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米中関係の横顔 – 清華大学経済管理学院諮問委員会のメンバーが興味深い! 2021.09.08 その他 by 須毛原勲

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   昨今の貿易摩擦に端を発して以来、米中関係は非常に緊張した状態が続いていると言われています。昨年はコロナ禍の中で、更に緊張させるような出来事が続きました。米国ヒューストンの中国領事館閉鎖(2020年7月24日)、それに対抗するように中国成都の米国総領事館閉鎖(同じく7月24日)、ポンペオ米国務長官(当時)の演説(7月27日)、アザー米厚生長官の台湾訪問(8月10日)。米国大統領選挙の間は外交的な動きが一休み、バイデン大統領が就任して今後米中関係がどうなるのかと注目されている中で行われたアラスカ州での米中外相会談(2021年3月18日)。共和党政権から民主党政権に代わって、米中関係は改善されるどころか、より厳しい状況になってしまうのでは、と思わされた会談でした。

    こうした状況の下、今回は『清華大学経済管理学院諮問委員会』(※)のメンバー構成について着目してみました。

    清華大学は中国ナンバー1の大学であり、習近平国家主席や胡錦濤元国家主席も卒業生です。アジア大学ランキングでは2019年、2020年と二年連続ナンバー1の大学とされています。(2021年6月 ハイヤー・エデュケーション調査)

因みに、第二位は同じく中国の北京大学、第三位はシンガポール国立大学、第四位香港大学、第五位シンガポールの南洋工科大学、そして第六位が東京大学となっています。

    先ず、この『清華大学経済管理学院諮問委員会』について、聞いたことがない方もいらっしゃると思いますので、その設立の趣旨等を簡単に解説します。(以下、百度百科より引用・翻訳)

    2000年10月、清華大学経済管理学院諮問委員会が、初代学部長の朱镕基(Zhūróngjī)教授(第5代国務院総理)の積極的な推進により設立されました。2000年10月6日、第1回会合が開催され、 初代学部長の朱镕基が演説を行いました。

スピーチの要点は、

1.諮問委員会は、世界的に有名な多国籍企業の会長、社長、国際的に有名な学者で構成されており、その質は世界的に著名な大学の経営学部の中でも抜きんでている。

2.諮問委員会の目的は、清華大学経済管理学院(経営学部)と国内外の有名な企業や経営学部との結びつきを強化し、経営学部をうまく運営すること。

3.諮問委員会を通じて、清華大学経済管理学院(経営学部)は、成功した企業経営経験を学び、世界の優れた経営学部の教育内容、方法、手段を学び、常に諮問委員会から経営学部の運営に関する助言を受けることができるということ。

    そして、朱镕基教授はこう続けました。

    中国経済は構造調整と改革の深化の重大な時期にあり、外界への開放は新たな段階に入るだろう。 改革、開放、経済発展の課題は壮大で困難なものであり、これらのタスクを達成する鍵は、才能と高品質の技術、管理、リーダーシップである。 従って、教育レベルを向上させ、才能を育成し、良い人材を育成し、誘致することは、我々が直面している重要かつ緊急の課題である。清華大学経済管理学院(経営学部)は、教員のレベルを高め、学術研究を強化し、国内企業との密接な関係を維持しながら、国際協力を一層強化しなければならない、と彼は強調しました。    

 『清華大学経済管理学院諮問委員会』が設立されて、今年で21年目となります。

    2019年10月18日にはApple CEOのティム・クック(Tim Cook)氏が諮問委員会の主席(Chairman)に選定されました。クック氏は2013年から諮問委員を務めており、主席の任期は3年。

   2020年〜2021年の諮問委員会の委員(メンバー)は全部で67名。この委員を確認すると、米国からのメンバーが67名中30名を占めており、続いて中国の18名、ドイツから3名、日本から2名となっています。上述したとおり、”諮問委員会は、世界的に有名な多国籍企業の会長、社長、国際的に有名な学者で構成されており“、海外からのメンバーの選出が多いのは当然としても、米国から67名中30名も選ばれていることには改めて驚きを禁じ得ません。

    昨今の米中の緊張関係を鑑みると、米国からのメンバーが見直されることもあり得るかと思いましたが、全くそのようなことは無く、相変わらず米国からのメンバーが多くなっています。米国の経営者・大学等から「学ぶことがあれば学ぶべき」という非常に合理的な考えに基づいているように思います。

    名誉委員(Honorary members)に元米国務長官、Goldman Sachs元会長兼CEOのHenry M. Paulson, Jr.氏とWalmart元CEOのH. Lee Scott, Jr.氏。 中国から名誉委員となっているのが、王岐山氏(中華人民共和国副主席)であることを見ると名誉委員が如何に高い地位かも窺い知ることが出来ます。

 委員(メンバー)も錚々たるメンバーが名を連ねています。

General Motors CompanyのMay T.Barra氏

Dell TechnologiesのMichael Dell氏

MicrosoftのSatya Madella氏

TeslaとSpace XのCEOのElon Musk氏

FacebookのMark Zuckerberg氏(周知の通り、中国ではFacebookは使用禁止になっているのにも関わらず、メンバーに選出されていることには驚きます。)

    米国からは他にも以下のような投資会社、コンサルティング会社、そして著名な大学からも錚々たる人たちがメンバーになっています。Breyer Capital、KKR、Blackstone、Mckinsey、エール大学、MIT、スタンフォード大学、ハーバード大学等々。

    日本からはソニー元会長の出井伸之氏とソフトバンクの孫正義氏の2名のみ。ドイツからは、SIEMENSのCEOやBMWの会長が選ばれているのにも関わらず、トヨタや日立からは委員には選ばれていません。欧米中関係の緊密さを考えると、日中関係の距離を感じざるを得ません。トヨタから選ばれずに、EV車の新興企業の米国TeslaのElon Muskがメンバーに選ばれていることは、如何に中国が米国企業との関係を重要視しているかの証左と言えるかと思います。実際、2019年にTeslaは100%外資の子会社、特斯拉(上海)有限公司を設立し、上海市浦東地区に最大生産規模50万台の巨大工場を設立し稼働しています。

    台湾からはFoxconn創業者のTerry Gou(郭台铭)氏がメンバーになっています。

    『清華大学経済管理学院諮問委員会』が設置されてから21年の年月が経ち、その間、中国の経済は発展を続け、2010年にはGDPで日本を抜き世界第二位となり、2028年頃には米国を抜いてGDP世界一位になるとの報道もありますが、諮問委員会のメンバーを見る限り、世界一の国として米国を認め、「学べるところは学ぶ」という姿勢が続いていることが分かります。

    同時に、米国経済界の錚々たる人たちがメンバーを引き受けているという事実は、彼らが中国経済を重視しているという証左であるとも言えます。

    『清華大学経済管理学院諮問委員会』のメンバーを見る限り、「米中関係って親密なのでは?」と思えてきます。

    少なくとも、米中関係については、新聞・ニュース等の報道だけで判断することなく、いろいろな見地からの考察が肝要だと私は考えます。

https://www.sem.tsinghua.edu.cn/about/wyhmd.html

清華大学経済経営学部諮問委員会(2020−2021)

The Advisory Board of Tsinghua University School of Economics and Management (2020-2021)

by 須毛原勲

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