社長エッセイ

社長の日曜日 vol.8 ラグビー観戦から思いを馳せて  2023.05.22 社長エッセイ by 須毛原勲

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 5月20日、新国立競技場にて「NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022-23」のプレイオフ決勝戦を観戦した。試合は、レギュラーシーズン1位で前シーズン王者、埼玉パナソニックワイルドナイツと、レギュラーシーズン3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイの間で繰り広げられた。

 朝方の雨も上がり、観戦するには最高の気候だった。東京オリンピックのためにリニューアルされた新国立競技場の周辺は新緑も爽やかで、自身初めての新国立競技場に気分が上がるのを感じた。

 試合は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイが17対15で埼玉を下した。終盤、元日本代表、あの「ブライトンの奇跡」、日本代表がジャイアントキリングをした2015年ラグビーワールドカップ南アフリカ戦の時のセンター立川理道の絶妙なキックパスがウィング木田に渡り、左隅にトライを決めて逆転勝利。非常に緊迫した、見応えのある試合だった。

 クボタピアーズ船橋・東京ベイのフォワードは、体格が大きいだけでなく力も強かった。スクラムで埼玉パナソニックを圧倒し、反則を犯させた。さらに、確実なキック力でエリアを制御し、オーストラリア代表バーナード・フォーリーの正確なペナルティーゴールも勝利の大きな要因となった。

 対する埼玉パナソニックは、キックミスが多く、バックスのプレーも繋がりに欠けた。オーストラリア代表の怪物ウィング、マリカ コロインベテの疾走が見られなかったのは残念だった。それでも、埼玉パナソニックには日本代表に名を連ねる選手が多く、彼らのプレーを生で観られて興奮した。プロップの笑わない男、稲垣啓太、キャプテンでフッカーの坂手淳史、そしてリザーブのフッカー、堀江翔太。特に闘争心にあふれ、最後まで決して諦めない堀江のプレースタイルが大好きだ。実際、決勝戦の後半途中から入った堀江のファイトあふれるプレーは見ごたえがあった。スタジアムに来ている観客も堀江ファンが多いようで彼がフィールドに入ると大きな声援に包まれた。

 初めて訪れた新国立競技場は綺麗で、素晴らしいスタジアムだった。そして、久しぶりのラグビー観戦に大いに刺激を受けた。

 高校の3年間、私はラグビー部に所属していた。3年間、ほぼ毎日ラグビーに明け暮れた。大学ではラグビーから離れたが社会人になり3年目の年、同じ国際部の同僚とともにラグビー部を立ち上げた。会社のグラウンドを借りるために、当時日本ラグビー協会の理事だった町井氏(当時、半導体国際事業部長、後の日本ラグビー協会会長)を顧問に迎え、府中や鶴見工場のグラウンドでの練習を許可してもらった。仕事が忙しく、毎日遅くまで残業に追われていたにもかかわらず、毎週日曜日はラグビーに汗を流した。夏には菅平や那須で合宿をし、東日本社会人リーグ四部に加盟してリーグ戦に参加した。

 今でも、ラグビーを目にすると血が騒ぐ。

 ところで、今回の優勝セレモニーにも登場したクボタスピアーズ船橋・東京ベイのマスコット「スッピー」、その正体はユニコーン。

 ということで、今週は、ユニコーン企業について考えてみたい。(少々強引ですが。)

 周知のように、ユニコーン企業とは評価額が10億ドル以上、設立から10年以内の非上場スタートアップを指すものである。

 CB Insightの公開データに基づき、その最新状況を分析する。CB Insightによると、2022年末の世界のユニコーン企業は1206社。2021年7月時点の758社と比較すると増加数は448社で約60%の増加ということになる。コロナ禍にもかかわらず、大きな成長を遂げたスタートアップが多く存在するのだ。

 米国のユニコーン企業数は378社から654社に増え、世界全体の54.2%を米国が占めている。GDP世界1位であるだけでなく、ユニコーン企業数においても世界の半分以上を占め、イノベーションの象徴であることが伺える。

 中国は、コロナ禍による厳しい経済環境下においても、ユニコーン企業数が15社増の170社に到達した。これは世界の14.1%を占める。

 米国と中国のユニコーン企業数は合計で824社となり、全世界の3分の2を占めている。これは世界のイノベーションが米国と中国に牽引されていることを示している。

 米国と中国以外の国々についても見ていくと、インドの急速な成長が目立つ。2021年7月の34社から2022年末には71社へと倍増した。ドイツは16社から30社へと成長し、順位は5位から7位に上昇した。(以下、下表)

