再点検すべき12の羅針盤
本連載で提示した12のテーマは、航海前に必ず締め直すべきボルトである。1本でも緩んでいれば、洋上での故障は避けられない。疑問が生じた瞬間に、必ず原点に戻って確認してほしい。
- なぜ今、海外進出なのか
- 商品を“文化翻訳”せよ
- 規制・関税・為替を一気に捉える
- 為替と資金設計ー円高でも勝つ方法
- 価格戦略とインコタームズー逆算価格で粗利50 %を死守する
- 海外市場を制する価格戦略ーMSRPと出荷価格で粗利を最適化せよ
- 商社か直輸出かー最適ルートを見極める
- 進出国を選ぶ「5つのレンズ」
- パートナー企業の選定術 【番外編】パートナー候補を探す前に必ず磨くべき「自社という鏡」
- 人・資金・時間ー3大リソースを設計せよ
- 海外とのコミュニケーションー言語・文化・本音を掴む
- 支援の受け方・選び方ー主体性を持ち“キャディー”を使いこなす
「Parallel 90」ー最短90日で洋上に出る行動計画
計画は長さではなく速度で評価される。Parallel90は、30 日単位で担当と成果物を並走させ、最短90 日で海へ出るための実行テンプレートである。準備と航行、学習と修正を同時並列で回すことで、波高の変化をいち早く舵に伝える。
船出を後押しする3つの事実
- 完璧な計画は存在しない
投資家が評価するのは「想定外を吸収する仕組み」だ。粗利バッファと90 日レビューがその核心である。 - 粗利50%設計でリスクの9割は数値化できる
原価×4 の価格設定とバッファ資金があれば、検査費・緊急輸送費が発生しても沈まない。 - 最初の100台は“無料講義”である
市場に並んで初めて顧客の本音が現れる。授業料を支払わずに受ける最高の授業だ。
勇気とは準備の副産物であり、計画は恐れをタスクへ変換する道具。
いますぐ帆を揚げよ
海外進出は「やったほうが良い」程度のオプションではない。国内需要の縮減、技術サイクルの短期化、為替の乱高下。待つほど安住コストは膨らむ。視界が100 %開ける日は来ない。粗利バッファと学習サイクルを備えた者だけが、曇り空を可航域へ変える。
社内メール1本で決断を通知したプロジェクトは成功率が高い。反対に、完璧な合意形成を求め稟議を巡回させれば、現場温度は急速に冷える。帆を上げれば風向きは見える。上げなければ、風は永遠に味方にならない。
本シリーズが示した12の羅針盤とParallel90は、荒天時のコンパスであり、追い風を最大化するセイルでもある。小さくとも自社の旗を掲げた船を海へ送り出すこと。それが次の10年を切り拓く、もっとも確実な方法だ。
最終宿題
- Parallel 90 を自社フォーマットに転記し、開始日をカレンダーに登録する。
- 1週間以内に Day1–30の担当者を指名し、招集メールを送信する
- そして船長であるあなたが皆に向かってー「出港用意!」
その瞬間、船は動き始める。
航海はここから
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帆を揚げた刹那、風は必ず吹いてくる。
さあ、いま帆を揚げよ。