■ 「さまざまの事おもひ出す桜かな」(松尾芭蕉)
天気予報で、この週末は春の嵐。桜も見納めになるかもしれないと思い、土曜日の朝は久しぶりに遠くまで足を伸ばした。神田川沿いの桜並木を、下高井戸の公園まで歩いた。雨の日が続いていたが、花は意外とたくさん残っていた。
桜の季節は、子どもたちが新しい学年へ、新しい学校へと踏み出す季節だ。日本では多くの行政や企業が期末から新しい期へと移る季節でもある。どこかもの悲しい気持ちになるのは、私だけではないだろう。特に、雨模様のどんよりとした曇り空を背にした桜の花びらは、その寂しさをいっそう際立たせる。
子どもの頃、故郷の水戸の桜山という小高い山で見上げた桜。大人になって、東京のあちこちで見るソメイヨシノ。桜にまつわる記憶は、数え切れないほどある。
中国駐在時代、武漢大学で出会った桜。あの桜には複雑な歴史がある。1939年、武漢を占領した日本軍が傷病兵の望郷の思いを慰めるために植えたのが始まりだ。戦後は伐採論も出たが残された。現在の桜の多くは1972年、日中国交正常化の際に田中角栄首相が贈った1000本の一部だという。現地の大学教員は「帝国主義の桜ではなく、友好の桜」と語っていた。日中の歴史の重みを、花びらの向こうに感じた記憶がある。
中国の販売代理店の社長たちと、大阪、京都、熱海、小田原、東京と桜前線を追いかけて旅をしたこともある。
桜は、いつもその時々の自分と一緒にいた。
■海外で頑張る日本人
ブルージェイズに移籍した岡本選手が好調なスタートを切っている。青いユニフォームに7番の背番号。まるで昔からそこにいたかのように生き生きとしている。嬉しいような、少し複雑な——巨人ファンとしての正直な気持ちだ。
ヤクルトからシカゴ・ホワイトソックスに移籍した村上宗隆選手は、3試合連続ホームランという鮮烈なメジャーデビューを飾った。素直に、思い切り暴れてほしいと思う。
桜と言えば、ドジャース対ワシントンナショナルズの中継で、ナショナルズパークスタジアムに植えられている桜や、有名なポトマック川沿いの桜並木の映像が映し出されていた。同じソメイヨシノでも、場所が違うと何となく雰囲気が違う感じがするのは気のせいだろうか。日本から海外に出て活躍する選手たちも、その土地に馴染んで、日本の時とはまた違う色の花を咲かせてほしい。
もうひとつ、胸が躍るニュースが届いた。サッカー日本代表が、聖地ウェンブリー・スタジアムでイングランドを1対0で撃破したのだ。三笘薫選手の鮮やかなカウンターゴールが決勝点となった。FIFAランキング4位のイングランドを、同18位の日本が破るという大金星。日本がイングランドから白星を挙げたのは、史上初のことだという。
今年6月11日、FIFAワールドカップが米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で開幕する。ウェンブリーでの勝利を弾みに、本番での躍進が今から楽しみでならない。
■ 「おもしろきこともなき世をおもしろく」
当社ホームページでリニューアル連載を開始する「社長対談シリーズ」の第1回目のゲストに、青山社中株式会社筆頭代表CEOの朝比奈一郎さんをお迎えし、先日収録を行った。
朝比奈さんは、東京大学法学部を卒業後、ハーバード大学行政大学院を修了し、経済産業省に入省。霞ヶ関改革を志す若手官僚の会「プロジェクトK」を立ち上げ、初代代表を務めた後、2010年に青山社中を設立した人物だ。「青山社中」という名には、坂本龍馬が主宰した日本初の商社・亀山社中への深い敬意が込められている。旧暦11月15日——奇しくも龍馬の誕生日であり命日でもあるその日に、会社を設立したという。日本を変えたいという龍馬の魂を、現代に引き継ごうとする朝比奈さんの志に、深く共鳴した。
対談の中で、座右の銘として「我より古をなす」という言葉を紹介してくださった。自分が始めたことが、いつか「古き伝統」になるほどの仕事をする、という意味だ。その言葉が、対談を終えた後も頭を離れない。
司馬遼太郎の「龍馬がゆく」は何度も読んだ。高杉晋作を描いた「世に棲む日日」も、繰り返し手に取った小説だ。朝比奈さんの話を聞きながら、その世界が目の前で息を吹き返してくるような感覚があった。
