中国のリアル

2025年から見る、中国社会の断面:その1 「高速成長」から「安定成長」へ 2026.01.21 中国のリアル by ヨシミ

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 もしニュースの見出しだけで中国を理解しようとすれば、2025年は矛盾に満ちていたように見えるかもしれません。一方では「経済成長の鈍化」「不動産の深い調整」があり、もう一方では「新エネルギー車の輸出が過去最高」「中国企業のグローバル化加速」があったからです。しかし、この国で生活する人々にとって、この1年の最も深刻な変化はマクロデータに現れるものではなく、日常生活の細部に浸透しているものです。家をどうするか、仕事は安定しているか、資産をどう保全するか、子供に未来はあるか――これらの問題がかつてないほどのリアリティを持って、中国社会の集団的な感情を形成しています。この感情は激しいものではありませんが、持続的かつ広範囲に流動し、最終的に2025年の中国社会の最もリアルな生存風景を構成しています。

1.「高速成長」から「安定成長」へ

 中国国家統計局のデータによると、2024年の中国のGDP成長率は約5%でした。2025年に入っても「安定成長」が政策の基調でしたが、「高速」「飛躍」といった言葉はひっそりと姿を消しました。この表現の変化自体が明確なシグナルです。つまり、中国は速度だけを唯一の目標としない新たな発展段階に入っているのです。

 この転換は突然訪れたものではありません。過去10年間、中国経済は「ニューノーマル(新常態)」という概念を通じて、中速成長段階への移行ルートを模索してきました。そして2025年、この移行はより具体的になり、社会の各階層における共通の認識となりました。

 政策面では、「量より質」への転換が具体的な措置として現れています。例えば、地方政府の評価指標において、GDP成長率のウェイトが体系的に引き下げられ、代わりに技術革新、グリーン発展、民生改善などの多元的な尺度が採用されるようになりました。

 それと同時に、一般市民の収入に対する期待も再構築されています。一級都市(大都市)では、多くのホワイトカラーが給与の伸びの明らかな鈍化を感じており、転職による給与アップの余地も狭まっています。インターネット業界を例にとると、2024年から2025年にかけて、多くのトップ企業が人件費の最適化を継続的に進めています。「大規模なリストラ」こそ減少しましたが、「採用凍結」「構造調整」「社内配置転換」が新たな常態となっています。

 さらに注目すべきは、この変化に対する感じ方が世代間で異なることです。中国経済の「黄金の20年」を経験した70年代、80年代生まれにとって、収入の持続的な増加は生活のデフォルト設定でした。しかし、社会に出たばかりの00年代生まれ(2000年以降生まれ)にとって、キャリアのスタート地点はまさに成長のギアチェンジ期に重なっており、それゆえ彼らの「安定」への渇望は先輩たちをはるかに上回っています。

 これは経済崩壊のシグナルではなく、社会が「拡張期」から「成熟期」へと向かう必然的な段階に近いと言えます。一般の人々が直面している重要な変化は、未来への期待が「必然的な成長」から「慎重な楽観」へと転換している点にあります。

 企業側も深刻な調整を経験しています。かつての資本拡大やトラフィックボーナス(人口ボーナスによるアクセス増)に依存したビジネスモデルは課題に直面しています。2025年、企業家たちが最も頻繁に口にした言葉は「コスト削減と効率化(降本増効)」そして「キャッシュフロー管理」です。

 かつてもてはやされた新興消費ブランドを例にとると、2023年から2024年の投資ブームが去った後、多くのブランドが2025年に生存の危機に直面しました。投資家はもはやGMV(流通取引総額)の成長だけを単純に見ることはなく、収益能力とリピート率をより重視しています。この変化は企業に対し、商業の本質――真に価値のある製品とサービスの提供――への回帰を迫っています。

 注目すべきは、この調整が完全にネガティブなものではないということです。非効率な生産能力が淘汰される一方で、核心技術を重視し、細分化された市場を深耕する「専精特新(専門性・精密化・独自性・新規性)」企業がひっそりと台頭しています。

2.不動産は冷静期へ

 不動産は、2025年の中国社会の心理を理解するための重要な入り口です。熱狂の時代を経て、現在の中国は30年前の日本と似たバブル調整の痛みを経験しています。

 国家統計局と主要不動産プラットフォームのデータによると、2024年以降、中国の主要70都市のうち、新築および中古住宅価格が横ばい、または下落局面に突入した都市は9割を超えています。2025年になると、一級都市は比較的価格維持力が強いものの、中古住宅の成約期間は著しく長期化しました。上海や深圳を例にとると、一部のエリアでは中古住宅の売り出しから成約までの期間が、過去の3〜6ヶ月から1年以上に延びています。

 成約量の変化はより顕著です。国家統計局のデータでは、2025年1月から10月までの新築商品住宅の販売額は6兆9017億元で、9.6%減少しました。そのうち住宅販売額は9.4%減少しています。

 この調整は日本の1990年代の地価下落と類似点がありますが、制度的背景と市場構造には重要な違いがあります。中国の調整は、政府が主体的にコントロールし、都市化率にまだ一定の余地がある背景の下で発生しているため、システム的な崩壊ではなく「ソフトランディング」の特徴を呈しています。

 中国のSNS上では、「家が売れない」がこの1年の頻出トピックとなりました。ある人はこう揶揄します。「以前、家は資産だったが、今は長期負債のようだ」。この言葉は完全に正確とは言えませんが、社会心理の変化を的確に捉えています。

 過去20年、不動産は無数の中国家庭に二重の安心感――居住空間であり、富の器でもある――を提供してきました。仕事が順調でなくとも、収入が平凡でも、値上がりし続ける不動産を持っていれば、未来は保障されているように思えました。しかし2025年、その確実性は溶解しつつあります。

 特筆すべきは、これが中国の家庭が集団で不動産を見捨てたことを意味するのではなく、家計資産の配分における不動産の役割を再評価し始めたことを意味するという点です。不動産は「富の増殖ツール」としての唯一の役割から、より「居住」という属性に回帰しています。

 この変化は新たな市場需要を生み出しました。2025年、住み替え(改善型)住宅の成約比率が顕著に上昇した一方で、投資目的の需要は大幅に縮小しました。同時に、家計の資産配分は多様化の傾向を示しており、預金、国債、金(ゴールド)などの低リスク資産の積み増しや、投資信託、保険などの金融商品の適度な保有が進んでいます。

次回は、若者たちへの影響、消費の変化について検証します。

by ヨシミ

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