 そして、日本は14位の6社。コロナ禍の中で、ユニコーン企業は全く増えなかったということである。日本のユニコーン企業は、全世界のわずか0.4%に過ぎない。GDP世界第3位を誇る日本としては、他国に比べて明らかにイノベーション力が欠乏していると言わざるを得ない。

国別のユニコーン企業の数(2022年年末時点と2021年7月時点との比較)

  22年末21年7月増減数伸び率全体に占める割合
1米国65437827673.0%54.2%
2中国170155159.6 %14.1%
3インド713437108.8 %5.9%
4英国49311858.1%4.1%
5ドイツ30161487.5%2.5%
6フランス26161062.5%2.2%
7イスラエル2517847.0%2.1%
8カナダ2112975.0%1.7%
9ブラジル1712541.7%1.4%
10韓国1410440.0%1.2%
10シンガポール1468133.3%1.2%
12オーストラリア844100%0.6%
13オランダ74375.0%0.5%
14日本6600%0.4%
 その他94573764.9%7.8%
合計 1206758448  

(出典: CB Insightsの公開データより弊社作成)

日本のユニコーン企業は以下の通りである。6社という数も増えていないし、顔ぶれも変わらない。

  企業価値 ($billions)領域企業ホームページ
1Preferred Networks2.0AIhttps://www.preferred.jp
1Smart News2.0Mediahttps://www.smartnews.com
3SmartHR1.6HR etchttps://smarthr.jp/
4Spiber1.22バイオ素材開発https://spiber.inc/
5Opn1.0Fintechhttps://www.opn.ooo/jp-ja/
5Playco1.0ゲーム等https://www.play.co/jp

 さて、どうして日本にはユニコーン企業が育たないのか。

 理由としては、スタートアップを育てるエコシステムの違い、米国や中国などと比較して圧倒的に少ない投資金額、若者の大企業志向、起業マインドの欠如などが挙げられる。しかし、これらの中でも最も重要な要素は、多くのスタートアップが最初からグローバルを目指していない点ではないだろうか。

 米国の企業は初めからグローバル展開を見据えている。韓国、イスラエル、シンガポールなどの自国市場が小さい国の企業も同様にグローバル展開を視野に入れている。スタートアップを立ち上げる際には、最初から海外展開やグローバル化を目指した商品開発、ビジネスモデルの構築が重要だ。まず国内で成功してから海外を目指すという方法では遠回りになりすぎるにもかかわらず、日本は自国の市場がそれなりにあるため、多くのスタートアップが先ずは国内市場での事業拡大を目指している。ユニコーン企業の道は遥か遠い。

 岸田首相はスタートアップの育成を日本経済復活の重要な一端と位置づけている。G7で来日したバイデン大統領との会談で、日米が先端技術の共同研究の推進拠点として、東京都心に米国マサチューセッツ工科大(MIT)の協力を得て「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」を目黒区と渋谷区に開設する計画を公表した。この構想は賞賛に値する。大いに期待したい。

 時は遡り1995年、第3回ラグビーワールドカップで日本はオールブラックスに145対17で大敗した。その直後日本代表の監督に就任した故平尾誠二監督は、日本代表の改革を推進した。その1つが外国人プレーヤーをルールに則って日本代表に選出することだった。その後、オールブラックスのスーパースターのジョン・カーワン氏をヘッドコーチに招聘。エディ・ジョーンズが2012年ヘッドコーチに就任。そのエディーの指導の下、2015年ワールドカップで日本は南アフリカを34-32で破り、世界は歴史的な勝利に沸いた。その時の日本代表の23人の内、主将のリーチ・マイケルを始めとして8人が海外出身者だった。

 今年、日本ラグビーは「ハイパフォーマンスユニオン」という世界最上位層の新たな枠組みに正式に参加することが決定した。「ティア1」とされていた世界の強豪10チームに日本を加えた11チームで構成され、日本のラグビーが初めて世界のトップ層に位置づけられた。1995年のオールブラックス戦大敗から、まさに28年。改革の積み重ねの結果である。

 大志を抱く。誰もが笑うような目標を真剣に信じる。

 多様性を尊重し、国籍にとらわれないチームを構成し、日本から世界を目指す。

 日本が多くのユニコーン企業を輩出する日が必ず来ると信じている。その飛躍に何らかの形で関与できればと思う。

5月21日記

by 須毛原勲

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