リアル中国生活!ミキの上海通信

vol.28 LABUBUが火をつけた収集熱         2025.06.13 リアル中国生活!ミキの上海通信 by Miki

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 ここ2年ほど、上海のラグジュアリーブランドの店舗には長蛇の列ができていました。しかし最近、その行列の先はカプセルトイを扱う潮玩ショップ――泡泡玛特(POP MART)へと変わりました。

 特に人気なのが、LABUBUという名のフィギュアです。発売されるやいなや即完売し、オンラインで高速クリックの争奪戦を勝ち取っても、発送まで数か月待たなければなりません。ECサイトを開くと、中古品や着せ替え用の小さな衣装を扱うショップが所狭しと並んでいます。

 国内での流行にとどまらず、世界の著名人もこぞってLABUBUをSNSに投稿しています。エルメスのバッグチャームにしたり、インテリアとして飾ったりと、LABUBUは今やスターたちのソーシャルメディアの焦点となり、その人気をさらに後押ししています。(※1推波助澜)


LABUBUとは?

 いったいどのようなフィギュアなのでしょうか。

 LABUBUは北欧の森に暮らす精霊という設定で、勇敢で好奇心旺盛、そして優しい性格を持っています。ふわふわの大きな頭に長い耳と大きな目があり、一見すると可愛らしいのですが、ぱっくり裂けた口に鋭い歯が並んでいるのが特徴です。この、“美しい”とは言えず、むしろ少し“奇妙”で“ブサかわいい”ギャップ萌え(※2反差萌)のデザインが、反抗的でありながら無邪気さも残る若者たちの心をつかみました。

 もともとは絵本に登場するキャラクターでしたが、2019年に泡泡玛特(POP MART)と提携してカプセルトイが発売されて以来、トップスターへと成長しました。(※3 顶流) 初期のプラスチック製フィギュアから、現在では柔らかなぬいぐるみやキーホルダー、各種の季節・地域限定モデル、映画『哪吒』とのコラボ商品、さらにはコカ・コーラやVANSとのコラボモデルまで、豊富な商品ラインナップで常に新鮮さを保ち続けています。


カプセルトイの新たな潮流

 LABUBUを販売している泡泡玛特(POP MART)は、2010年に設立されたトレンディトイメーカーです。複数のデザイナーと契約し、不定期にさまざまなキャラクター商品を発売しています。LABUBUシリーズのほかに、Mollyシリーズや『山海経』の神獣シリーズなども熱烈な支持を集めています。

 泡泡玛特(POP MART)の最大の特徴は、フィギュアをブラインドボックス形式(文末に解説)で販売している点です。ショッピングモールに設置された自動販売機にも、年々増えている路面店にも、いつも人だかりが絶えません。年齢を問わず、中年の会社員から学齢期の子どもまで、人々を惹きつけているのは、中身がわからない小さな四角い箱なのです。

 私が子どもの頃、よく食べていたスナック菓子には、袋ごとにランダムでカラフルなプラスチック製のリングが入っていました。リングには各国を象徴する建築物が刻まれており、80年代生まれの世代は種類や数を競い合いながら集めたものです。

 今では、多くのスーパーの入口にガチャガチャ(カプセルトイ)機がずらりと並んでいます。20~40元を投入してハンドルを回すと、小さなおもちゃが入った丸いカプセルがポトリと出てきて、子どもたちを惹きつけていますが、このような販売方式自体は実はかなり昔からありました。ただ、それを泡泡玛特(POP MART)が新たに洗練された形で打ち出したことで、いま再び大ブームを巻き起こしているのです。


ブラインドボックスのワクワクや病みつき感

 ブラインドボックスがもたらすのは、未知との出会いによるワクワクです。

 一般的な商品購入が「見たまま手に入る」体験であるのに対し、ブラインドボックスの最大の特徴は“中身がわからない”ことにあります。人は本能的に未知に対して好奇心を抱くものですが、この仕組みはまさにその感情を巧みに刺激します。泡泡玛特(POP MART)の小さな箱の中には、必ず未知のフィギュアがひとつ入っています。同じシリーズには複数のバリエーションが存在し、さらにシークレットモデルも用意されています。箱を開ける瞬間のドキドキは、まるで冒険の扉を開くときの高揚感に匹敵します。もし念願のデザインや、さらに希少価値の高いシークレットモデルを引き当てたなら、得られる達成感と喜びは計り知れません。

