社長の日曜日

社長の日曜日 vol.128 雪に耐えて梅花麗し 2026.01.26 社長の日曜日 by 須毛原勲

  • twitter

最強寒波と永田町の温度差

 寒い。早朝ウォーキングのために一歩外に出ると、空気が刃物のように肌を刺す。いつもの公園も人影はまばらだ。興味深いのは、ゴールデンレトリバーなどの長毛の大型犬でさえおしゃれな防寒着をまとっているのに対し、柴犬の多くは素っ裸のまま、意気揚々と歩いていることだ。彼らの妙なプライド(妻に言わせると、柴犬は特に警戒心が強いため、異物に強い抵抗を持ち、洋服を嫌う子が多い、とのこと。)に感心しつつも、手袋の中の私の指先は、感覚がなくなるほど痛い。

 日本列島は今、史上最強クラスの寒波に見舞われている。北海道や北陸で猛威を振るっている雪雲の親玉(JPCZ)が南下し、太平洋側でも警戒が必要なレベルだ。さらに厄介なのは、この寒波が「三段構え」であり、週明けにかけて交通麻痺のリスクが続くことだ。

 目を世界に転じれば、北米シカゴでは体感マイナス45度、中国最北端でも氷点下50度近くを記録しているとのこと。夏の猛烈な暑さと、冬の極端な寒波。世界中が気候変動の渦中にあることを、実感せざるを得ない。

 そんな地球が震えるほどの極寒の中、永田町だけは別の熱を帯びているようだ。この最強寒波が列島を直撃する最中、衆議院選挙が始まろうとしている。「なぜ、今なのか?」 雪に閉ざされる地方、受験生たち(そしてそれを見守る人たち)への影響。「大義はあるのか」という素朴な疑問が、白い息とともに漏れる。高市首相はこれを「信任投票」としたが、この凍てつく空の下で展開される政局が、国民の生活実感とどれだけ乖離せずにいられているか。

 天候も政治も、周囲は荒れているが、我々経営者は翻弄されることなく、思考まで停止させてはならない。

観光立国・日本の「現在地」

 JNTO(日本政府観光局)から発表された2025年のインバウンド数は、ついに4,268万人を超えた。「4000万人の壁」を、完全に突破したのだ。

 メディアはこぞって「米国市場の好調(月間27万人)」を報じるが、ここで冷静になる必要がある。日本から見て、欧米はあまりに遠い。物理的な距離とコストを考えれば、欧米市場はあくまで「ボーナス」だ。一方で「激減した(前年比45%減)」と騒がれる中国は、それでも月間33万人。メディアに持ち上げられている米国よりも、絶対数ではまだ多いのだ。香港・台湾を含めれば、やはり近隣のアジアこそが観光産業の「土台」である現実は揺るがない。

 政府は「2030年6000万人」を掲げるが、中国からの完全復活無しにこの数字はあり得ない。「もう中国からは来なくていい」という排斥論は、あまりに短絡的だ。

 政治は冷え込んでも、民間の熱は違う。昨年12月、上海にオープンした「スシロー」には14時間待ちの行列ができたという。美味しいものを愛する「胃袋」に国境はないのだ。排斥するのではなく、どうパイプを繋ぐか。来る春節、来日する上海の友人たちと久々に杯を交わし、民間レベルでの「雪解け」の糸口を探りたいと思う。

「箱」を捨てたソニー、「心臓」を選んだホンダ

 今週、日本の製造業の未来を占う、対照的な二つのニュースが駆け巡った。

 一つは、ソニーグループの決断だ。テレビ事業を分社化し、実質的な主導権を中国TCLへ譲る。市場はこれを、ハードウェアからコンテンツ企業への「進化」と評価する。Netflix等配信サービス全盛の今、重要なのは「箱(テレビ)」ではなく「中身」だ。経営判断として、これほど合理的な選択はない。だが、昭和・平成を駆け抜けた一人のビジネスマンとして、一抹の「寂しさ」もよぎる。「It’s a Sony」が輝きを保証していた時代。その象徴が手元から離れていくことに、一つの時代の幕引きを感じずにはいられない。

 そんなセンチメンタルな気分を吹き飛ばしてくれたのが、ホンダのF1復帰だ。2026年、名門アストンマーティンと組み、世界最高峰のサーキットへ戻ってくる。ソニーが「モノ」から離れる一方で、ホンダはあえて泥臭いエンジニアリングの極致へ再び飛び込む。「電動出力3倍」や「脱炭素燃料」への挑戦は、次世代技術を磨く最前線だ。轟音の中で技術を証明しようとするその姿に、「やっぱり日本はモノづくりだ」という理屈抜きの興奮が込み上げてくる。

 形を捨てて体験へ純化するソニーと、技術を磨き上げて戦うホンダ。道は分かれたが、どちらも世界で勝ち残るための強烈な意志表示だ。寂しさと熱狂がない交ぜになったニュースは、我々に「お前はどう変わるのか?」と問いかけているようだった。

どんなことでも、お気軽にご相談ください。https://sugena.co.jp/contact-us/

海外事業で課題をお持ちの方 

海外進出https://sugena.co.jp/service/overseas-business/

海外での製造・調達https://sugena.co.jp/service/open-innovation/

海外企業との協業https://sugena.co.jp/service/start-up/

日本進出で課題をお持ちの

日本進出、現地化https://sugena.co.jp/service/japan-business/


《今週の写真》寒風に耐える梅花

先週はまだちらほらだった井の頭公園の梅も、場所によっては既に満開に近くなった。 最強寒波の中、朝日を透かした淡いピンク色の小ぶりの花弁。その一つひとつから、「負けてたまるか」という熱い意志(こえ)が聞こえてくるようだ。

雪に耐えて梅花麗し。

――西郷隆盛が、英国留学に向かう甥への激励として贈った漢詩の一節

「耐雪梅花麗」(雪に耐えて梅花麗し)、「経霜楓葉丹」(霜を経て楓葉丹し)

梅は雪に耐えて美しく咲き、楓は霜に紅葉するように、人間も苦難や試練を乗り越えることで大きく成長し、大きなことを成し遂げられるという教え。

2026年1月25日

by 須毛原勲

ブログ一覧に戻る

HOMEへ戻る