社長エッセイ

社長の日曜日 vol.36 久しぶりの中国 2023.12.19 社長エッセイ by 須毛原勲

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 一週間の中国出張を終えて日本に帰国。寒さが一段と厳しくなった朝の空気を切り裂きながらのジョギングは、旅の疲れを癒やすのに丁度良かった。すっかり葉を落とした裸の木々が、寒さの深まりを物語っている。

 今回は、上海、江蘇省の蘇州、安徽省の合肥、そして浙江省の杭州を巡った。久しぶりの中国訪問で、感じ、考えさせられたことは多かった。

ビザの取得について

コロナ禍以降、短期滞在でもビザの取得が必須となってしまった。(72時間以内のトランジット滞在の場合はビザなし滞在が可能。)

今回の滞在は7日間だったため、ビザの取得が必要。幸いにも、Mビザ(商業貿易業務)として2年間有効なマルチビザを取得することができた。中国のビザは取得に時間がかかるといったことを聞いていたが、私が11月に申請した際はわずか中1日で手続きが完了した。

中国側の企業の招待状(会社印と代表者の署名が必要)と、私の場合、中国に駐在していた際の居留許可証(有効期間切れ)のコピーを提出したので、マルチビザが認められたようだ。これで今後、出張のたびにビザの取得をする煩雑さから免れたのは嬉しい。二年間は30日間以内の滞在であればいつでも中国に行けることになった。

出発の日

朝8時40分出発のフライトに間に合わせるべく、少し早めの6時20分に羽田空港に到着した。今回は東方航空のエコノミークラス。カウンター前にはすでに長蛇の列ができており、チェックインが完了したのは8時を過ぎてからだった。1時間40分もかかってしまった。

さらに、荷物検査にも長い列があり、出国審査を通過したのは、まさに出発時刻の8時40分。なんとか離陸前に飛行機に乗り込むことができた。その後も遅れた乗客が続々と到着し、結局飛行機の離陸は9時40分となり、約1時間の遅れ。

久しぶりの上海

上海浦東空港のターミナル1に到着した時、懐かしさと新鮮な驚きが同時に襲ってきた。中国駐在時代に何度も足を運んだはずのこのターミナルが、まるで別の場所のように様変わりしていた。両手の指の指紋を採取され、入国審査を無事通過。荷物検査も特に問題なく終え、飛行機が到着してからわずか30分で中国の地へ足を踏み入れた。

空港からはタクシーを利用し、約45分でホテルに到着した。中国駐在時代から好んで使っていた上海龍之梦大酒店だ。実はここのジム設備が充実しているため今回も選んだのだが、残念ながら今回はジムを利用する時間的余裕がなかった。

夜は、長年上海に住む日本人美容師の友人と再会。焼き鳥をつまみながら、最近の上海の様子について話を聞いた。彼は上海の景気の悪さを嘆きつつ、物価の高さにも言及した。特に、円安の影響で人民元価格が高く感じるとのこと。例えば、10元の「ねぎま」が日本円にして200円、18元の「つくね」が360円と、決して安くはない価格だ。

訪れた店は、私が駐在時代によく通っていた場所で、昔からいる店員たちは私の顔を見ると驚いた様子で二度見し、喜んで抱きついてきた。少し遅れて店に出社した中国人オーナーとも久しぶりに再会し、懐かしい話で盛り上がった。長い間会っていなかったはずなのに、まるで昨日訪れたかのような親近感を覚えた。

何でもQRコード

中国では何でもかんでも支払いはWeChatや支付宝のQRコードになってしまっている。駐在時代もそうだったが、今回訪れた際にはその傾向がさらに加速していることを実感した。タクシーで現金払いを申し出たら乗車拒否されてしまったこともあった。

今回の出張で、ビジネスそのもの以外の重要なタスクの一つは、中国の携帯電話SIMカードの購入と、それを中国の銀行口座と連携させることだった。この両方が無事に完了し、その後はWeChatでQRコード決済ができるようになりとても便利になった。携帯電話の手続きのために訪れた中国联通の店は天平路にあり、プラタナスの葉が雨に舞い、フランス租界の独特の情緒を醸し出していた。目に留まったのは「老吉士酒家(Jesse Restaurant)」の看板。この伝統的な上海料理の名店には、昔よく足を運んだ。

古い街並みを壊して生まれた新しいスポット

夜は、中国人の友人とイタリア料理店で会食。彼女はかつて日本の電通で働いており、日本語、英語、中国語、上海語を流暢に話す才女だ。彼女もまた中国の景気の悪化について言及していた。「周りを見て、西洋人がほとんどいないでしょ。彼らはみんな帰国しちゃったのよ。私の友達ももうここにはいないわ。」と彼女は言い、見渡すと確かに中国人客が大半を占めていた。特に若い人たちが目立つ。「若者は食べることにはお金を使うのよ。景気は悪くても、飲食業界はまだ元気。」と彼女は語った。

