馥郁たる梅の香
2月はプロジェクトが重なって時間が取れず、朝のジョギングが出来ない日が続いた。結果、月間の走行距離は100キロにも届かず、2015年から使っているNike Run Clubのアプリの記録としては、最低の距離になってしまった。今週は外出も一度きりで、ずっとオフィスに籠もりきり。身体を動かしていないせいか、何となくスッキリしない気がしていた。
土曜日に1週間ぶりで走りに出かけたが、ほとんどウォーキングに近い形だった。
久しぶりに大きめの公園でのラジオ体操にも参加すると、よく一緒になる年配の方に「ずいぶんお久しぶりですね」と声をかけられ、「どうかされたんですか? 体調でも崩されたのですか?」と続けて聞かれた。「いえ、少し仕事が忙しくて……」と答えると、「そう、じゃあ良かった」というやり取り。どんなに忙しくても、朝はできるだけラジオ体操に参加しようと改めて思った。
なまった体を叩き起こすため、ウォーキングの終点にある36段の階段を5往復ダッシュ。かなり気持ちいい汗をかいた。
いつの間にか公園や神田川沿いの梅は満開になっていて、歩いているとその馥郁たる香りに癒される。
球春
日本のプロ野球では各地でオープン戦が始まっている。我が巨人軍は、中日から抑えの切り札・マルティネス投手、ソフトバンクから甲斐捕手、そして楽天から田中将大投手を獲得し、メジャーリーグからキャベッジ選手も加入。昨季のMVPだった菅野智之投手がメジャーのオリオールズへ移籍してしまったのは寂しいが、戸郷翔征、山崎伊織、グリフィン、井上温大、赤星優志、堀田賢慎ら若手投手陣が穴を埋めてくれそうだし、田中将大が“魔改造”で何勝できるのかも楽しみだ。
海の向こうメジャーリーグでもオープン戦が開幕。大谷翔平選手は古巣エンゼルスとの初戦初回、花巻東高の先輩、菊池雄星投手からホームランを放ってスタートを切った。そのドジャースがカブスとともに、3月18日、19日に東京ドームでMLBの開幕戦を行う。前哨戦として、我が巨人軍が15日にドジャースと、16日にカブスと対戦する。今から楽しみで仕方がない。
3月は波乱の幕開け
土曜の朝、目が覚めると、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談の場で言い争いが起き、結果予定していた鉱物資源の権益をめぐる合意文書への署名が見送られたというニュースが駆け巡っていた。
YouTubeで関連する動画を見たが、実際にあそこまで激しい罵り合いが起こったのかと、ある意味感心してしまった。報道によれば、アメリカのルビオ国務長官らほぼ全員がトランプ大統領に交渉の中止を提言し、大統領もそれを受け入れたという。
ゼレンスキー大統領がトランプ大統領の言葉を遮り、上からかぶせるように発言したことも、明らかに不快感を与えただろう。さらに、バンス副大統領に対する「あなたにとって外交とはどういう意味なのか」という挑発的な発言も、「あなたは外交を理解していない」と公然と侮辱したように取られても仕方がないだろう。どちらの主張が正しいかどうかは別として、ゼレンスキー大統領があの場面でいちいち反論を重ね、しかも上から目線を感じさせる態度を取ったことに、果たして意味があったのだろうか。
メディアでは様々な意見が飛び交っている。その中で共感したのが、「ゼレンスキー氏が通訳を使わず直接会談に臨んだのが失敗だった」という意見である。
中国駐在時代、私も多くの商談の場を経験した。商談とは交渉の場であり、互いに有利な条件を引き出すため、時には強いプレッシャーをかけ合うことも珍しくない。相手から挑発的な言葉を投げかけられ、即座に反応してしまうと、言葉を選び損ねたり、感情的な表現を使ったりすることがある。まさに「売り言葉に買い言葉」で、感情の対立がエスカレートしてしまう。
優秀な通訳がいれば、こうした状況を緩和できる。私の場合、日本語、英語を自在に操る中国人スタッフが通訳を担当してくれたが、彼らが意図的に直接的な表現を避け、巧みな言葉選びをするような場面もあった。私自身が中国語をある程度理解できるようになった頃には、「ちゃんと訳してよ」と思うこともあったが、結果として彼らの意訳には、感情的になった場面で冷静さを取り戻す効果があった。「心は熱く、頭は冷静に」ということだろう。
実際のところ、優秀な通訳を育てるのは容易ではない。通訳自身が感情的になり、冷静さを失うケースもある。私が相手の言葉を正確に理解したいと思っているときに、通訳が「相手はくだらない文句を言っているので無視してください」と勝手に通訳を省略してしまったり、通訳担当が交渉の途中で、「相手の言う通り、私たちの要求は理不尽だ」と私に説教してきて困ったこともあった。
弁が立ち、自分の言葉に自信を持つ人ほど陥りやすい落とし穴がある。それは、「言葉だけで相手を説得できる」という思い込みである。どれだけ正論であっても、立場が変わればそれが正しくないこともある。感情が意図せず思考を停止させてしまう場面も少なくない。
ゼレンスキー大統領の最大の失敗は、自分の言葉がトランプ大統領やバンス副大統領の感情にどのような影響を与えるのかを理解しようとしなかったことだろう。映像を見れば明らかで、トランプ氏もバンス氏も怒りをあらわにしている。ゼレンスキー氏は自分の主張を納得させることに夢中になり、結果的に交渉相手を怒らせるという最悪の事態を招いてしまった。
トランプ大統領との交渉が決裂した翌日、ゼレンスキー大統領はロンドンを訪れ、スターマー首相と会談を行った。英国はウクライナへの支援を継続することを約束し、二人は熱い抱擁を交わしていた。
ウクライナ情勢は、これから一体どうなってしまうのだろうか。
3月2日