そして高杉晋作の辞世の句の話になった。
「おもしろきこともなき世をおもしろく」
下の句は、看病していた野村望東尼(のむらもとに)が続けた。幕末の女流歌人で、私財を投じて高杉晋作ら志士たちをかくまい、その活動が藩に目をつけられて玄界灘の孤島に流罪となった女性だ。刀ではなく、歌と情けで幕末を生き抜いた。
「すみなすものは心なりけり」
下の句を聞いた晋作は「おもしろいのぅ」と呟き、息を引き取ったと伝えられている。(享年27歳)
2003年、私は中国赴任の1年前に上海の外灘に立った。高杉晋作が1862年に同じこの地に立ち、欧米列強に支配される中国を目の当たりにして日本の危機を感じた、あの瞬間を思った。161年の時を超えて同じ風景が目の前に。あの夜の外灘が、私を中国へ向かわせる一つの原点になった。
朝比奈さんとの1時間の対談は、20年以上前の私の思いを鮮やかに呼び覚ました。おもしろきこともなき世を、おもしろくしようとした男たちの話が、今この時代と確かに繋がっていた。
朝比奈さんとの『新・社長対談』は4月中に公開予定だ。今後も、私が会いたいと思う人、注目する人との対談をシリーズとしてお届けしていく。どうぞご期待いただきたい。
■ 今こそ、中国 ーホームページ刷新のお知らせー
このブログを読んでくださっている方はすでにお気づきかもしれないが、4月1日より、当社のホームページを全面リニューアルした。お客様に当社の事業をよりわかりやすくお伝えできるよう、全体を見直した。
あわせて、新たに『中国ビジネス相談室』のページを開設した。 https://sugena.co.jp/china-business/
日中関係が厳しさを増す今だからこそ、「今こそ、中国」——これが私たちのメッセージだ。中国関連ビジネスを強化すべく、専門スタッフの体制を整えてきている。中国でのビジネスについてお悩みのことがあれば、どんなことでも、ぜひ、お気軽にご相談ください。
どんなことでも、お気軽にご相談ください。https://sugena.co.jp/contact-us/
海外事業で課題をお持ちの方
●海外進出:https://sugena.co.jp/service/overseas-business/
●行政・自治体向けサポート:https://sugena.co.jp/service/local-government/
●海外企業との提携・オープンイノベーション:https://sugena.co.jp/service/open-innovation/
●開発・調達・製造支援:https://sugena.co.jp/service/cost-reduction/
●中国ビジネス:https://sugena.co.jp/china-business/
日本進出で課題をお持ちの方
●日本進出、現地化:https://sugena.co.jp/service/japan-business/
今週の写真:「秒速5センチメートル」
桜の花びらが落ちるスピードだという。新海誠の同名アニメに登場する言葉で、昨年、実写版も公開された。先日、東京から北京へ向かう全日空の機内で、その実写版を観た。実写版のヒロインを演じた子役、白山乃愛さんの演技が素晴らしかった。帰国後、アニメ版もNetflixで観た。名作だ。
3月24日の朝。強い風の中、桜の花びらが舞っていた。iPhoneでその映像を撮った。
Geminiに解析してもらったところ、この動画の花びらが落ちるスピードは秒速約0.6〜0.8メートルだという。風の影響で、無風時の自由落下よりも3〜4倍速い。「秒速5センチメートル」の、実に10倍以上の速さだ。
風に吹かれた花びらは、ひらひらではなく、スッと直線的に落ちていく。
桜は、雨が降っても風が吹いても、意外としぶとく花びらを付け続ける。
そして時が来ると、一斉に散る。桜だけが知るタイミングで、一斉に。
その後には、一斉に新緑が始まる。
桜の潔さは、散り際にある。その潔さが、人を魅了してやまない理由なのだろう。
見事に咲いて、散り際も見事に散る。そう生きたいものだ。
2026年4月5日