リアル中国生活!ミキの上海通信

vol.18  フリーランサーという生き方   2025.03.31 リアル中国生活!ミキの上海通信 by Miki

  • facebook
  • twitter

 平日の午後に上海の街を歩いていると、道沿いのカフェに座っておしゃべりをしたり、本を読んだり、パソコンで作業をしたりしている人が多くいることに気づきます。幼稚園や学校の前を通ると、子どものお迎えで並んでいるのは、昔のようにおじいちゃんやおばあちゃんばかりではなく、若いお母さんもたくさんいます。これを見ると、「今は働いていない人がずいぶん増えたなあ」とつい思ってしまいます。しかし、別の見方をすれば、「暮らし方や働き方の選択肢がますます多様になった」とも言えます。


増加するフリーランサー

 その中には、フリーランスとして働くことを選んでいる人もたくさんいます。

 では、どのような人がフリーランスという働き方を選ぶのでしょうか?

 上海でフリーランスとして働いている人の規模はすでに100万人に達しており、雇用市場において重要な位置を占めています。そのうち約9割は45歳以下の若手・中堅世代です。

 この年代の人々の中には、すでに何年かの実務経験を経て、スキルを磨き、経験や人脈を蓄えている人もいます。また、忙しい会社勤務よりも家庭や自分のために時間を使うことを選んだ人もいます。さらに、自分が頑張った分だけ収入に反映される、いわば「自分のために働く」自由な状態を好む人もいます。そして、経済的に比較的余裕があり、自分の好きなことに時間を使いたい人もいます。

 社会の発展がめざましい今日、特に上海という都市が提供する環境と豊富な新しいチャンスにより、「卒業から定年まで同じ仕事を続ける」という状況はすでに過去のものとなっています。約50%の人が、2~3年のうちに転職を検討すると言われており、キャリアチェンジや職業の流動性・不確実性がごく当たり前のことになっています。

 また、企業が扱うプロジェクトの中にも、より柔軟で独立性が高く、アウトソーシングに適した案件が増えています。これは経験・スキル・人脈を持つ人に新たな働き方の機会を提供しています。

 さらに、インターネットの利便性が向上したことで、「USBメモリのような」働き方、つまり、自分自身にスキルや情報を持ち、必要に応じて自由に接続し、組織の固定システムに組み込まれない柔軟な働き方を求める人々にも、自由に交流・マッチングできるプラットフォームが提供されています。これにより、フリーランスとして働き始めるためのコストやハードルが大幅に下がっています。

 そして、生活環境がますます良くなり、固定観念に縛られない考え方を持つZ世代(00后)(※)が労働市場に参入し始めています。彼らは仕事と生活のバランスをより重視し、自分のやりたいことを選択する勇気も持っています。


フリーランスが躍動する新たな業界

 さて、フリーランスは具体的にどのような業界で働いているのでしょうか?

 実際には非常に幅広い業界で活躍しています。昔は「ゲーム」や「絵を描くこと」などは、「悪い習慣」や「真面目でない」として扱われていました。それらが今では立派な職業となり、しかも目覚ましい発展を遂げるとは誰が想像したでしょうか。つまり、自分が望めば、どんな分野にもチャンスがあり、挑戦することができるのです。

 文化・芸術分野では、デザイナーや動画編集者、ライター、イラストレーターなどが個人の作品を通じて市場で評価されています。

 教育・トレーニング業界では、経験豊富で評判の良い教師たちが伝統的な学校の仕組みを離れ、学科知識の教育を独自に行ったり、得意分野を生かして楽器や絵画など趣味や関心に応じた教室を開いたりしています。

 また、コンサルティングや企業向けの講師も、自分自身のキャリアや専門知識を生かして活躍する機会があります。

 最近特に目立つのは、メディア・インターネット業界です。ライブ配信者や短編動画クリエイター、個人メディア運営者などが、自分の得意分野を通じて、文章や写真、動画で考えや知識を共有し、注目度を高め、アクセスを増やすことで、商品を販売したり収益化を図っています。

 SNS上では、どんな細かいジャンルでも、さまざまなタイプのブロガーや配信者が活躍しています。子育て系では英語教育、母子関連情報、受験攻略、親子旅行情報など、ライフスタイル系では書籍紹介、料理動画、フィットネスなど、趣味分野では珍しい楽器の入門方法、楽譜提供、オンラインレッスンまで、多様なニーズに対応しています。

 さらに現在では、大学にも「ライブ配信・コンテンツ運営」などの専門的な学科が設置されており、学生がライブ配信やコンテンツ制作、ユーザー分析といった専門知識を体系的に学べるようになっています。


 収入面では安定性を欠くフリーランス

 とても魅力的に聞こえるフリーランスという選択肢ですが、実際の収入はどうなのでしょうか?

 フリーランスの収入は、個人の能力と所属する業界によって大きく左右されます。知名度が高かったり、人脈や資源を多く蓄積したりしている人ほど収入は高く、人気のある業界やニーズの強い分野では仕事の機会が多く、報酬も高くなります。その収入差は非常に大きく、時給で言えば20元(約400円)から500元(約1万円)まで、月収にすると1,000元(約2万円)から10万元(約200万円)を超える人までさまざまです。

 ある調査報告書『2023年フリーランス・副業青年生存現状レポート』によれば、フリーランサーの約37%が年間収入2.4万元(約48万円)~9.6万元(約190万円)である一方で、25%は理想としている年収が10万元(約200万円)以上だと答えています。また、フリーランスの約55%は、会社員の収入より低く、ほぼ半数が現在の収入に満足していないと回答しています。それでも、多くのフリーランサーは、働き方の自由度や時間の自由さに満足しており、今後もこの生活や働き方を続けたいと感じています。資産面を見ると、フリーランスの半数以上が自宅を所有しており、そのうち27%は住宅ローンの負担がありません。こうした資産的余裕がフリーランスを選ぶ際の後ろ盾の一つになっているかもしれません。


リスクや不確実性を背負う覚悟とスキルアップの持続が必須条件

 フリーランスは時間や働く場所の自由がある一方、収入の安定性はありません。この道を選ぶには、自分自身でリスクや不確実性を背負う覚悟が必要になります。もし収入を増やし、自分の本業として確立させたい場合には、会社員時代以上に自己管理を徹底し、時間を確保して社会の変化に対応し、自己学習やスキルアップを継続する必要があります。地道に積み重ね、創意工夫を続けてこそ、小さくても魅力的な未来を築くことができるのです。

<気になる中国語>

Z世代( Z shìdài ) 00后(línglíng hòu) (※)

意味・時代背景

「Z世代(00后)」は2000年代以降(2000〜2009年)に生まれた若者を指す。生まれた時からインターネットが存在するデジタルネイティブ世代で、情報に敏感、価値観が多様で個性を尊重する傾向が強い。経済的に豊かな環境で育ち、自分らしさや自由、ワークライフバランスを重視するなど、消費や働き方に対して新しい価値観を持つ世代である。

一般的に日本でも「Z世代」として使われている。

 

これらの中国語を覚えることで、最新の話題や中国文化について理解が深まるでしょう。ぜひ日常会話の中で活用してみてください!

by Miki

ブログ一覧に戻る

HOMEへ戻る