早いもので、暦は10月になっていた。
朝、いつものコースを走っていると、金木犀の香りが心地よく漂ってきた。私は普段、花の香りに特別敏感なわけではないが、この金木犀の香りだけは毎年秋の到来を実感させてくれる。猛暑だった夏がようやく後ろ姿を見せ、過ごしやすい季節になった。変わりゆく季節に、心持ち寂しさも感じる。
9月29日は中秋の名月で、都内でも美しい満月を臨むことができた。
中国では中秋の名月には月餅を食べる習慣がある。中身には様々な餡が詰められていて、しょっぱいものが入っていたり、卵の黄身が丸々入っていたり、日本の月餅に比べるとかなりボリュームがある。もともと月餅を家族や友人へ贈る習慣は、愛情や祝福の意を込めたものだったが、次第にビジネスの場面でも頻繁に贈られるようになった。この時期、取引先からいただく一方で、自分たちも販売代理店を訪れる際に月餅を持参していた。有名なホテルでは高級な月餅が販売され、その価格は年々上昇していた。月餅の経費がかさみ、その予算を削る提案をしたとき、営業スタッフから反対されたのを思い出す。
29日早朝、早起きしてラグビーワールドカップ日本対サモア戦を観戦した。28対22で勝利。この試合のMVPのレメキ・ロマノラヴァ選手の倒れてもすぐさま立ち上がり走り出す姿、スクラムで負けないフロントローの稲垣啓太選手、堀江翔太選手、具智元選手。ラックからすぐに出て果敢にタックルするリーチ・マイケル選手、まるでバックスのようにボール回しに顔を出す堀江翔太選手。ジャッカルを試みるキャプテン姫野和樹選手。冷静にキックを決め続けたSO松田力也選手。そして、流大選手の代わりにSHに入った斎藤直人選手の素早いパス回しと巧妙なゲームコントロール。最後、ワントライワンゴールで逆転されるところまで点差が縮まってしまってドキドキしたが、見応えのある試合だった。堀江翔太選手がシンビンで退場している間のラインアウトで、リーチがボールを入れて失敗していたのはご愛敬だったが。
試合後、私は走りに出たが、その興奮はまだ冷めず、いつもよりも速く走ってしまった。以前、私に「股関節を前に」と走り方のアドバイスをしてくれたランナーに久しぶりに出会う。すれ違いざま右手の親指を私に向かって突き出してにっこり。日本代表の勝利に思わず股関節が前に出ていたようだ。次は一週間後のアルゼンチン戦。楽しみだ。
26日にソウルで行われた日中韓3カ国の外務次官級高官協議において、日中韓3カ国首脳会議の早期再開で合意したとの報告があった。東京で12月16日から18日に予定されているASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会議前後での開催を検討しているという。米中関係の緊張が続く中、日中関係も取り残されるのではないかとの懸念があった。しかし、この協議により日中双方の積極的に関係を強化しようという姿勢が明らかとなった。その努力を高く評価したい。
さて、今週もEV関連のニュースが散見された。
26日 中国EV勢、欧州生産拡大
27日 三菱自動車、中国生産撤退へ EV出遅れで販売不振
27日 ファーウェイEV新ブランド 中国奇端汽车と、11月発売
28日 三菱自動車が中国生産撤退へ なぜ苦戦?
29日 中国EV化、淘汰の波 価格競争にメーカー苦慮
30日 ホンダ、31年3月期にEV事業の利益率5%以上 目標公表
特に28日の日経新聞一面トップの「三菱自、中国生産撤退へ EV出遅れで販売不振」の大見出しの記事が目立った。この記事を受け、28日の三菱自動車の株は一時期、4年8か月ぶりの高値圏に上昇。事業の選択と集中に向けた取り組みが、収益の向上につながるとの受け止めが広がり、株式市場では買いで反応した。が、翌27日は、大きく戻した。
見出しの「三菱自、中国生産徹底へ EV出遅れで販売不振」。これを見ると、三菱自動車の中国生産撤退は、EV出遅れによる販売不振が主な原因だと読み取れる。確かに、中国における新エネルギー車(EV+PHV)の販売において日系各社は苦戦を強いられている。三菱自動車も例外ではないのだが、もともと、殆ど新エネルギー車(EV+PHV)は売れていなかったので、それ自体に原因を求めるのが正しいのだろうか?
トヨタ(トヨタ+Lexus)、ホンダ、日産、三菱自動車の販売状況を分析してみた。
トヨタは、2022年の世界販売台数が約900万台、中国での販売は184万台。中国販売の世界販売に占める割合は20.5%。内、新エネルギー車(EV+PHV)が17,532台。新エネルギー車の割合は1.0%。2022年度の全社の売上高が37.2兆円。
ホンダは、2022年の世界販売台数が約368万台、中国での販売は140万台。中国販売の世界販売に占める割合は38.1%。内、新エネルギー車(EV+PHV)が36,087台。新エネルギー車の割合は2.6%。2022年度の全社の売上高が16.9兆円。ホンダは、中国の販売割合が38.1%と4割近くの販売を中国で稼ぎ出している。新エネルギー車(EV+PHV)も2.6%と日系の中では健闘していると言える。
日産は、2022年の世界販売台数が約287万台、中国での販売は82万台。中国販売の世界販売に占める割合は28.6%。内、新エネルギー車(EV+PHV)が1,334台。新エネルギー車の割合は0.2%。2022年度の全社の売上高が10.6兆円。
そして、三菱自動車の状況は以下の通り。2022年の世界販売台数が84万台。中国での販売は3.4万台。中国販売の世界販売に占める割合は4.0%。内、新エネルギー車(EV+PHV)が699台。新エネルギー車の割合は2.1%。2022年度の全社の売上高が2.5兆円。世界販売のマーケットシェアは約1%。中国ではシェア0.1%。新エネルギー車(EV+PHV)だけを切り取ると、699台しか売れていないが、それでも全体の3.4万台の2.1%であり、比率だけを見れば、日産の0.2%やトヨタの1.0%を大きく上回る。
日系自動車メーカーが皆EV化が遅れているので、三菱自動車のEV化が遅れているということ自体は間違ってはいないが、「EV出遅れで販売不振」という見出しは事実と異なりはしないだろうか。三菱自動車の中国における状況は、EV化の出遅れの以前に、販売自体が不振であったということであり、その不振の理由をEV化出遅れだけに起因させることには無理がある。世界におけるトヨタのマーケットシェアは12%。中国では7.6%。ホンダは、同5%。同5.8%。日産は同4%。同3.4%。三菱自動車は世界シェア1%、中国でシェアは0.1%と、そもそも販売全体で大苦戦していたのである。
この見出し単体が正確性を欠くことは事実ではあるが、日系自動車メーカーの中国における新エネルギー車のシェアが著しく低いこともまた事実であり、この見出しがその危機感を”煽る”ことには意味があったのかもしれない。
四社の世界におけるS.O.M.%は21%。中国においても16.8%と健闘している。しかしながら、中国における新エネルギー車(EV+PHV)のS.O.M.は実に0.92%。1%にも届いていない。
その意味において、EV化出遅れが日系自動車メーカーの中国市場での撤退に繋がる可能性は否定できないのかもしれない。正に危機的状況だと思う。
以下の比較表はご参考まで。
10月1日記