中国の多くの地域では、男の子を育てることを好む傾向があります。
これは、中国の歴史において長らく男性中心の封建的社会体制のもとで形成された、「男性尊重・女性軽視」(※1 男尊女卑,重男轻女)の思想によるものです。伝統的な観念では、男性は血筋を継ぐ存在であり、子孫を伝える鍵と見なされ、社会でも男性により多くの権利や利益が与えられてきました。一方、女性は男性の付属物のように位置づけられ、自分の才能を伸ばし発揮する機会がほとんどありませんでした。したがって、男の子を産み育てることは、多くの家庭にとって「重要な任務」だったのです。
2020年の出生人口統計では、江西省、河南省、安徽省、湖北省、湖南省などの省では、男性の比率が依然として高く、江西省では男性の比率が女性100に対して130を超えています。
女の子を尊重する気質をもつ上海人
現代社会においては、教育の普及とともにこの「男尊女卑」も徐々に改善されつつあり、「男女平等」というスローガンが長年叫ばれています。その中で、中国全土でどの都市が最も娘を愛するかと言えば、それは間違いなく「上海」だと言えるでしょう。
新たな命を迎える分娩室で、生まれてきたのが女の子だと聞けば、あたりは歓喜に包まれます。
上海では、娘のことを「小さな綿入りジャケット(小棉袄)」と呼びます。これは、娘がより思いやりがあり、親孝行で、両親の体調や気持ちに気を配り、感情表現も繊細であることを表現しています。まるで心を温めてくれる小さな綿入りジャケットのよう、という意味です。
一方、男の子は、上海ではむしろ「結婚用の住宅資金を幼い頃から貯めなければならない」「大きくなったら妻の意見に従うことが多くなる」「両親の負担が大きい」といった意味合いで捉えられることもあります。

過去30年以上続いた一人っ子政策の影響で、上海の家庭で生まれた子供は、6人の大人(両親と両祖父母)からの愛情を一身に受け、物質面でも精神面でも十分な支援と関心を受けて育ちました。
物質面では、基本的な生活のニーズはもはや問題ではなく、きれいな洋服やバッグ、さまざまな習い事やサマーキャンプなど、家庭の能力の範囲内で最善の選択肢が与えられます。こうした「必須ではない」出費であっても、女の子だからといって削られることは決してありません。むしろ、女の子だからこそ、より丁寧に育て、より多くの気遣いを注ぐべきだと考えられています。それはつまり、女の子が幼いころから広い世界を見聞きし、より高い視野を持つことで、成長したときにより自立心と自信、そして知恵を備えるようになるという考え方です。
精神面においても、上海の親は娘に対して特に開かれた心と寛容さを持っています。娘がやりたいことを後押しし、その選択を尊重すると同時に、娘が振り返ったときにはいつでも力強い支えとなってあげられる存在であろうとします。
現在は「二人っ子政策」(※2 二胎政策)が解禁され、家庭に娘と息子の両方がいる場合でも、資源がすべて息子に偏ることはありません。上海の家庭では「平等な扱い」を大切にしており、息子にあるものは娘にも必ず与えられます。日用品に限らず、将来の結婚といった重要な場面においても、財産や不動産などは同様です。多くは求めず、ただ平等を求めるのです。
女性の経済的な基盤に起因する結婚生活における男女間の平等
よく「経済的な基盤が上部構造を決める」(※3 经济基础决定上层建筑)と言いますが、上海の女性が結婚において比較的高い地位を持つのは、上海ではいわゆる「結納金」(※4 彩礼)の習慣がほとんどないことも一因です。むしろ結婚する場合、男性側が住居を用意するなら、女性側は車を購入するか、その他の費用を負担するなど、一方に全てを背負わせることはありません。現在ではさらに経済状況が良くなり、娘の結婚に際して家を持参金(嫁入り道具)として用意する親も少なくありません。
娘の実家が、心から大切にする気持ちと、経済的な後ろ盾の両方を備えていることで、女性側が結婚生活においても自信と強さを持てるようになるのです。

