社長エッセイ

社長の日曜日 vol.16 少しの違いが大きな違い 2023.07.18 社長エッセイ by 須毛原勲

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 東京は猛暑が続いている。早朝でさえ30℃近い。今日は特に暑かった。普段はジョギングする人や犬の散歩をする人が増える日曜日にも関わらず、殆ど出会わなかった。あまりの暑さに、ショートコースで切り上げて帰ってこようと思って走り出したのだが、途中からランニングハイになってきて、結局いつもの10キロコースを走りきった。

 途中でいつも見かけるランナーが突然近づいてきて私に声をかけた。「よくお会いしていますよね?」。服装といい、足の筋肉の張りといい、フルマラソンの大会に出ているようなランナー。何か失礼なことをしたかなと不安になる私に対して彼は言った。「走り方、少し変えた方がいいと思いますよ。もう少し、股関節を使った方がいいです。骨盤を前傾させるように意識してください。それから、足が外側に出ているので内股になるくらいの意識で足を前に出した方が、歩幅が広がると思いますよ。」

 北京から帰国して四年強。ほとんど毎日同じコースを走っている。たくさんのランナーとすれ違ってきたけれど、声をかけられたのは初めてだった。彼とは確かに何度もすれ違ったことをこちらも覚えていたが、すれ違うのは一瞬でしかない。そこまで私の走りを見ていたのかとびっくりした。声をかけずにはいられないくらい私のランニングフォームが気になって仕方なかったのだろうなと少し悲しい気持ちになったが、声をかけられた後、股関節の動きと前傾姿勢と足の出し方を意識して走ったら、明らかにペースが上がった。そして、息も上がって、汗もいつも以上に大量に出てきた。彼はやはりフルマラソンを何度も完走しているという。歳も同じくらい。親切な助言を素直に受け入れ、走りを改善しようと決意した。

 7月17日は、海の日で三連休。今週は軽い話題で。

 今年に入って、これまでメインで使っていたアップルのMacBook ProをWindowsのパソコンに切り替えた。レノボのThinkPad X1(Windows 11搭載、USキーボード版)を購入した。もともと、仕事ではWindowsパソコンを永年使ってきていたが、プライベートではずっとMacを使っていた。基本的にマイクロソフトのOffice系のソフトウェアは、WindowsでもMacでも完全互換とは言われているが、実は微妙に異なる。OneNoteというソフトを愛用しているが、MacよりもWindowsの方が使い勝手が格段にいい。他にも細かいところでWindowsの方が勝っている。細かいところではあるが、その細かいところが結構な差だったりする。

 スマホはiPhoneを使っている。iPhoneにプリインストールされているメモやリマインダーを日常的によく使っており、それらがWindowsのパソコンと連携しないことが不便だと思っていたが、WindowsのパソコンでもiCloudにアクセスすれば、Macとほぼ同じことが出来てしまう。以前は格好を付けようとプレゼン資料の作成にはMac専用のソフトのKeynoteを使っていたこともあったが、今はPowerPointでも相当のことが出来るようになってきており、敢えてデザインにこだわってKeynoteを使う必要も無い。そもそも、マイクロソフトOfficeのWord, Excel, PowerPoint, OneNoteをメインで使っているので、日常の仕事で敢えてMacを使う意味は実は殆どない。

 にもかかわらず、Macを使っていたのは、起業をきっかけに気分を変えてみたかったのと、使いたいWindowsのパソコンがなかったから。ThinkPad X1に切り替えて4ヶ月が過ぎたが、今のところ大満足である。

 パソコン繋がりでもうひとつ。

 ここ数ヶ月、とある理由でフォントについて考え続けている。当社のITマネージャーはかなりのフォントオタクで、文字を見ただけでほとんどのフォントが分かるといい、実際街を歩いていても看板や電柱の表示などのフォントを言い当てたり確かめたりする。そんな彼にはフォントについて多くを教えてもらった。

 フォントには大きく、セリフ書体(Serif)(セリフ付き)とサンセリフ書体(Sans-serif)(セリフなし)に分けられる。セリフ書体(Serif)のフォントは細部に「セリフ」と呼ばれる小さな装飾がついている。明朝体、Times New RomanやGeorgiaなどがこのタイプに属する。一般的に、セリフ付きのフォントは古典的で、正式な印象を与える。サンセリフ書体(Sans-serif)のフォントにはセリフはない。ゴシック体やArialやHelveticaなどが該当し、シンプルで現代的な印象を与える。

 会社のロゴだと、最近はサンセリフ書体(Sans-serif)のフォントが人気だ。東京オリンピックのロゴ、TOKYO 2020やUNIQLOのロゴは基本的にDIN(ディン)(1930年代にドイツで考案された)が用いられており、DINをベースにカスタマイズしている。DINのフォントはすらっとしていて、スマートでおしゃれな印象を与える。Avenir (アベニール)は私が好きなフォントのひとつだ。BloombergやLinkedInに使われている。同じフォントと言われても、一見全く別のフォントのような印象。太さによって印象が大きく変わるのだ。Futura(フーツラ)もすっきりして洗練された印象を与える。LOUIS VUITTON、 FedEx、 Supreme、Domino’s のロゴに用いられている。安定した人気があるのがHelvetica (ヘルベチカ)。MUJI、Panasonic、Jeepなどに使われている。New Yorkの地下鉄のSubwayのフォントもHelveticaだ。

 プレゼン資料などや、文字をたくさん読ませる資料などには、遊ゴシック、TBゴシック、こぶりなゴシック、あおとゴシック、ゴシックMB101、ヒラギノUD角ゴ等を使ったりする。実際に同じ文章を違うフォントで組んでみると、印象や説得力などに違いが表れる。当社のような業種の資料に向いているもの、医療関係、建設関係、教育関係…などなど、それぞれに適したフォントがあり、奥が深くておもしろい。

 また、文字の見やすさと印象は、字面(じづら)率によっても大きく左右される。字面率とは、文字のスペース(仮想ボディという)に占める文字の大きさの割合。字面率が100%だと文字が大きすぎ、字面率を一定程度下げると全体的に読みやすい印象になるが、文字が目に飛び込んでくる感じが薄まる。漢字とひらがな・カタカナの字面率が同じ場合と、ひらがなとカタカナが漢字より少し字面率が低い場合とでは印象がまた変わる。

 当社のプレゼン資料の基本フォントは今のところ遊ゴシック。理由は、WindowsにもMacにもプリインストールされているサンセリフ書体のフォントだから。最も一般的に使用されているフォントの一つと言っていいと思うが、特に気に入って選んだわけではない。フォントを変更しようかなと思案中である。

 もちろん、プレゼンにとって大事なのはフォントではなく、内容なのであるが。

7月16日記

by 須毛原勲

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