猛暑と豪雨が交互に襲い、街も世界も揺れ動いた1週間だった。
濁流の夜、そして朝の友
10日木曜の夜、東京上空には線状降水帯が停滞し、豪雨に見舞われた。テレビに映る目黒川は水かさが増し濁流と化し、今にも氾濫しそうであった。
自宅近くの公園の池では、カイツブリが小さな浮巣で子育ての真っ最中である。ジョギングの折に立ち寄ると、集まっていた人の一人が「雛に加えて、もう一つ卵があるの。もうすぐ孵るわよ。」と教えてくれた。目黒川の映像を見ながら、浮巣の雛と卵を心配した。
翌朝、真っ先に池へ向かうと、再び人の輪ができていた。水面をのぞくと、雛たちの中心に一回り小さな白い卵が残っている。橋の上で見守る人々の表情にも、安堵の色が広がっていた。
朝のラジオ体操では、常連のポインター犬「ラルー」はしばらく姿を見せない。その代わりに、コーギーの「はな」と親しくなった。コーギーは英国王室ゆかりの犬種としても知られる。体操中、はなは飼い主の足もとでおとなしく座り、その愛らしさで皆を和ませている。ジョギングの締めくくりにストレッチをする丘の上では、ビーグル犬「ねね」が尻尾を振って挨拶してくれる。愛知県から迎えられた子で、豊臣秀吉の正室「ねね」にちなみ名付けられたという。
こうした愛らしい犬たちとの出会いが、早朝に布団から抜け出す小さな動機となっている。
相互関税―最後の10日間の攻防の行方
トランプ大統領は7日午後、8月1日付で発動される「相互関税」の新税率を各国政府に書簡で通告し、日本には25%を適用すると明言した。同時に、3カ月の猶予期間が9日に切れる予定だった同関税の一部停止措置を延長する大統領令にも署名している。発効までに合意が公表された国は、今のところ英国とベトナムの2カ国のみである。
トランプ大統領は、当初、ほぼ全ての国・地域に一律10%を課し、日本に対しては、さらに14ポイントを上乗せして計24%とすると発表していた。今回の通告により、日本の対米税率はさらに1ポイント引き上げられる計算となる。
交渉の窓口を務める赤澤経済再生担当相は、これまで7度にわたり渡米した。移動に費やした時間は延べ170時間、総移動距離は約15万キロメートル―地球から月までの約3分の1に相当する。しかし成果は乏しく、むしろ税率は1ポイント引き上げられた。交渉7往復、成果は+1%。赤澤氏は事前のアポイントメントを取らず、財務のベッセント長官、商務のラトニック長官、国務のルビオ長官らに“直談判”を試みる方式を採っているらしいが、初回訪米時にトランプ大統領と笑顔で記念撮影した以降、会談内容は一切公表されていない。
一方、11日にはルビオ国務長官がクアラルンプールで中国の王毅外相と会談し、6対6の協議風景が日本の新聞各紙の紙面を飾った。米中首脳会談の実現も現実味を帯びつつあり、米中摩擦に端を発した「相互関税」は結局、米中間で最大の妥協が成立し、同盟国の日本が過大な負担を背負わされるのではないかと危惧される。
ベッセント財務長官を団長とする米代表団は19日に大阪・関西万博を視察する予定である。20日に参議院選挙を控える日本政府が、選挙前に不利な条件で妥結するとは考えにくく、交渉のタイムリミットは参議院選挙の後の、実質10日足らずとなる。もし自民党が選挙で過半数を割る事態となれば、交渉は振り出しに戻る公算が大きい。
米中貿易摩擦の本質とは – より深掘りしたい読者に向けて
好評を博している当社ブログ『未来はここにある――中国Z世代のリアルを読む』では、今月「米中貿易摩擦」を取り上げる。本稿は、事実に根ざした客観的かつ冷静な視点を保ちつつ、論理的かつ平易に論点を整理した内容である。記事は7月16日(水)、23日(水)、30日(水)の3回に分けて当ホームページに掲載する予定だ。米中貿易摩擦の本質、両国の思惑、そして今後の行方を把握する一助となるはずである。ぜひご一読願いたい。
草原からの笑顔
天皇・皇后両陛下がモンゴルを公式訪問された。現地では連日、熱烈な歓迎ぶりが報じられている。令和5年のインドネシア、令和6年の英国に続く3カ国目の親善訪問である。
8日間の滞在中、両陛下はチンギス・ハーン像に謁し、モンゴル最大の祭典「ナーダム」の開会式にも臨席された。晩餐会では、陛下自らビオラを携えモンゴル国立馬頭琴交響楽団と共演。「浜辺の歌」とモンゴルの民謡が響き渡り、会場は温かな拍手に包まれた。
8日の晩餐会で、陛下がモンゴル語で「ター・ブフンテェ・ダヒン・オールズスンダー・タータェ・バェン(皆様との再会をうれしく思います)」と挨拶されると、場内はひときわ沸いた。
余談だが、今、北方謙三著『チンギス紀』を読み進めている。昨年10月から毎月1冊ずつ文庫化が進み、すでに第9巻まで刊行された。ページをめくるたび、遥かな草原と乾いた風が目の前に広がる。
テレビに映る両陛下の笑顔と、本の中で躍動するモンゴルの大地、我が家のリビングに飾られた絵本『スーホの白い馬』。遠い国で交わされる友情に思いを馳せ、馬頭琴の郷愁に満ちた音色が聞こえるような――そんな日曜の終わりである。
7月13日
【お知らせ】

当ホームページにて、新たなシリーズを掲載中。
タイトルは「初めての海外進出 ― 成功への鍵」。
34年間の海外事業経験と、その後の中小企業の海外展開支援で得られた知見と実感をもとに、全14回のシリーズとして構成している。
現在公開中:
是非ご一読いただき、お役立てください。
以下、公開予定。
Vol.10 人・資金・時間 – 3大リソースを設計せよ(7月15日公開予定)
Vol.11 海外コミュニケーション – 言語・文化・本音を掴む(7月17日公開予定)
Vol.12 支援の受け方・選び方 – 主体性を持ち“キャディー”を使いこなす(7月22日公開予定)
最終回 いま帆を揚げよ – 90日で海に出るロードマップ(7月24日公開予定)
詳細は下記URLから