社長の日曜日

社長の日曜日 vol.96 走り梅雨 2025.05.26 社長の日曜日 by 須毛原勲

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 梅雨入り目前、カルガモの親子に癒やされつつも、スポーツと世界情勢は激動――今週の「社長の日曜日」は盛りだくさんだ。

季節の移ろい

 風薫る5月は瞬く間に過ぎ去り、空は連日どんよりと曇っている。東京では気温が下がり、本格的な梅雨入り前の「走り梅雨」。気象庁は5月16日、「九州南部が梅雨入りしたとみられる」と発表した。平年より14日、前年より23日早く、統計開始以来、九州南部が沖縄・奄美より先に全国最速で梅雨入りするのは初めてとのこと。東京の梅雨入りは6月上旬になる見込みで、鬱陶しい季節の到来が目前に迫っている。

 ジョギングコースの神田川では、カルガモの親子が、行き交う人々の視線を集めている。姿を見かけない日もあるが、出会えたときには思わず足を止め、その微笑ましい光景にしばし見入ってしまう。

スポーツ4題

 まずは大好きなスポーツの話題から。

 大相撲、今場所最大の話題は、2場所連続優勝を遂げた大関・大の里が、初土俵からわずか13場所で史上最速となる横綱昇進を果たしたことである。千秋楽では横綱・豊昇龍に上手ひねりで敗れ、全勝優勝こそ逃したが、その偉業は横綱として迎える今後の土俵に託せばよい。日本出身横綱の誕生は、現役時代に応援した稀勢の里以来であり、その稀勢の里の弟子の大の里が鮮やかに頂点を極めた姿には、言い尽くせぬ感慨を覚える。昨年、日本人横綱の誕生を夢見ながら世を去ったNHK相撲解説者・北の富士氏も、さぞかし天上で喜んでいることであろう。大の里の雄姿を生で見届けようと五月場所の入場券を申し込んだものの、15日間すべてで1枚も確保できなかった。相撲人気の高騰は喜ばしい半面、過熱気味の現状には一抹の複雑さも残る。

 ラグビー・リーグワンのプレーオフでは東芝が神戸を破り決勝進出を決めた。司令塔リッチー・モウンガ(ニュージーランド代表〈オールブラックス〉の SO)が躍動し、リーチ・マイケルも献身的なプレーで随所に顔を出した。観ていて心躍る試合だった。決勝の相手は、リーグ戦2位のパナソニックを準決勝で破った一昨年の覇者クボタスピアーズ船橋・東京ベイだ。東芝に2連覇の偉業をぜひ成し遂げてほしい。

 Jリーグの試合には、ここしばらく足を運べていないが、動向は常に気がかりだ。川崎フロンターレから鹿島に移籍した鬼木監督就任1年目の今季、チームが見違えるように強くなった。時期尚早とはいえ久々のタイトルが視野に入る位置につけている。楽しみである。

 一方、野球界では我が巨人軍が苦境に立たされている。主砲・岡本和真選手が5月6日の阪神戦で負傷離脱して以降、打線は日替わりオーダーを余儀なくされ、その存在の大きさをあらためて痛感させられている。この難局を乗り切ることを願ってファンは声援を送り続けており、連日スタジアムに足を運び、声が枯れるまで応援する姿は、まさに祈りに近い。得点のたびにビジョンに映し出されるオレンジ色のタオルが一斉に振られる光景を見ると、胸が熱くなる。ファンの声が届いたのか、日曜日のヤクルト戦は、エースの戸郷翔征投手が今季初勝利を飾ってヤクルトに3連勝。阪神戦の2連勝を合わせて今季初の5連勝。岡本選手が復帰すると見込まれる9月まで、何とか首位と2ゲーム差程度の位置で踏みとどまってほしい。

トランプ大統領の芸術的ディール(The Art of the Deal)

 さて、世界に目を向けると、トランプ大統領の一挙手一投足は引き続き世界の耳目を集めている。

 今回の中東歴訪では、サウジアラビア・カタール・UAEの湾岸3国から総額約5百兆円に上る対米投資コミットメントを引き出すとともに、サウジによる約1420億ドル規模の米国製兵器調達を取り付け、自ら掲げる“ディールの芸術”を体現した。湾岸諸国はAI向け半導体やデータセンターといった次世代分野への巨額投資によって「ポスト石油」期の成長軸を確保し、米国は景気浮揚と再選戦略の両面で追い風を得た格好である。

 他方、シリア制裁の段階的解除やイラン核合意の再活性化を示唆したことにより、今回の訪問は米国とイスラエルの距離が広がりつつあることを改めて印象づける場となった。中東を歴訪しながらイスラエルを素通りした事実には、ガザへの度重なる攻撃やイランへの核兵器使用をほのめかすイスラエルの姿勢に対し、かつて蜜月関係にあった米国が距離を取り始めている様子がうかがえる。世界情勢は目まぐるしく変転している。

 この歴訪が“芸術的なディール”と評される所以は、第1に巨額資金を即時に確約させた点、第2に相手国の内政的欲求を同時に満たす「相互最大化」の枠組みを編み出した点にある。投資・武器売却・制裁調整を一括パッケージ化し、「相手が最も欲するカード」と「自らが最も誇示したい数字」を交換した手法こそ、今回示された“ディールの芸術”である。

 政治的バーターも巧妙である。演説の掉尾でシリア制裁解除を電撃的に表明し、ムハンマド皇太子らを歓喜させた。人権問題を持ち出さず「取引一本」で応じる姿勢は、王族の体面維持と米国の仲介実績を同時に稼ぐ計算されたバーターである。

 さらに、成果の見せ方にも抜かりがない。ホワイトハウスの広報記事「Trump Effect」では、第2期トランプ政権後に米国へ流入した投資実績を体系的に提示し、今回の中東訪問で確保したUAE2兆ドル、カタール2兆ドル、サウジ6千億ドルのコミットメントを冒頭に掲げ、民間企業の投資実績を一気に塗り替える演出を行った。因みに、同ページの冒頭を飾るのは、ソフトバンクと OpenAI、Oracle が共同で推進する「Project Stargate」に対する5千億ドル規模の投資案件である。

令和の米騒動

 「米は買ったことがない」と放言した江藤農林水産大臣は更迭され(建前は辞任)、後任には小泉進次郎氏が就いた。コメの安定供給と米価引き下げは国民の切実な願いであり、その声を踏みにじる発言であった。当初、石破茂首相は江藤氏の続投を擁護したが、世論の激しい反発に抗しきれず、更迭に舵を切った。(※筆者個人の所感)

 小泉新農相は「入札を取りやめる」と明言し、備蓄米の店頭価格を5キログラム2千円へ引き下げる方針を示した。この価格設定には疑問を感じるが、量的にも価格的にも安定が望まれているのは事実。不退転の覚悟でぜひ実現してほしい。


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by 須毛原勲

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