社長の日曜日 vol.148 遠くの国からの応援 2026.06.22 社長の日曜日 by 須毛原勲

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一人のラジオ体操

 梅雨。晴れ間の覗く日もあったが、仕事に追われ、雨にも降られ、先週ウォーキングは3日しかできなかった。

 そして今日、日曜日。窓の外は雨。スマホの予報は「30分後には止む」と告げている。意を決して家を出た。強くなったら途中で引き返せばいい。

 ラジオ体操の広場は、さすがに人影もまばらだ。いつもの場所に行ってもラジオ持参のご婦人の姿がない。遠くで輪になっている他のグループの方から、かすかにあのメロディーが流れてくる。私はそのリズムに耳を澄ませ、一人、最後までやり切った。

股を抜く、水戸の閃光

 6月15日、月曜の早朝。

 サッカーワールドカップ、日本対オランダ。ライブで観戦した人も多かっただろう。かく言う私も4時半に起きて、5時のキックオフを待った。

 結果は、ご存じの通り。2度先行され2度追いついての2対2のドロー。観ている側は、もうダメかと思った。それでも日本代表は諦めなかった。感動した。

 そして今日。第2戦、対チュニジア戦。結果は、4対0。

 前半4分、中村敬斗選手のセンタリングを、鎌田大地選手が左足のヒールで押し込む。電光石火の先制点。日本代表、W杯史上最速のゴールだという。

 31分、上田綺世選手。ペナルティーエリアの手前から右足一閃。相手DFの股を抜いたボールが、ゴール左隅に突き刺さった。69分には、上田選手のワンタッチパスに伊東純也選手が抜け出し、冷静に流し込む。そして83分、再び上田選手。佐野海舟選手の折り返しを、頭で合わせた。

 上田選手は、この日2得点。股抜きのミドルと、ヘディング。タイプの違う、どちらも見事な一撃だった。1試合2得点は、日本代表史上初だという。鹿島アントラーズから海を渡り、昨季はオランダ1部・エールディヴィジで日本人初の得点王に輝いたエース。我が故郷・水戸の出身である。

「最高の景色を2026」。

 今大会の、日本代表の合言葉である。森保監督が見据えるのは、まだ日本が見たことのない場所――世界の頂。

 1勝1分。この調子なら、もうしばらくその夢を見させてもらえそうだ。

近い国、遠い国

 6月17日、JNTO(日本政府観光局)が、5月の訪日外客数を発表した。

 5月は、355万9,900人。前年同月比3.6%減。ついに前年割れである。1月から5月までの累計でも、わずかに前年を下回った。さすがに記録を更新し続けた昨年の勢いは一段落したらしい。

 ただ、数字の中身は単純ではない。韓国、台湾、米国、マレーシアなど19もの市場が、5月として過去最高を更新している。では何が全体を押し下げたのか。

 相変わらずの中国である。

 5月の中国からの訪日客は、31万3,000人。前年同月比60.4%減。半分以下に沈んだまま戻る気配はない。渡航自粛の呼びかけと、航空便の減便。昨年来の冷え込みが、そのまま数字に出ている。

 地理の上では、最も近い隣国だ。飛べば、わずか数時間。その近い国が背を向けている。

 一方で、目を上げれば遠い国々が手を振っている。

 今朝のチュニジア戦。会場はメキシコのモンテレイ。地元の観客の多くが、なぜか日本代表に声援を送ってくれていた。

 そのメキシコからの訪日客は、5月で1万9,700人。前年同月比30.6%増で、5月として過去最高だという。地球の裏側にある、最も遠い国の一つから、年々日本を訪ねる人が増えている。

 ふと、統計の「その他」の欄に、目が留まった。

 韓国でも、米国でも、ヨーロッパの主要国でもない。一国ずつでは名も挙がらない、その他の国々。その数を合わせれば、17万7,000人。決して、少なくない。世界の隅々から、これだけの人が、この島国を目指してくれている。

 平日の都内の電車。アジア系に混じって、欧米やその他の地域から来たであろう旅行者の姿を、以前より明らかに多く見かけるようになった。週末ともなれば、観光地でもない私の近所ですら、スーツケースを引く人とすれ違う。

 距離が近いはずの国が、遠ざかる。

 距離の遠い国々が、近づいてくる。

 地図の上の近さと、心の近さは、どうやら別物らしい。

 今朝の、あの声援を思い出す。モンテレイのスタンドから日本へ送られた、理由のない温かさ。

ヨシミの「中国のリアル」── 掲載のご案内

 ひとりの男が、北京の街角でミルクティーを買う。ただそれだけの動画が、中国のSNSで大きな話題になった。

 買ったのは、エヌビディアCEOのジェンスン・フアン。AI時代の中核を握る人物である。2026年5月、トランプ大統領の訪中に同行して、北京にいた。

 その奇妙な熱気を入口に、現代中国のリアルを読み解く新連載が始まった。

 書き手のヨシミさんは、日中両国にルーツを持つダブル。北京大学を卒業し、東京大学大学院を経て、いまは上海を拠点としている。二つの国を内側から知る目で、変わりゆく中国を斬る。

 政治は競い合う。けれど、市場と技術と人の絆は、そう簡単には断ち切れない。

 全3回。フアン氏のミルクティー1杯から、どこまで遠くが見渡せるか。ぜひ、お付き合いいただきたい。

第1回 掲載済み 

第2回 掲載済み https://sugena.co.jp/yoshimi/yoshimi11-02/

第3回 6月25日(木)公開予定

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《今週の写真》 雨上がりの昼顔

ラジオ体操を終える頃には、雨は上がっていた。

かえって、清々しい朝だ。

神田川の土手には、雨に濡れた昼顔が、淡いピンクの花を開いていた。

2026年6月21日

by 須毛原勲

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