社長エッセイ

社長の日曜日 vol.34 長く走りたいときもある 2023.11.27 社長エッセイ by 須毛原勲

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 今日は、朝5時過ぎから走り出した。外はまだ暗い。最近、会食が続き、お腹周りがきつくなっている。少し長い距離を走ることを目指して走り始めた。以前は週末にはゆっくりと長距離を走っていたが、昨年末に腰を痛めて以来、1年近くそれを控えていた。そういえば、あの公園の銀杏並木が今頃は黄色く色づいて綺麗だろうと思い、距離を伸ばして少し遠い公園まで行った。生憎の曇りで鮮やかさは欠けるものの、銀杏並木は綺麗に黄葉していた。

 最終的には30キロを完走した。走りながら感じる風が心地よく、新調したばかりのジョギングシューズのおかげで快適に走れた。先週食べ過ぎた分くらいは絞れたかもしれない。

 現在韓国・釜山を訪問中の上川陽子外相は、25日に中国の王毅政治局員兼外相と会談を行った。この会談は、日中韓外相会談の一環として報じられている。朝日新聞の見出しでは、「処理水問題において日中間の溝は依然として深い」「外相会談では対話継続に一致」と伝えられた。会談では、処理水放出問題において、王毅外相が「日本側の無責任な対応に反対する」と述べ、さらに「各利害関係者による全面的な独立した長期監視メカニズム」の必要性を強調した。この問題は、先日公明党の山口那津男代表が中国を訪問した際にも取り上げられ、王毅氏は同様の立場を示していた。短期間での解決は困難と見られているが、王毅氏の提案する「全面的な独立した長期監視メカニズム」の設置が実現すれば、問題解決に向けた大きな一歩となる可能性が高い。処理水放出問題の解決に繋がることが期待される。

 上川陽子外相は、9月13日発足の第2次岸田改造内閣で外務大臣に就任した。その後、約2ヵ月間にわたり精力的に活動している。11月2日からはイスラエル、パレスチナ及びヨルダンを訪問し、12日から16日まではAPEC閣僚会議等に出席するためサンフランシスコを訪問した。現在は韓国釜山を訪問中である。

 70歳の上川外相は、西に東にと時差がある中での移動を続けている。相当な重労働だと思う。それでいて、テレビのニュースで映し出される彼女の立ち振る舞いや話す時の物腰からは、落ち着きがありながらも凛として強い意志が感じられる。その姿勢には敬服せざるを得ない。

 趣味は神輿担ぎだという。支持率が急降下中の岸田政権だが、上川陽子外相のような素晴らしい方もいらっしゃる。今後の活動に対する期待したい。

 11月16日、財務省は令和5年10月分の貿易統計の速報を発表した。輸出総額は9兆1271億円、輸入総額は9兆8100億円である。輸出は前年同月比で1.6%の伸長を見せたが、輸入は12.5%減少した。国別で見ると、輸出は米国向けが1兆9286億円で最も多く、次いで中国向けが1兆6512億円である。一方で輸入は、中国が2兆3255億円で最も多い。中国と香港の輸入合計は2兆3343億円で、輸入総額に占める割合は22.5%に上り、米国の21.1%を超えて最も高い。日本経済の中国への依存度は依然として高い。それが日本にとっての中国の位置づけである。

中国(香港を含まず)への輸出総額1兆6512億円の内訳は以下の通りである。

 品名輸出額  構成比
 総額1,651,246100%
1食料品10,5960.6%
2原料品50,1003.0%
3鉱物性燃料22,6411.4%
4化学製品305,34118.5%
5原料別製品189,71511.5%
6一般機械372,63622.6%
7電機機器342,70420.8%
8輸送用機器162,4769.8%
9その他195,03711.8%
        (単位: 百万円)

 

 処理水放出問題が毎回中国のとの会談の中で課題として取り上げられるが、輸出において食料品が占める割合は全体の0.6%である。処理水放出問題により全面禁輸となった日本の水産物も、この食料品に含まれている。つまり、0.6%以下と言うことである。

 そもそも、日本の食品の海外へ輸出総額は940億円(10月度)。食品の輸出そのものがそれほど大きな金額ではない。それはそうである。食料安全保障という言葉があるように、食料は人間の生命の維持に欠くことの出来ないものであり、自国にて最低限度必要とする食料の調達は確保しなければならない。

以下、日本の食料品の10月分の輸出額(輸出先別)である。                  

 輸出先輸出額伸長構成比
 総額94,024+22.4%100%
1ASEAN17,381-7.8%18.5%
2米国16,841+22.4%17.9%
3中国10,596-55.0%11.3%
4韓国5,881+19.6%6.3%
5EU4,562-10.2%4.9%
    (単位: 百万円)

 

 中国向けの輸出は55%減少し、処理水の問題が影響していることは明らかである。ASEAN諸国への輸出も7.8%減少し、EUでは10.2%減少している。これらの減少が処理水放出問題に起因するかは不明であるが、影響を受けている可能性を否定することはできない。ASEANやEUの人々でさえ処理水放出問題にネガティブな感情を持っている可能性がある。

 私は日本人として、日本の海産物を好んで食べている。処理水放出が始まってからも、気にせず日本産の海産物を食べ続けている。しかし、私の元部下の中国人が処理水放出問題について厳しいコメントをしていた。彼は日本企業に10年以上勤務し、それなりに日本に対して親近感を持ったはずにもかかわらずである。

 日本人の中には、処理水放出問題を中国政府の政治的な駆け引きと見る人もいるが、納得していない普通の中国人も少なくない。適切なプロセスを経て、時間をかけて、中国の国民が納得する方法で問題を解決すべきである。

 11月24日夜、NHKのニュースを観ていたら、伊集院静氏の訃報が流れた。享年73歳。大好きな作家だった。

 吉川英治文学新人賞を受賞した「乳房」や直木賞を受賞した「受け月」をはじめ、初期の作品は欠かさず読んでいた。最近では、日経新聞の朝刊に連載されていた「琥珀の夢」や、正岡子規と夏目漱石を描いた「ノボさん」を毎朝愛読していた。エッセイの「男の流儀」シリーズも、新書版が発行されるたびに読んでいた。

 10月初めに闘病のため一切の執筆活動を休止するとの報道があり、心配していたが、これほど早く逝ってしまわれるとは思ってもいなかった。

 無頼派で、豪放磊落でありながら繊細な彼の言葉には、たびたび勇気づけられ、教わることも多かった。

 73歳。あまりにも早すぎる。

 伊集院静氏のご冥福を心よりお祈り申し上げる。

11月26日記

by 須毛原勲

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