5月5日は「こどもの日」、そして立夏(りっか)だった。
朝のジョギングでは、頬を撫でる風が実に心地よい。新緑の香をたっぷりと含んだその風が鼻腔の奥に届き、生命の息吹を実感させてくれる。
連休中も大きな公園まで走り、朝のラジオ体操に参加した。いつも扇形の中央に立って全員をリードする年配の方が、ある日欠席であった。代わってその位置には、最近参加し始めた小学生の男児4人が並んでいた。おそらく周囲に促されて前に出たのだろうが、彼らは緊張しつつも元気いっぱいに「いち、に、さん、し」と声を張り上げながら体操を先導した。ラジオ体操第二が終わると、見守っていたおばあさんたちから自然と大きな拍手が湧き起こり、朝のひとときを満たす温かな光景となった。
今年の5月連休カレンダーは終盤の4連休を除けば、昭和の日を含む週の平日4日を休まなければ大型連休とはならない日並びであった。その4日すべてを休暇に充てられた人は多くなかっただろう。かくいう私も、連休明けにプロジェクトの締め切りが控えていたため、暦上の休日であっても例年以上に仕事に勤しんでいた。
仕事の合間を縫って東京ドームで巨人―広島戦を観戦した。山﨑伊織投手が完封勝利を挙げ、開幕からの連続無失点イニング数でセ・リーグ新記録を打ち立てた記念すべき試合であった。背番号6のレプリカユニフォームを身にまとって応援したものの、肝心の坂本勇人選手は2軍調整中でベンチにもいない。とはいえ、ホーム球場の熱気は格別で、得点のたびにスタンド全体が「ビバ・ジャイアンツ」を絶唱しつつオレンジのタオルを回す一体感は実に痛快であった。
球場観戦の醍醐味は、守備位置や走者のスタートなど、テレビには映らない選手の動きを俯瞰できる点に尽きる。プロである以上当然だが、野手陣の球際の強さと位置取りの巧妙さには改めて感嘆させられた。点差や相手打者に応じて守備陣形が目まぐるしく変わり、投手がボールを放つ瞬間には内野陣が一斉に前傾姿勢を取り打球に備える。その緊張感は圧巻である。
終盤、増田陸選手のヒットで勝利が決まり、山崎伊織投手と増田陸選手の投打のヒーローインタビューを最後まで堪能してから帰路に就いた。実は私は、増田陸選手を密かに応援していた。彼はここ数年1軍に定着できずにいたが、あの日の打席で凡退していれば再び2軍に落ちていたであろう瀬戸際で、左翼線へ値千金のタイムリーを放った。以後、彼はほぼ毎試合に出場し続けている。プロの世界では、すべての選手に機会が与えられる。ただ、その数少ないチャンスをものにできるか否か、必死に食らいつき結果を出す姿こそ美しい。最近、打席や一塁守備で見せる彼の表情には、強気と自信が漲っている。
また、久しぶりにゴルフへ出掛けた。今年は暖かくなったらラウンドを再開すると決めていたが、年明けの腰痛で機会を逸し、この時期まで延びてしまった。当日、ゴルフ場行きのバスの中で暇つぶしにChatGPTへ「目標スコアは108。どう攻めればよいか」と尋ね、コース名を入力して助言を求めたところ、各ホールの狙いどころとリスク管理策が提示された。なかでも「ロングホールではウッドを使わずアイアンで刻むべき」「グリーン周りではウェッジを使わずアイアンかパターで転がすべき」といった細かな指摘は、久々の緊張と高揚で昂ぶっていた心を「なるほど」と落ち着かせてくれた。
5年ぶりのラウンドにもかかわらず、スコアは97。まずまずの出来である。もっとも助言どおりにプレーしたわけではなく、ロングホールではフェアウェイウッドを多用した。リスクはあるが、ウッドでグリーンを捉えたときの爽快感はやはり格別である。
最近は若い世代の多くが、迷ったときの相談の相手としてChatGPTを多用しているという。適度な距離感で利用する分には有用だが、全面的に依存してしまえば本末転倒となり、人の生活が生成AIに支配されかねない。やがて「生成AI依存症」とでも呼ぶべきシンドロームが蔓延する日が来るかもしれない。
以上、些事ながら、球場での高揚と久々のフェアウェイの風を存分に味わうことができ、充実した連休となった。
5月11日