社長エッセイ

社長の日曜日 vol.49 春が来た 2024.04.01 社長エッセイ by 須毛原勲

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 東京では桜がついに開花した。今年の開花は3月20日から22日頃と予想されていたが、冷え込みが続き、気象庁が開花を発表したのは29日であった。この週末は気温も上昇し、絶好の花見日和となり、近隣の公園では多くの人々がブルーシートを敷いて花見を楽しんでいた。桜だけでなく、待ちわびていたカタクリの紫色の花も咲き始めた。春の訪れを告げるかのように、多くの花が一斉に開花し始めた。

 先々週、久しぶりの北京出張の後に体調を崩してしまい、このブログを1回休載せざるを得なかった。このブログを始めてちょうど一年、ほぼ毎週更新してきており、今回で49回目の投稿である。一週間はあっという間に過ぎるが、日々様々な出来事があり、書きたいことが次々と浮かぶのが不思議である。週に一度、このブログを書くことで、その週に起きた出来事や感じたことを振り返るのは、自分にとって非常に良い時間となっている。今後も、ふとした日常で感じたことを綴っていくつもりである。お暇な時に読んでいただければ幸いです。

 この2週間の大きな出来ごとをいくつか振り返ってみたい。

 まず、日銀は2024年3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決定した。政策金利を引き上げるのは17年振り。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃も決めた。2013年に始まった大規模緩和は事実上終了し、金融政策は正常化に向けて新たな段階に入ったと一斉に報道された。これを受けて、大手の地銀が短期金利の従来の0.001%から20倍の0.02%への変更を発表。株式市場は、利上げにもかかわらず、これまでの日銀の利上げに向けた入念な準備や、利上げはしたが大幅な金融政策の変更はないとの発言により急回復。

 一方、気になるのは円安。一時期、円高に振れていた為替も152円近辺まで円安が進んでしまった。輸出企業やインバウンドにはいいことではあるが、これ以上の円安は経済に対してネガティブな影響が出る。今更、海外生産を日本に戻せる状況にない多くの日本企業は、円安により高いコストを払い続けなければならない。頭が痛い問題である。

 3月19日に日本政府観光局は2月の訪日外国人客数の推計を発表した。2月の訪日外国人客数は2,788,000人で、前年同月比で89.0%の増加、2019年同月比で7.1%の増加となった。今年はうるう年の影響で日数が1日多かったこと、また2023年に1月だった旧正月(春節)が今年は2月中旬だったこともあり、コロナ禍以降の最多記録を更新し、2月としては過去最高を大きく上回った。韓国、台湾、フィリピン、米国からの訪日客が増加し、この月の数を押し上げた。

 どこに行っても外国人観光客を目にする。円安がこのインバウンドの増加を支えていることは明らかで、日本経済を押し上げていることは間違いない。

 中国からの訪日外国人客数は約46万人で、2019年比で36.5%の減少を示している。中国からの訪日客数が回復していない原因について、福島の処理水放出問題を引き合いに出す報道も見られるが、実際には日本政府の観光ビザの発給手続きの煩雑さや、中国経済の回復の遅れから旅行者が国内や東南アジアへの旅行を選ぶ傾向にあることが大きな理由であろう。

 既に外国人観光客の多さを実感しているので、これ以上訪日外客数が増えても、と思う気持ちもあるが、一方で中国人観光客を日本に“ほどよい感じ”で戻すための適切な対策を講じる時期かもしれない。

 政治的な話題で注目すべきは、中国商務省が、オーストラリア産ワインに課していた関税を29日から撤廃すると発表したことである。この関税は、オーストラリアがコロナウイルスの起源を中国とした発言がきっかけで、無関税から最大218%まで引き上げられていた。2022年5月にアンソニー・アルバニージ氏が首相に就任してからは、前首相のスコット・モリソン氏の政策を転換し、中国との対話を重視してきた。2023年11月にはオーストラリアの首相として7年ぶりに中国を訪問し、習近平主席と会談した。2024年3月には王毅外相がオーストラリアを訪問し、そして今回の発表があった。

 これは政治的リーダーシップの表れだと考えられる。岸田総理は2021年の首相就任以来、訪問した国・地域合計で47にのぼるが、中国を訪問したことは一度もない。加えて言えば、2019年12月に安倍元総理が成都で開催された第八回日中韓サミット会議に出席して以来、日本の現職総理が中国を訪問したことはない。

 さて、スポーツ界での話題といえば、大谷翔平選手の件に多くの関心が集まっているが、事実関係が明らかでない中で詳しく述べるのは避けたい。冷静なプレイを期待できる状況ではないかもしれないが、それでも彼が困難を乗り越える姿を見せてくれることを願うばかりである。

 更に、池江璃花子選手がパリオリンピックへの出場権を獲得した瞬間は感動的であった。オーストラリアでの厳しい練習を経て、彼女が真っ黒に日焼けしていたことが印象的だった。4年前の3月17日、病気から復帰して初めてプールに入った日について、「パリオリンピックを目指すんだ」と自身に言い聞かせるほど厳しい4年間であったと彼女は語っていた。もし過去に行けるタイムマシンがあれば、2019年に戻って白血病を患った自分、あるいは夢を諦めかけた自分に、「5年後、夢は叶う」と伝えたいという想いだろう。彼女のこの5年間の物語は、どれほど多くの人々に勇気を与えたことだろう。

 パリオリンピックでの彼女の活躍を心から祈っている。

3月31日

by 須毛原勲

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