 こうした“未知”は、ほんの少しの誘惑を帯び、人々はつい財布の紐をゆるめてしまいます。気づけば箱を次々と手に取り、自宅へ連れて帰りたくなる――ブラインドボックスには、そんな魔力が秘められているのです。

 次に挙げられるのは、コレクションする楽しさです。

 ブラインドボックスはシリーズで展開されており、一度に好きなデザインを手に入れられないため、“収集”という要素が際立ちます。さらに泡泡玛特(POP MART)のブラインドボックスにはシークレットモデルがあり、その当選確率は1/144(シリーズによっては1/72)です。このレア感は、コレクター心をくすぐり、リピート購入を促進します。調査によれば、70%の消費者が「お気に入りを当てるために3回以上購入する」と回答しています。

 また、早くコンプリートしたりシークレットの当選確率を上げたりするために、箱買い(「端盒」)を選ぶ人もいます。箱買いでは同じデザインが重複せず、通常6種または12種がセットになっています。シークレットを引き当てたときの興奮は、まさに宝くじが当たったかのようです。たとえシークレットが出なくても、一つひとつ箱を開封していく体験自体がワクワクを生み、SNSでは開封動画が大人気となっています。

 さらに、手に取りやすい価格も大きな魅力のひとつになっており、手のひらサイズのフィギュアがわずか数十元で手に入るため、他のトレンドフィギュアやラグジュアリーブランド品に比べてハードルが低く、つい衝動買いしやすいのです。リーズナブルな価格でありながら、有名人と同じモデルを持てることから「プチ・ラグジュアリー」とも呼ばれています。

 また、中古市場では、シークレットモデルの取引価格が定価の10倍、20倍に跳ね上がることも珍しくありません。たとえば LABUBU のソフビ&ぬいぐるみ仕様のシークレットモデルは、定価599元だったものがすでに1万元超で取引されています。

 このブームがいつまで続くのかは分かりません。

 しかし、ブラインドボックスの人気は、企業の巧みなマーケティングや話題づくりであると同時に、人々の新たな心の拠り所でもあります。目まぐるしくストレスの多い生活環境のなか、さほど高くない価格で手軽に得られるシンプルで即時的、純粋な驚きと楽しさは、比較的低コストのストレス解消法と言えます。

 愛らしかったり、いたずらっ子のようだったりするこれらのフィギュアは、間違いなく私たちに新しい「感情価値」をもたらしてくれます。

〈ブラインドボックス型トイとは?〉

ブラインドボックス型トイは、中身が見えない箱(=ブラインドボックス)に入ったコレクション用フィギュアです。購入時点ではどのデザインが当たるか分からず、開封して初めて中身が判明します。

ブラインドボックスとカプセルトイとの違い

ブラインドボックスカプセルトイ
形態箱入り(店頭販売や自販機)カプセル自販機
価格帯500円~数千円200円~500円程度
素材・サイズソフビ・PVC、装飾性高め小型プラ製が中心
目的デザイン重視・飾る遊ぶ・景品感覚
レア設定シークレット比率が明示シークレットは少数派

<気になる中国語>

推波助澜 tuī bō zhù lán

意味:側面から煽って勢いを強め、影響力を拡大させること

日本語訳:「勢いを後押しする」「拍車をかける」

反差萌 fǎn chā méng

意味:外見と性格・行動との大きなギャップが生む独特の魅力を指すネットスラング

日本語訳:「ギャップ萌え」「ブサかわいい」

3. dǐng liú

意味:ある分野で極めて高い人気や知名度を誇る存在を指すネットスラング

日本語訳:「トップインフルエンサー」「超人気者」

これらの中国語を覚えることで、最新の話題や中国文化について理解が深まるでしょう。ぜひ日常会話の中で活用してみてください!

by Miki

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