上海の家庭では、男性が買い物や料理を担当するのはごく普通のことです。週末には、公共の場で子どもと一緒に過ごす両親の姿も多く見られます。全体的に見ると、上海の男性は家庭への関与度が高く、日常の責任を積極的に担い、家庭と仕事の両方を同じくらい大切にしています。
また、上海の女性は幼いころから男性と同じ教育を受けており、大人になってからも自分の仕事と収入を持っています。2022年には、上海の女性の労働参加率は58%に達し、女性起業家は市内の企業家全体の36%を占めました。女性の経済的自立が進んでおり、資産の分配や使い方に関しても発言権を持つようになっているため、結婚における男女の立場もより平等になっています。
職場でも活躍する上海の女性

さらに、上海の女性は職場における地位でも全国トップクラスにあります。多くの外資系企業や多国籍企業が上海に進出していることで、性別平等を重視する価値観が職場にも浸透し、女性の職場での権利が守られています。
加えて、経済・金融が発展した都市として、テクノロジー、金融、サービス業といった多くの分野では、同じ教育を受け、同じ能力を持つ女性に対して性別による偏見がほとんどありません。個人としてのキャリアを築きたい女性にとって、より開かれた寛容なプラットフォームが提供されていると言えるでしょう。
そして実際に、女性たちはその能力の高さを職場で証明しています。
いくつかのデータによれば:
- 上海の女性研究開発者の割合は全国でも上位で、全国平均を2.57%上回っています。2021年には、上海の女性研究者は市全体の28.49%を占めました。
- 過去3年間、国家傑出青年基金を獲得した上海の女性科学技術人材の割合は15~20%を維持しており、工学や医学の分野で特に優れた活躍を見せています。
- 2024年時点で、上海のファンド業界における女性従業員の割合は全体の47%、そのうち31%の企業では女性が過半数を占めています。女性の経営幹部の割合は28%、73の公募ファンド会社のうち、13社で女性が会長を、18社で女性が総経理(社長)を務めています。女性ファンドマネージャーの割合は29%で、管理資産は合計4兆625億元にのぼります。

直近では、2025年3月に上海で「フォーブス中国女性サミット」が開催され、数多くの成功した女性たちが登壇し、「女性ならではの視点」、そして「粘り強さと親和力」が職場でいかに力を発揮するかを語りました。
総じて言えば、上海の女性は生まれたときから男性と同じ待遇を受けています。生活においても仕事においても、女性への敬意は、上海という都市の文明レベルを象徴する一つの特徴です。
上海で育った“娘たち”は、本当に幸せだと言えるでしょう。
1. 男尊女卑,重男轻女 ピンイン:nán zūn nǚ bēi, zhòng nán qīng nǚ
意味:封建的な伝統制度において、男性を尊び、女性を軽視・無視する考え方。
日本語訳:「男尊女卑」
2. 二胎政策 ピンイン:èr tāi zhèng cè
意味:2016年から中国で実施された、1組の夫婦が2人まで子どもを持つことを認める政策。
日本語訳:「二人っ子政策」
3. 经济基础决定上层建筑 ピンイン:jīng jì jī chǔ jué dìng shàng céng jiàn zhù
意味:マルクスの言葉。経済的な基盤がしっかりしていてこそ、社会制度や意識(上部構造)が発展できる。
日本語訳:「経済的基盤が上部構造を決定する」—— 経済が安定してこそ、人間関係や制度における平等も実現しやすい。
4. 彩礼 ピンイン:cǎi lǐ
意味:結婚前に男性側が女性側に金銭や物品を贈る習慣。金額は地域によって数万元から数十万元と幅がある。
日本語訳:「結納金」
これらの中国語を覚えることで、最新の話題や中国文化について理解が深まるでしょう。ぜひ日常会話の中で活用してみてください!
