もうすぐ夏休みの旅行シーズンが到来します。私たちから非常に近い日本は、人気の海外旅行先であり続けています。データによりますと、日本は2年連続で中国人旅行者数が最も多い国となり、昨年の訪日中国人旅行者は698万人に達しました。これは訪日外国人旅行者全体の約19%を占めています。
交通の利便性やビザ政策の後押しに加え、日本と私たちの文化的な近さや快適な旅行環境も、多くの人々が日本に惹きつけられる理由です。両国は、一衣帯水(※1一衣带水)の関係であり、歴史的にも深いつながりを持つ隣国です。
さて、中国人の私たちの目に映る日本はいったいどのような国なのでしょうか。
「整然とした」日本
日本の街に対してまず抱く印象は、「小さいけれども精巧で、しかも清潔」であることです。

銀座の豪華なビル群や真っすぐな大通りを離れ、静かな住宅街に足を踏み入れてみると、こぢんまりとした家々や小さな表札が並びます。そこには、ドラマに登場する「小さいながら必要なものがすべてそろった部屋」が思い浮かび、限られた空間を上手に活用する“螺(巻貝)の殻でお堂を建てる”(※2 螺蛳壳里做道场)ような工夫が感じられます。
片隅には、色鮮やかな鉢植えや何気ない小さなオブジェが置かれており、街並みにささやかな彩りを添えています。街区のミニサイズの駐車スペースには小型車が箱のようにきっちり収まり、枠線との間隔はわずか数センチ。歪まずに整然と停められた様子は、中国で運転する人ならその駐車技術に驚くことでしょう。
幅の狭い道路にはごみもごみ箱も見当たらず、濃い色のアスファルトに白いラインがくっきりと入り、そのコントラストが一層の清潔感を際立たせています。
10年前に訪れた場所を再び訪ねても、大きな変化はほとんどありません。建物は落ち着いた色で高さも抑えられ、四角い外観はやや古びて見えるかもしれませんが、中に入ると調度品は今なお清潔で簡素、しかも古さを感じさせません。地下鉄も同様で、ガタンゴトンと走りつつも布張りの座席は鮮やかなまま保たれています
「静かな」日本
日本はとても静かです。
昼間に住宅街を歩いていても、頭上からときおり聞こえるカラスの鳴き声ぐらいしか耳に入りません。通り沿いに開いている窓はほとんどなく、家の中から音が漏れてくることもありません。行き交う人の姿もまばらです。おそらく扉の向こう側では、住人は一日の疲れを癒やし、ゆったりと過ごしているのでしょう。
「規律正しさ」は、日本人に抱く第一印象
人が多い場所では、バス停でも地下鉄でもレストランでも、必ず一列に並ぶ姿を目にします。前後の間隔は多すぎも少なすぎもなく、きれいに保たれています。街を行き交う人々は足早ですが、大通りを横断する際も人波が多いにもかかわらず互いにぶつかりません。車の数も多く速度も遅くありませんが、それぞれの人と車が自分のレーンを守って進んでいるように感じられます。(※3不偏不倚)

上海や香港と東京を結ぶ早朝・夜間の航空便では、機内がほぼ満席になるほど多くの日本人ビジネス客を見かけます。髪型は乱れず、スーツは仕立てが良く、濃紺かグレーの装いで埋め尽くされ、派手な色の服装はほとんど見当たりません。
かつて私が日系航空会社で働いていた頃、マニュアルは合計で20センチほどの厚さがありました。通常業務はもちろん、緊急時の対応まで細かく記載されており、問題が起きた際にも決して自己判断をせず、必ずマニュアルに従い、一つひとつの手順を省略しませんでした。
このように手順を厳密に守り、規則にこだわる姿勢こそが、日本社会全体を着実に前進させる礎になっているのだと思います。
一方、輪ゴムも張り詰め過ぎれば、いずれ緩める必要があります。
人々がこのように規律正しく効率的な社会環境を築き、それを守ることは、一方で枷となり束縛にもなります。その結果生じるプレッシャーは、退勤後に発散や解放を求める原動力になるのではないでしょうか。
勤務時間中はあくまで仕事に集中し、スマートフォンを見ることも、いわゆる“サボり” (※4没有摸鱼)をすることもありません。清潔で静かなオフィスには雑談も聞こえません。しかし仕事が終われば、居酒屋やレストランは一転して賑やかになり、グラスが行き交います。(※5杯觥交错) 大声で冗談を言う上司の姿は、昼間のオフィスで見かけた姿とはまるで別人のようです。(※6判若两人)
