社長の日曜日 vol.100 100回目の「社長の日曜日」 2025.06.23 社長の日曜日
拙ブログ「社長の日曜日」が100回目の節目を迎えた。
久しぶりに訪れた成都・上海の今の風景、―今週めぐり合った風景と想いを、一気に振り返る。
夏至の朝
6月21日は夏至であり、一年でもっとも昼が長い日だった。東京の日の出は午前4時25分頃。
今日は、やや遅めに家を出てジョギングではなくウォーキング。梅雨入りしたはずだが、朝から陽射しは強く、手首に巻いたリストバンドの跡が白く残るほど日焼けしてしまった。お気に入りのアメリカンベリーには出会えなかった。犬の朝散歩の出だしが早まっているようだ。人間である自分も、早朝のうちに走り出さなければ体がもたないと痛感する暑さであった。
100回目の「社長の日曜日」
2023年4月3日に「社長の日曜日」というブログを開設して以来、本稿で通算100回目となる。当初はビジネスに関する事柄を冗長に綴ることも多かったが、近頃は1週間の出来事や所感を徒然に記す程度にとどめている。執筆は生活の一部として習慣化し、日曜日に1週間を振り返る時間は私にとって心休まるひとときである。今後も筆を執り続ける所存であるので、月曜朝にお目通しいただければ幸甚である。
パンダの故郷、成都出張
先週、久方ぶりに中国・成都へ出張した。
成都は「三国志」で蜀漢の都として繁栄した街であり、武侯祠(諸葛孔明を祀る祠堂)や錦里古街には今なお往時の気配が色濃く残る。劉備玄徳、関羽、張飛、そして諸葛孔明――高校時代に吉川英治の大長篇をむさぼり読み、のちに北方謙三版へと読み継いだ私にとって、成都は物語と現実が重なり合う特別な地である。
歴史だけではない。四川省の省都・成都は常住人口約2,100万(2024年推計)を擁する西南随一のメガシティである。国家級ハイテク区「成都ハイテク産業開発区」には半導体や AI 企業が集積し、天府国際空港と放射状に延びる高速鉄道網が内陸を世界へつなぐ。
近年、成都は“メディア都市”としても頭角を現している。2000年代半ばに国家級アニメ・ゲーム産業基地に指定されて以降、コンテンツ産業が急伸し、2019年には映画・アニメ・eスポーツを核とする「天府スマートメディアシティ」構想が発表された。翌12月の日中韓首脳会談で安倍晋三元首相が成都を訪問。成都は“国際コンテンツ拠点”としての地位を一段と高めた。
古都の情緒、最先端テクノロジー、そして躍動する文化産業――過去と未来が静かに共鳴する希有の都市、それが現在の成都である。緑陰の並木道に浮かび上がる、悠久の時間と次代を切り拓く産業が同居する調和こそ、私が成都を「最も好きな街」と呼ぶ理由である。
出張の目的は、当社と戦略的パートナーシップを結ぶ中国翻訳大手(同国市場第3位)企業と日本市場展開の具体策を協議することだった。同社は中国のエンタメコンテンツの翻訳・字幕制作で築いた実績を基盤に、生成AI と人力編集を組み合わせたハイブリッド型サービスを推進している。DeepSeek-R1 の登場で単純翻訳の需要が減少する一方、細部調整やニュアンス表現には依然として人手が不可欠である点で意見が一致した。
打ち合わせでは、同社が開発した自動翻訳システムが会話内容をスクリーンへリアルタイム投影していたが、私の中国語・英語・日本語はいずれも完全には投影されなかった。システムの成熟度と私の発音の不明瞭さ―おそらく双方の課題を痛感し、生成 AI が越えるべき壁の厚さを改めて認識した。因みに、同行した中国人の弊社マネージャーは私の英語も中国語も完璧にヒアリングしてくれる。
食事はスタッフの勧めで地元客しか訪れないローカル店へ。麻(マー=花椒)と辣(ラー=唐辛子)が容赦なく利いた料理は、いずれも“死ぬほど”からい。かつての駐在時代に成都支店の同僚が気遣って選んでくれた店の優しさを思い出し、感謝の念を新たにした。
滞在中、成都パンダ繁育研究基地を訪れた。雨模様のため来園者は少なく、笹を悠然と手繰るジャイアントパンダを心ゆくまで眺めることができた。同基地は、上海駐在時代に双子のパンダ育成を支援して以来、毎年のように足を運んだ懐かしい場所である。今では赤ちゃんパンダを抱くことは許されないが、柵越しに見守るだけでも、その愛らしさは変わらぬ魅力を放っていた。
パートナー企業のオフィスには茶白のパンダのぬいぐるみが置かれていた。調べると「秦嶺(シンレイ)パンダ」と呼ばれる稀少亜種で、確認例はわずか7頭。そのうち飼育下にある唯一の個体「七仔」が陝西省西安市郊外で保護されているという。黒白とは異なる柔らかな色合いに思いを馳せ、成都で見た白黒の悠然たる姿と二重写しにして頬が緩んだ。中国の食と文化、そしてパンダたち――今回の出張は、その奥深さを改めて体感する旅となった。
上海雑感 – 日系ビジネスの現在地
今回の上海出張では、往復とも日系航空会社を利用したにもかかわらず、機内で日本人旅行客の姿はまばらであった。日本人長期滞在者は12年連続で減少し、2024年10月時点で10万人を下回ったとの外務省統計が示すとおり、駐在員のみならず出張者まで細る傾向を肌で感じた。
市内で訪れた日系レストランでも状況は同様である。日本人シェフが握る寿司店も、古くから通った焼鳥店も、客席を埋めるのはほぼ中国人のみ。コロナ禍を契機に一度離れた日本企業と人材が、再び中国へ戻るには相応の時間を要するだろうとの感触を得た。
もっとも、街の熱気が失われたわけではない。金曜夜、レストランからホテルまで散歩がてら歩くと、歩道にテラス席を張り出したレストランやバーはどこも満席で、若い客の談笑が途切れない。中国の消費は全体として慎重姿勢が続くものの、外食や娯楽といった“身近な体験”には財布の紐が緩むという指摘もある。
大卒の失業率が一説には50%を超えると言われているが、高学歴でも就職口が限られる若者は、モノより体験へ支出をシフトさせ、「今日を楽しむ」行動に価値を見いだすと言われる。
大局的には景気回復への道のりは長いが、街角の熱量は確かに残っている。日本人の不在が際立つ今こそ、現地の変化を肌で感じ取り、次の好機に備える視点が求められると痛感した。
背番号3よ永久に
野球殿堂博物館は、6月3日に逝去した長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督を偲び、7月12日から8月31日まで追悼特別展示を開催するという。写真・映像・実物資料を通じて、長嶋氏の足跡をたどる企画である。昭和天皇・皇后両陛下の御前でサヨナラ本塁打を放った1959年のバットや、現役時代・巨人監督時代・侍ジャパン監督時代のユニフォームなどが並ぶとのこと。ぜひ足を運びたい。
【お知らせ】

当ホームページにて、新たな連載を開始した。
タイトルは「初めての海外進出 ― 成功への鍵」。
34年間の海外事業経験と、その後の中小企業の海外展開支援で得られた知見と実感をもとに、全14回のシリーズとして構成している。
現在公開中:
毎週火曜・木曜更新予定。今後の更新にも是非ご期待を。
詳細は下記URLをご参照ください。
https://sugena.co.jp/go_overseas
6月22日