時折自分で作るモツ煮込みは格別だった。叔母は几帳面で働き者、誰に対しても笑顔を絶やさず、気配りのできる人であった。大学受験のときには叔母の家に泊らせてもらい、試験会場に行った。大学に入ってからも、特に金のない時はよく叔母に会いに行った。子のいなかった叔母は、私を実の息子のように可愛がってくれた。後に妻となる彼女を初めて紹介したのも叔母であり、叔母が彼女を気に入ってくれて嬉しかったことを思い出す。
今、叔母は97歳。来年2月で98歳となる。会話することはできなかったが、うっすらと開けた目と何か言いたそうな口元に、遠い夏の日の海の匂いと、あの頃の笑顔が重なった。
故郷での時間は、慌ただしさに突き動かされている私にしばしの静寂をもたらしてくれた。季節の移ろいと同様に仕事もまた新たな局面を迎えつつあるが、時には心を静める時間を大切にしながら次の挑戦へと向かいたい。
【SUGENAの翻訳ソリューション】
SUGENAは、中小企業の海外展開を阻む最大の壁である「言語の課題」に対応すべく、新たに翻訳サービス専用サイトを開設した
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本サービスは、AI翻訳のスピードとコスト効率を最大限に活かしつつ、最終段階でネイティブ翻訳者が文化的背景やニュアンスを調整する「AI × ネイティブチェック」方式を採用している。これにより、品質・スピード・コストの3要素を同時に実現する。
さらに、中国最大級の翻訳企業Lan-Bridge社との独占パートナーシップにより、300名規模の翻訳体制を確保した。技術文書からエンタメ作品まで幅広い領域に対応可能である。加えて、中国語・韓国語・タイ語・ベトナム語などの映像字幕サービスも展開し、動画時代に不可欠な海外発信を強力に支援する。
翻訳は単なる言葉の置換ではなく「文化を伝える営み」である。AI時代だからこそ、人の感性による最終チェックが不可欠であり、その価値は一層高まっている。
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9月28日