食事の後、友人に連れられて、私がかつて住んでいた茂名北路と吴江路の近く、「張園」と呼ばれるエリアに行った。私が住んでいた頃は、のんびりと日なたぼっこをするおじいさんたちがいるような中国の原風景が広がる場所で、私は週末の暇な時間に、よく散歩に出かけたものだ。

しかしそのエリアは大きく変わり、今では若者たちに人気のスポットになっている。吴江路からすぐの南京西路沿いには、世界に6カ所しかない豪華な「STARBUCKS RESERVE ROASTERY」がそびえ立っている。

この街の変化は目まぐるしく、かつての静かな風景は今や活気に満ちた若者の街へと変貌を遂げていた。

景気がいいのか悪いのか・・・。

高鉄での移動

今回の中国訪問では、上海から蘇州、蘇州から合肥、合肥から杭州、そして杭州から上海への移動は、すべて高鉄(Gao tie)を利用した。これは日本の新幹線に似た高速鉄道で、ビジネスクラス、一等席、二等席に分かれている。一等席でも十分に広く快適だが、移動中に仕事をする必要があったため、少々贅沢をしてビジネスクラスを選んだ。

ビジネスクラスの椅子はとてもゆったりしており、快適な乗り心地だった。料金も思ったより高くなかった。サービスも充実しており、おしぼり、おつまみ、飲み物が提供された。

ただ、移動自体は快適だったものの、大声で電話をする乗客や、イヤホンも着けずに携帯でドラマを見る乗客の態度にはいささか辟易した。この点は相変わらずだ。車両内に「保持安静 (KEEP SILENCE)」という看板があるのも納得できる。

お掃除ロボット

今回宿泊したホテルでは、どこもお掃除ロボットが活躍していた。日本でも見かけることは少なくないが、中国での普及は更に進んでいるように思う。

エレベーターの乗るときに、前から来たお掃除ロボットに意地悪して通り道を塞いだら、突然ロボットがしゃべり出した。

「请您让机器人通过。」(ロボットを通してください。)

EVの普及

今回の訪問で最も実感したのは、街中にあふれる電気自動車(EV)の多さだった。EVはガソリン車と違い排気口がないため外見からも識別可能だが、何より目立つのはナンバープレートが緑色であることだ。これにより一目でEVであることが分かる。タクシーに何度か乗ったが、その半分以上がEVだった。また、ホテルの隣にある駐車場には、EV専用の充電ステーションが設置されていた。

さらに、テスラのモデルYやモデル3も頻繁に目にした。マーケットシェアは数字で見るよりも実際に目にする頻度で感じるものだ、とよく言われるが、今回の体験はそれを如実に示していた。

携帯充電器

現地では、ほとんどの支払いが携帯電話のQRコードに依存しているため、携帯のバッテリー切れは深刻な問題になり得る。そのため、至る所に携帯電話用の充電器を貸し出す機器が設置されている。以前から見慣れた光景ではあるが、今回訪れてみて、その数と機器の進化にはさらに驚かされた。デジタルサイネージと組み合わせた洗練されたデザインが目立つ。

充電器の料金の支払いは、携帯電話のQRコードと連動しているため、もし借りた充電器を返し忘れると継続して料金が発生してしまう。充電器を持ち逃げされても、取りっぱぐれは起こらない。まさに究極の「チャリンチャリン」ビジネスモデルだ。

日本もいずれこうなるのだろうか。

変わらない風景

合肥の企業を訪れた時、会議室のテーブルの上に並べられた果物が目に留まった。これを見て、過去に中国の販売代理店を訪れた際、私たちを歓迎するためにたくさんの果物を用意してくれたことが思い出された。このあたりのおもてなしは変わっていない。

道沿いで合肥の特産品と言われるイチゴを売っているおばさんを見かけた。支払いはもちろんQRコード決済。

上海のクリスマス

上海には初日と最終日に2泊したが、いずれも天気は雨模様で且つ寒かった。

上海の大きなクリスマスツリーの写真を撮りたいと思っていたが、その想いは叶わず、帰国前日に泊まった花園飯店(Okura Garden Hotel Shanghai)のロビーに飾られたツリーが奥ゆかしくてかわいらしかった。

因みに、私が訪れた「焼き鳥福ちゃん」は花園飯店から歩いて5分。機会があれば、寄ってみてください。オーナーのCindyさんが日本語で迎えてくれます。

12月17日記

by 須毛原勲

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