【このブログが目指すもの】
国内需要が頭打ちの今、海外進出は「やりたい」ではなく「やらねば」の選択肢へ変わった。
しかし実務書は大企業の壮大な成功譚か、机上のマニュアルが多く、中堅・中小企業が初年度を生き延びる手順は示されていない。
本シリーズでは、中国、東アジア、東南アジア、中近東、アフリカそして米国で30年の試行錯誤を重ねた筆者が、① 何から手を付けるか、② 90日でどこまで進めるかを具体的に提示する。
▼読者は次の二者を想定する。
- 国内売上が停滞し、海外比率0%→20%を狙う社長
- 進出ミッションを託された新任プロジェクト責任者
読み終わるたびに「次週やること」が明確になることを目指す。
海外進出=“生存戦略” その3つの理由
- 人口減少と購買力停滞──2035年人口1億1,900万人、高齢化率33%。
- 競争のコモディティ化──技術優位は短命、ニッチも瞬時に模倣される。
- 円安と原材料高──「国内生産=低コスト」の幻想が崩壊し、外貨で稼ぐ体質が必須。
よって「海外も視野に」ではなく「外貨を稼げなければ淘汰される」時代に入った。
※トランプ米大統領の相互関税により世界経済は揺れて、一時期の円安からは多少は円高基調にはなっているが、まだまだ、円安であることには変わらない。
海外進出の動機は「攻め」と「守り」の二択
類型 | シナリオ | 成功の鍵 |
---|---|---|
攻め | 国内好調なうちに第二成長エンジンを確保 | 投資余力を活かしたスピード参入 |
守り | 国内停滞を打破し販路と原価を刷新 | 小さく始め損益分岐を早期に超える |
共通項は“行動こそ最大のリスクヘッジ”。調査途中で撤退しても、その学びは必ず資産になる。
海外進出では Goal と Objectives を峻別する必要がある
Goal は羅針盤、Objectives は航海術。
- Goal(例):5年後に海外売上5億円、営業利益率12%。
- Objectives(四半期単位):商品・価格戦略設計、進出国選定、パートナー候補3社選定。
完璧なObjectivesを最初から求めず、仮置き→検証→修正のPDCAを90日サイクルで回す。
海外進出を進める上で必要な3つの覚悟
企業のトップは海外進出を進める上で以下の3つの覚悟を持つ必要がある。
- 追加投資を許容する胆力──資金・人材・時間を惜しまない。
- 失敗を称賛する文化──挑戦後の是正を評価指標に組み込む。
- 即決即断の速度──情報不足を理由に決断を先送りしない。
1989年、私は初めて米国出張を命じられ、現地法人の社長宅に招かれた。社長は「膝の上に乗るコンピューター」という概念を製品化し、最大市場である米国での事業開拓に挑んだ人物である。
「ラップトップパーソナルコンピューターのモックアップを抱え、全米の COMDEX でディーラーを回り、『こんな PC なら買うか?』と聞き続けた。」
形すらない段階から夢を現実に変えたのだ。
「――お前、夢はあるか?」
星明かりの下で投げかけられたその言葉は、30年後の今も私の羅針盤である。
海外進出とは数字の勝負であり、同時に夢を形にする舞台なのである。
海外進出で必要な行動を加速させる3つのトリガー
- 数字を置く──完璧でなくてよい。数値が行動を具体化する。
- 期限を切る──締切がなければ計画は永遠に始まらない。
- 声に出す──トップの意思を明文化し、全員を同じ地図に載せる。
海外進出がもたらす“副次的リターン”
海外市場は売上・利益だけでなく、学習効果・組織変革・無形資産という3つの副産物をもたらす。
言語・商慣習・法制度の壁を乗り越えるたびに、社内には
- データに基づく意思決定
- 部門横断の協働体制
- “異文化耐性”
という企業 DNA が蓄積される。
これは為替や景気の波に左右されにくい永続資産となり、次なる海外プロジェクトや国内新規事業でも再利用できる。
三並走アプローチ―最低3か国を同時に走らせる理由
海外初年度を「一点突破」で臨むのは危険である。
文化・規制・チャネルが異なる3市場を同時に“走らせ”、比較検証 → 集中投資 → 捨てる判断を高速で回す。
これが筆者が30年の実務から編み出した「三並走アプローチ」だ。
1カ国目で躓いても2カ国目・3カ国目が残り、学習曲線と事業継続性を両立できる。
特に 北米・ASEAN・中国 の三極は市場規模と成長ドライバーが異なるため、多様な仮説検証に最適である。
- 自社が海外へ出る動機を30文字で書く。
- 5年後の海外売上目標額と主要KPIを経営会議で合意する。
- 「90日以内にやるべきこと」をリストアップし、スケジュールに落とし込む。
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