社長の日曜日

社長の日曜日 vol.97 紫陽花 2025.06.02 社長の日曜日 by 須毛原勲

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 初夏の気まぐれな空を仰ぎつつ、街角では紫陽花がそっと色づき始めた。

 本稿では、そんな季節の移ろいを手がかりに、国際経済からスポーツ、科学まで──1週間の話題を縦横に綴る。雨間の息抜きに、社長の徒然をご笑覧いただきたい。

紫陽花の色づき

 東京は未だ梅雨入りを迎えていないものの、天気予報は連日の雨を告げていた。

 今週末も雨が予想されたため、予定していたゴルフを見合わせた。しかし、蓋を開けてみれば泣き出しそうな空は雨を落とすのを踏みとどまっていた。雨の合間を縫って走り出すと、朝の外気はひんやりと澄み、肌を撫でる冷たい風が実に心地よい。ジョギングコースの沿道では紫陽花が色づき始めている。雨上がりに露をまとったその花姿は、どこか物悲しくも美しい。

USスチール投資と鉄鋼関税――G7直前の日米ディールの行方

 先週末、「トランプ大統領が日本製鉄によるUSスチール買収に合意した」との報道が駆け巡った。

 真偽を見極めるため本稿での言及を控えていたが、案の定、5月30日に米ペンシルベニア州のUSスチール工場で行われた演説では、「日本製鉄がUSスチールへ140億ドル(約2兆円)を投資する」との表現にとどまり、“買収”という語は用いられなかった。トランプ氏は巨額投資への謝意を示しつつ、「USスチールは引き続き米国が管理することが最も重要だ」と繰り返した。同じ場でトランプ氏は、輸入鉄鋼およびアルミニウムに課している関税を6月4日から、現行の25%から50%へ引き上げる方針も表明した。

 一方、赤沢経済再生相はワシントンで第4回日米関税協議に臨んだ。協議内容は非公表ながら、「双方の立場を十分に把握し、合意に向けた議論が進展した」とし、米側も同認識を共有したという。日本側は関税率の引き下げではなく、全面撤廃を求め続けている。

 日本製鉄によるUSスチール投資と対日関税問題が交錯する中、最終的にどのようなディールへ収れんするのか。石破首相とトランプ大統領は6月15~17日にカナダで開催されるG7サミットに合わせ首脳会談を予定している。残り2週間でどのような着地点が示されるのか、注視したい。

処理水安全の合意と残された「10都県」禁輸――日中水産物規制解除交渉の光と影

 先週末、日本政府と中国政府の当局者が北京で協議を行い、一昨年夏に開始された東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を受けて中国が導入していた日本産水産物の全面禁輸措置を解除することで合意したとの報道があった。ただし、処理水放出以前から禁輸対象となっているいわゆる「10都県」(福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、長野、新潟〈米を除く〉)については、今回の解除の枠外とされた。

 10都県産品が解除対象から外れたことは誠に遺憾であるものの、中国側がこれまで繰り返してきた処理水放出への批判を事実上取り下げ、その安全性を認めた点は大きな前進である。小泉農林水産相には、一日も早い10都県産品の禁輸解除に結び付けるよう尽力してほしいと切に願う。

唯一無二の横綱

 大の里関が第七十五代横綱に昇進した。使者を迎えた口上では、「横綱の地位を汚さぬよう稽古に励み、唯一無二の横綱を目指す」と宣言。師匠・稀勢の里が昇進時に述べた「横綱の名に恥じぬよう精進する」という言葉を踏襲しつつ、自身の覚悟を端的に示した。かつては難解な四字熟語を盛り込む口上が流行したが、耳慣れない言葉より直截な決意が胸に響く。二所ノ関親方の「私は一番遅く上がり、大の里は一番早く上がった」という言葉が印象的である。稀勢の里が横綱昇進へ幾度も挑み、夢に手が届かなかったあの日々が、つい昨日のことのように思い起こされる。

祝!東芝 ラグビーリーグワン2連覇!

 我が東芝ブレイブルーパス東京がリーグワンを連覇した。
 国立競技場で行われた決勝戦で、東芝ブレイブルーパス東京はクボタスピアーズ船橋・東京ベイを18対13で下し、連覇を達成した。後半、クボタスピアーズ立川理道選手がトライとゴールを決めて5点差に迫り、1トライ1ゴールで逆転され得る状況に追い込まれたが、東芝は最後まで主導権を渡さなかった。
 勝利の鍵を握ったのは、ニュージーランド代表SOリッチー・モウンガ選手である。対するクボタのSOバーナード・フォーリー選手はオーストラリア代表。南半球屈指の司令塔同士の対決は、リッチー・モウンガ選手に軍配が上がった。「自分の武器はラグビー脳」と語る彼の広い視野と、パス・キック・ランを即座に選択する判断力が光った。
 東芝ブレイブルーパス東京の偉業に、心から祝意を表する。

ミトコンドリアの力を

 命とは何か――NHKスペシャル『人体III』を実に興味深く観た。

 生命の本質、細胞の正体、そして細胞内キャラクターやミトコンドリアの役割を、精緻なCGでまるで体内を遊泳しているかのように映し出す。司会はノーベル賞受賞者・山中伸弥氏とタモリ氏。毎回招かれるゲストの人生のそれぞれの出来事を生命の不思議と絡めて解き明かしている。

 中学の生物の授業で知り、名前だけ覚えていた“ミトコンドリア”。それが人間のパワーの源泉だという解説は新たな気付きだった。

 自分自身も、体内の“発電所”たるミトコンドリアのさらなる奮闘を期待したいものである。

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by 須毛原勲

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