規則を守ることが融通の利かなさや創造性の欠如につながると言われることもありますが、日本人の美意識とデザインセンスにはやはり驚かされます。道を少し歩くだけで個性的な小さな店を見つけることができ、独特の看板からもお店の強い個性が伝わってきます。そこには、ありがちな型どおりや手抜き(※7敷衍)の雰囲気はまったく感じられません。街を歩いていると、青く染めた髪にクリーム色のシルクスカーフを巻いたおばあさんを見かけることもあり、その大胆さと調和の取れた装いに思わず目を奪われるようなこともありました。
「迷惑をかけることや衝突を避ける」ことも日本人の特徴
日本人の礼儀正しさ、控えめさ、そして人に迷惑をかけまいとする姿勢は、すぐに感じ取れる特徴です。かつて「常に笑顔のサービス」は日本の代名詞でしたが、よく観察すると、スタッフはお客様を煩わせることなく、表情や動作から要望を読み取り、先回りして応える術を備えていると分かります。
さらに、日本人はあからさまな衝突を避ける傾向があり、公共の場で迷惑をかけた際には、双方が即座に謝罪します。職場で意見の相違があっても、その場で真っ向から指摘することは少なく、一週間ほどしてから立場の違いを伝えるメールが届く場合さえあります。
他人に迷惑をかけたと感じると深く申し訳なく思うため、地下鉄で大声で話したり通話したりせず、歩くときは片側に寄り、レストランではナイフとフォークをそっと置き、ゴミは持ち帰って自分で処理します。これらの行動は、公共空間を占有せず、他人を妨げないよう自らを律する意識の表れだと感じます。人に迷惑をかけないということは、ある意味では自分も他人の迷惑を受けたくないという気持ちの表れでもあるのかもしれません。
以前、日本で道を歩いていた際にサングラスをうっかり落としました。気づいたときにはすでに一つ先のブロックまで進んでいましたが、戻って探してみると、そのサングラスは丁寧に折り畳まれ、路肩の小さな石の車止めの上にそっと置かれていました。
道を尋ねたときも、若い女性がスマートフォンで経路を調べてくれたり、ご年配の紳士が目的地まで直接案内してくださったりしたことが何度もあります。どれも些細な出来事ですが、見知らぬ人からの温かい心遣いがじんわりと伝わってきます。
日本の方々は、日常の仕事や生活の中で惜しみなく褒め言葉を掛けたり、さりげない親切を差し伸べたりするのがとても上手です。そのような善意が相手の心に届き、励ましとなれば、そこに気持ちの良い循環が発生し、お互いに大きな喜びを感じるのだと思います。
矛盾の中にある日本人の美学
規律を重んじつつ、創造性が求められる分野ではひときわ独自性を発揮すること。
他人に迷惑をかけることを極力避け、自ら困難を背負ってでも、さりげない気配りで善意を示そうとすること。
物事へのこだわりが強く、時に視野が狭いように映るものの(※8钻牛角尖)、細部の追求は世界でも屈指であること。
これが、私の目に映る“矛盾を抱えた”日本人の姿です。
<気になる中国語>
1. 一衣带水 (yī yī dài shuǐ)
- 意味:川一筋隔てただけのように、国や地域が極めて近く交流の障害にならないさま。
- 日本語訳:一衣帯水の間柄
2. 螺蛳壳里做道场 (luó sī ké lǐ zuò dào chǎng)
- 意味:とても狭い空間で複雑・大がかりなことを成し遂げるたとえ。
- 日本語訳:狭いところで大事を成す
3.不偏不倚 (bù piān bù yǐ)
- 意味:位置や態度が少しも偏らず、寸分の狂いもないこと。
- 日本語訳:寸分の誤差もない
4.摸鱼 (mō yú)
- 意味:ネット語。もとは魚を手づかみするという意。仕事中にサボったり手を抜いたりする行為。
- 日本語訳:サボる/手を抜く
5.杯觥交错 (bēi gōng jiāo cuò)
- 意味:杯を次々に交わしてにぎやかに酒を飲み交わすさま。
- 日本語訳:杯が飛び交う酒宴
6.判若两人 (pàn ruò liǎng rén)
- 意味:同じ人物でも前後の言動がまるで別人のように違うこと。
- 日本語訳:まるで別人
7.敷衍 (fū yǎn)
- 意味:いい加減に済ませる、表面的に取り繕うこと。
- 日本語訳:おざなりにする
8.钻牛角尖 (zuān niú jiǎo jiān)
- 意味:狭い一点に固執して融通が利かないことのたとえ。
- 日本語訳:頑固にこだわる/袋小路に入る
これらの中国語を覚えることで、最新の話題や中国文化について理解が深まるでしょう。ぜひ日常会話の中で活用してみてください!
