海外進出を考えるとき、多くの企業はコンサルティング企業や政府系機関、地元商工会議所、地銀・信金などの支援に目を向ける。しかし支援機関に頼り切り “丸投げ” すると失敗しやすい。
「主体性」 の重要性と、支援を活かすための実務ポイントを整理する。
初動で陥りがちなつまずき
主体性の欠如
「海外進出は分からないので、とりあえず支援機関に相談しよう」という姿勢では、肝心の意思決定を外部に丸投げすることになる。事業の方向性や優先順位を自社で定めぬまま他者に委ねれば、プロジェクトの舵取りは常に受け身となり、軌道修正も遅れる。
“形”のないままの相談
支援機関が真価を発揮するのは、市場調査や現地法人設立など、ある程度構想が具体化した段階である。自社ビジョンが曖昧なままでは、もらえる助言も一般論に終始し、実行フェーズにつながらない。
「無償ほど高いものはない」
無料支援には表面化しにくいコストが潜む。
- 発言の抑制:相手に遠慮し、本音や厳しい意見を言いにくくなる。
- 主導権の喪失:打ち合わせ日程や議題設定を先方ペースに合わせざるを得ない。
- 時間の浪費:成果が不透明なまま複数回の打ち合わせに時間を費やし、機会損失が膨らむ。
結果として、経費は発生しないが、貴重な時間と人的リソースという“高い代償”を払うことになる。支援機関を活用する際は、自社で描いた事業の骨格を示し、目的・範囲・期限を明確に定義したうえで主体的に舵を取るべきである。
支援機関の“使いどころ”を誤るなー最終責任は自社にある
専門家は税務・法務などの狭域では高い専門性を持つが、売上や利益を背負った事業運営の経験が乏しいケースが多い。そのため、提示される助言は制度解説やリスク回避策に留まり、収益化のリアルな打ち手まで踏み込めないことが少なくない。
政府系支援機関には限界がある。担当者 1 名あたりの受け持ち企業数が多く、打ち合わせは月 1 回程度に制限される場合が通例だ。こういったペースでは、立ち上げ初期に必要な高速 PDCA を回せず、好機を逃すリスクが高まる。
支援機関をゴルフに例えれば「キャディー」に過ぎない。クラブの選択肢や風向き、コース情報は提供してくれるが、実際にスイング――すなわち意思決定と行動――を行うのはプレーヤーである企業自身である。主体性を欠けば、いかに良いクラブを渡されてもボールは前に進まない。
したがって支援機関を活用する際は、
- 自社戦略と課題を自ら整理し、具体的な質問をぶつける
- 助言を得たら即自社判断で実行・検証する
- 不足する領域は有償でも専門家をスポット起用し、機動力を確保する
といった“攻め”の姿勢が不可欠である。無料支援に依存し、舵取りを外部に委ねることこそ、最も高くつく選択肢になり得る。
支援機関を主体的に活用する手順
ゴールと不足を棚卸しする
海外進出後の理想像を文章で具体化し、「資金」「規制対応知識」「現地ネットワーク」など、自社に欠けるリソースを洗い出す。
不足部分のみを外部に依頼する
例として、規制調査が手薄であれば、対象国の法規に特化したコンサルタントへ限定発注する。範囲を絞ることでコストと工数を最小化できる。
- 進出目標を1枚に集約
進出ゴール・達成期限・想定売上を A4 用紙 1 枚に簡潔に記述する。 - 不足リソースをカテゴリ別に仕分け
目標達成に欠けている要素を「資金」「情報」「人材」「規制対応」などに分類し、一覧化する。 - 外部支援の必要性を判定し、最適先を比較検討
各不足項目について外部リソースが不可欠かを判断し、該当する支援機関(政府系窓口、専門コンサル、金融機関など)をリストアップ。自社課題への適合度、対応スピード、コストを比較し、最適な活用先を選定する。
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