社長エッセイ

社長の日曜日 vol.73 階段ダッシュ 2024.10.15 社長エッセイ by 須毛原勲

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 風に乗って漂ってくる金木犀の香りが秋を実感させてくれる。朝のラジオ体操に集まる人々の服装も一気に秋らしいものに変わってきた。

 そんな気候に後押しされ、長らく悩まされていた腰痛が和らいだこともあり、階段ダッシュを再開した。36段の階段を3回、合計108段のダッシュ。一日の始まりに気合いを入れる。

 大谷翔平選手、山本由伸投手のドジャースはナ・リーグの地区シリーズでダルビッシュ有選手のパドレスを破ってリーグチャンピオン決定シリーズへとコマを進めた。山本由伸投手とダルビッシュ有投手の投げ合いは見応えがあった。野茂英雄さんが1995年、ドジャースでフォークを武器にばったばったとメジャーリーガーを打ち取り、三振の山を築いたあの衝撃から30年近く経った2024年の今、日本人ピッチャーがプレーオフで投げ合うまでになった。凄いことである。ドジャースがワールドチャンピオンになるまで、プレーオフから目が離せない。

 衆議院総選挙を控え、メディアでは石破茂首相への批判に溢れている。勝敗ラインと言われる自公での過半数の確保さえ難しいのではないかとの論調が目立つ。

 その石破茂首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳と日本、米国、中国、ロシアの首脳が参加する東アジアサミットに出席するためラオスを訪れた。会議に先立ち、中国の李強首相と会談した。35分と短い時間だったようだが、報道によれば、「戦略的互恵関係」を包括的に推進する方向性を共有、日中協力に具体的な成果を出すように事務当局にお互いに指示すること、中国が日本産水産物の輸入を段階的に再開させる調整を両首相が評価、日中ハイレベル対話を活用した具体的な協力を推進という政治課題に加えて、先日起きた深圳市での日本人学校生徒が殺害された事件の事実解明と説明を要求したという。時間が限られる中、言うべきことを言うという姿勢を示したと言える。

 東アジアサミット会議の初めに、ラウンドテーブルに着席しようとする石破茂首相に手を差し出して握手を求める李強首相の姿がテレビのニュースに映し出されていた。このお二方、何だか上手くいきそうな気がする。早急に石破首相と習近平主席との会談を実現してほしいものだ。

 先週、喜ばしいビッグニュースが飛び込んできた。

 ノルウェーのノーベル委員会は11日、今年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表した。受賞理由は「核兵器のない世界の実現に尽力し、核兵器が二度と使われてはならないことを証言を通じて示してきたこと」としている。下馬評にも挙がっていなかった驚きの受賞である。ロシアのウクライナ侵攻が続き、イスラエルのガザ侵攻、レバノンのヒズボラとの戦い等、世界中で戦争が絶えない。ロシアのプーチン大統領は核兵器使用の選択肢を排除しないと明言している。日本被団協の永年の地道な活動自体への大きな評価はもちろんだが、世界情勢が今回のノーベル平和賞の受賞を後押ししたのかもしれない。

 テレビで被団協のこれまでの活動を伝える報道が相次いだ。その中で、1982年、ニューヨークの国連本部での日本被団協の代表委員だった故・山口仙二さんの演説を聞いた。

「No More Hiroshima, No More Nagasaki, No More War, No More Hibakusha!」

凄いパワーを感じた。

 受賞の報を受けたとき、広島県被団協の箕牧理事長の喜ぶ姿の横で、高校生平和大使が共に喜んでいた。被団協の平均年齢は既に80歳を越えているという。被爆者が年々高齢化し、被爆体験を語り伝えることが年々難しくなっている中、若い彼女たちの顔には、自分たちが語り継いでいくんだという意思がみなぎっていた。

 石破茂首相は今回の被団協の受賞をたたえながら、永年課題となっている核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加について「真剣に考える」と述べた。首相は「片っぽでは(米国の核抑止に)頼りながら、片っぽでは禁止するということをどう両立させるかだ」と語った。

 そもそも、政治経済には二律背反な課題が溢れている。だからこそ、リーダーシップが必要なのだ。決して諦めない被団協の長い地道な活動が今回のノーベル平和賞に繋がっている。そしてそれは、広島、長崎に原爆が投下されてから80年、誰も核兵器を使用していない、使用することをためらっていることに貢献しているに違いない。

 石破茂首相に期待したい。

10月14日

by 須毛原勲

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