リソースの初期設定こそが勝敗を分ける
海外進出で赤字転落する企業の7割は、人・資金・時間を“あとづけ”で補填しようとする。
計画段階で「誰を充てるか」「いくら積むか」「どこまで待つか」を同時に描けていれば、多くの失敗は避けられるはずだ。
リソースの初期設定こそが勝敗を分ける。
人:“余剰人材”ではなく“エース+通訳+黒子的事務局”を先に設計せよ
役割 | 主たる機能 | 選定・運用のポイント |
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海外進出責任者(エース) | 市場分析・KPI策定・全体統括 | 明朗で行動力と実績を備えた管理職を横滑り。 初期は国内業務と兼務し、軌道に乗った段階で海外専任へ転換。 |
バイリンガル通訳/調整役 | 言語変換+文化翻訳 | 単なる翻訳者ではなく“意味変換”のファシリテーター。 社内に適任がなければ業務委託→成果確認後に正規雇用。 |
黒子的事務局 | 契約管理・旅費精算・タスク共有 | 総務・法務・経理を一元化し、エースが売上創出に専念できる舞台装置を整備。 日次/週次で指標を可視化。 |
規模の目安:初年度「エース1+通訳1+事務局1」
小さく鋭い三位一体チームが、学習速度と意思決定を最大化する。
人材確保・配置の鉄則
- “空き人員”の寄せ集めは厳禁。
- 固定費はまず変動費化し、PMF(Product Market Fit)後に正社員化。
- 商談相手も英語前提で選び、言語コストを抑える。
資金:粗利50%を死守する“三層バッファ”
バッファ層 | 内容 | 目安コスト |
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① 規格・申請費 | 試験・認証・翻訳 | 200~800万円 |
② マーケティング費 | サンプル・広告・展示会 | 上代の20~30% |
③ 為替・遅延リスク | 円高15%・納期+60日 | 総コストの30% |
原価×4で価格を決めても、総コスト×1.3を先に確保。
これが粗利50%ラインを守る鉄則だ。
運賃高騰や追加検査費が生じても、三層バッファが損益分岐点の“防波堤”となる。
新規事業ゆえの資金設計
- 現地仕様対応:ローカライズ改良
- 法規制・認証取得:試験費・登録料
- 販促物現地語化:翻訳・制作・広告
- 事務所/法人設立:登記・設備・人件費
例)年間1,000万円を上限とし、3年間で最大3,000万円を投資。
各フェーズ ゲート(※)ごとに投資額を段階的に配分し、ROIを継続的にモニタリング。
※フェーズ ゲート(Phase-Gate/Stage-Gate)は、新製品開発やR&Dで用いられるプロジェクト管理手法。
計画的な資金投下とバッファの併用により「資金ショート」「追加増資の迷走」を未然に防げる。
資金管理は海外進出成功の礎である。
時間:“3年勝負”を切り、「Parallel 90」にブレークダウンせよ
年次 | マイルストーン | 主な到達目標 |
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Year1 | 規格取得・試作・パートナー契約 | 法規制クリア、MVP確定、販路仮組み |
Year2 | テスト販売 → 粗利黒字化 | 市場適合性検証、価格最適化、CFブレイクイーブン |
Year3 | 量産・販路拡大 | 量産体制確立、複数販路展開、ROI確定 |
3年間を90日単位×並列タスクに割り付け、「誰が・何を・いつまで」を明記する。
日付と担当者を欠く計画は未計画に等しい。
- 準備フェーズ(3~6か月前):調査・ローカライズ・パートナー候補抽出
- 実行フェーズ(進出後12か月):課題解決の連打戦。焦りによる値下げ・不利契約を回避。
- 代理店選定は“急がば回れ”:実績・評判・財務を精査し、やり直しロスを防ぐ。
- 長期KPIと伴走サポート:90日ごとに経営レビュー、週次で情報共有。
余剰営業2名で急造したチームは英語力不足とリーダー不在で商談停止。
4か月で案件は棚ざらしになり、現地パートナーの信頼も失った。
トップセールス+通訳+事務局を後追い投入するまでに9か月を浪費し、数千万円規模の機会損失を被った。
余り物で組んだ船は荒海に耐えない。三位一体を最初から配備せよ、という教訓である。
人・資金・時間を同時に設計する「3×3シート」
人 | 資金 | 時間 | |
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戦略 | エースを指名 | 全体投資額を決定 | 3年黒字化を掲げる |
戦術 | 通訳+事務局を配置 | 粗利50%バッファを確保 | 90日単位で区切る |
運用 | 日次タスクを共有 | 週次で資金繰りをチェック | 月次KPI会議で修正 |
9マスを埋めるだけで「誰が・いくらで・いつまでに」を一望でき、ガバナンスと実行が連動する。
“天の時・地の利・人の和”ー3要素をリソース設計で可視化せよ
- 天の時:政策変動・市場トレンドを90日ごとにモニタリングして戦術を微修正。
- 地の利:Year1で規制・文化・顧客インサイトを検証し、Year2以降に横展開。
- 人の和:定例会参加率や共同案件数をKPI化し、「Parallel90」に組み込んで定量管理。
結論:「天の時」を逃さず、「地の利」を活かし、「人の和」を緊密にする。その司令塔となるのが人・資金・時間の3大リソースである。
- エース候補を1名指名し、リソース計画書ドラフトを作成。
- 規格費・販促費・為替バッファを含む総投資額を見積もり、稟議書に添付。
- 3年ロードマップを「Parallel 90」に分解し、初期90日の担当者を割り付ける。
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