社長の日曜日

社長の日曜日 vol.116 We rule October 2025.11.03 社長の日曜日 by 須毛原勲

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オレンジ色の季節も終わり

 気が付けば、もう11月。霜月の名のとおり、朝晩寒くなってきた。

 金木犀の花、ハロウィーンのカボチャ――先週まで、街も空気もオレンジ色に包まれていた。

 「Trick or Treat」。ハロウィーンで子どもたちが口にする、おなじみの言葉である。シンガポールに駐在していた頃、まだ小学校に入ったばかりの息子が、同じコンドミニアムの友達と一緒に「Trick or Treat」と家々を回り、普段あまり口にできないようなえげつない色のお菓子を沢山もらって喜んでいた姿を思い出す。常夏のシンガポールでは、ハロウィーンの子どもたちは汗だくで走り回っていたものだ。

 先日通りかかった渋谷の街のあちこちにはカボチャのデコレーションが飾られていたが、「禁止だよ!迷惑ハロウィーン」――そんな垂れ幕がいくつも掲げられ、空気はどこか浮き立ちながらも、自制の色を帯びていた。幸い、ハロウィーン当日の東京は激しい雨だったこともあり、大きな騒ぎにはならなかったようである。

ブルーの躍動

 3連休の土日、多くの人がMLBワールドシリーズに釘付けになっていたことだろう。

 日本時間・日曜日に行われた第7戦は、まさに息を呑むような死闘であった。大谷翔平選手が先発登板したが、3回に痛恨のスリーランを浴びて降板。ホームランを打たれ、マウンドで膝に手をつきうつむく彼の姿を見たのは初めてだった。それでもドジャースはホームラン攻勢でじわじわと追いつき、9回裏、4対4の同点、1死ランナー1・2塁の場面で、前日先発登板した山本由伸投手が連投登板し、見事に抑えた。
 延長11回、ドジャースは劇的な勝ち越し本塁打をスミス選手が放って試合をひっくり返し、その裏も山本投手が力投し、ドジャースはついに頂点を掴んだ。

 優勝の瞬間、山本由伸投手の雄叫びはまるで若きライオンが咆哮するようであった。抑えきれない激情と誇りが、その一瞬に凝縮されていた。ドジャースは2年連続のワールドシリーズ制覇。山本由伸投手は文句なしのシリーズMVPである。漫画のような奇跡的展開に、日本中が心を震わせたに違いない。

 テレビ越しに観戦しながら、改めて感じたのはメジャーリーグの技術力の完成度の高さである。必要な場面では迷わずバントをし、それを初球から正確に決める。守備も抜群で、ここぞというシーンでファインプレイの連発。「メジャーの野球は大味だ」と言う人もいるが、実際には一つひとつのプレーが緻密で洗練されている。
 敗れたブルージェイズのゲレーロJrもまだ26歳ながら、打撃・守備・走塁のいずれも高水準であり、将来が楽しみな選手である。一気にファンになった。

 そして、久しぶりに、野球というスポーツの奥深さと面白さを心から堪能した。

“We rule October”

――ドジャースの優勝記念Tシャツにバックプリントされたその言葉が、実にかっこいい。

高市外交、笑顔の幕開け

 10月21日、第104代内閣総理大臣に選出された高市首相が、就任直後から精力的に動いている。

 初の外遊先はマレーシアであった。東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席し、各国首脳らと笑顔で並ぶ姿が印象的である。中央でほほ笑む高市首相は、いかにも嬉しそうであった。

 帰国後の28日には、東京都内でトランプ米大統領と会談。「日米関係の新たな黄金時代を築きましょう」と語りかけ、満面の笑みで握手を交わした。トランプ氏が安倍元首相と非常に良好な関係を築いていたことを踏まえ、高市首相はその「安倍ライン」を最大限に活用しつつ、関係構築に全力を挙げたようである。両者の笑顔のツーショットは、翌日の紙面を大きく飾った。

 30日には、アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席のため韓国・慶州を訪問し、李在明大統領と会談。ここでも満面の笑みで握手を交わした。
 矢継ぎ早の外交日程をそつなくこなし、日本初の女性首相という注目も手伝って、多くの首脳から温かく迎えられたようである。高市首相の人柄を深く知るわけではないが、意外に「人たらし」の資質を備えているのかもしれない。外交とは所詮、人と人との関係である。そういう意味では、良い兆しといえるだろう。

 そして31日、韓国・慶州において、中国の習近平国家主席との初会談に臨んだ。
 かねてより対中強硬派として知られ、毎年靖国神社に参拝してきた高市首相に対し、就任時に祝電を送らなかった習主席。
 両者の初対面は緊張感を帯びていた。会談時の写真を見る限り、表情は笑顔というより、やや硬い表情に見えた。ただ、X(旧Twitter)に投稿された控室での写真では、習主席もわずかに笑みを浮かべているようにも見える。
 中国社会には、政府にも民間にも多くの女性リーダーが存在し、彼女たちは率直に意見を述べる。その意味で、高市首相と習近平主席は、意外と相性が合うかもしれない。

季節のように、仕事もまた移ろう

 先月末、仕事で一つの大きな決断を下した。毎週のように新幹線に揺られ大阪へ通っていた事業から撤退することにしたのである。

 撤退という大きな決断に、一瞬足が止まりそうになったが、その1週間後、新たに別の企業の顧問として事業再編などの業務に携わることになった。

 今朝、神田川沿いを走ると、雨で足元に金木犀の花びらが積もり、オレンジ色の季節の終わりを告げていた。

 季節が移ろうとともに、仕事のステージもまた、静かに入れ替わっていく。

11月2日

by 須毛原勲

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