社長エッセイ

社長の日曜日 vol.51 若緑 2024.04.16 社長エッセイ by 須毛原勲

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 先週の火曜日(9日)、東京は春の嵐に見舞われた。翌日、いつもよりも長いジョギングコースを走り、散る前に訪れたかった大きな枝垂れ桜を目指したが、花びらは既にほとんど落ちていた。いつものコースを少し外れた大きな公園にも初めて足を踏み入れてみたが、半数の桜は花びらを散らし、葉桜になっていた。花びらが散った桜は、若葉を急いで芽吹かせ、生命の息吹を感じさせていた。春の光が若葉を照らし、透き通った緑が美しく輝く。新緑の季節が足早に訪れている。一年で一番好きな季節の始まりである。

 球春。プロ野球が開幕してから早2週間が経過し、我が巨人軍は9勝5敗でセ・リーグの2位につけている。首位の中日とのゲーム差はない。中日の予想外の健闘に、メディアは巨人から移籍した中田翔効果と騒いでおり、その影響は確かに大きいかもしれない。私は、巨人時代の中田のプレイスタイルが好きだったし、彼が新天地でも活躍することを願っている。

 今年の巨人は岡本選手や坂本選手を中心としたところにフレッシュな選手が加わり、投打のバランスが取れている。2年目の萩尾 匡也選手、ルーキーの佐々木俊輔外野手、2023年ドラフト1位の西舘勇陽投手、ソフトバンクからトレードで加入した高橋礼投手など、連日ヒーローが生まれている。先週11日、神宮球場でのヤクルト対巨人戦を、とある方のご厚意でバックネット裏から観戦することができた。菅野投手の好投により巨人が5対0で勝利。夜は少し肌寒かったが、応援する熱気で十分温まることができた。やはり現地での観戦は気分が盛り上がるし、勝てばなおさらである、今年はこの波に乗って昨年とは異なるシーズンの展開を期待したい。

 さて、先週の最大の話題は、岸田首相の国賓としての米国訪問であろう。国内での裏金問題による支持率激落の中、岸田首相は外交を通じた支持率回復を狙って訪米した。晩餐会や米議会上下両院合同会議でのスピーチでは、ジョークを交えた演説が好評を博し、メディアからも賞賛され、今回の訪問は一定の評価を得ているようである。まあ、今回の訪米の成功で裏金問題がすべて払拭されるわけではないが。

 一言で言えば、この訪問により日米の同盟関係は「グローバル・パートナー」的な関係へとアップグレードされた。日本は、脱炭素、戦略物資、AI、量子コンピュータ、核融合、宇宙、データ、バイオなど、多岐にわたる国際課題に取り組むことを目指している。特に宇宙分野では、アルテミス計画においてトヨタ自動車が開発する有人月面探査車を日本が提供し、将来的には日本人宇宙飛行士2人の月面着陸が約束された。これはこれで、喜ばしいニュースである。

 岸田首相は11日に米比首脳と会談し、「南シナ海における中国の危険かつ攻撃的な行動」に対する「深刻な懸念」を表明した日米比三国共同ビジョンステートメントを発表した。その翌日、中国外務省は日本の対応が「後ろ向きだ」と批判し、劉勁松アジア局長が在中国日本大使館の横地晃首席公使を呼び出して「深刻な懸念と強い不満」を伝えた。

 岸田首相は米議会でのスピーチの中で、中国の対外的な姿勢や軍事動向が国際社会全体の平和と安全にとって大きな戦略的挑戦をもたらしていると明言した。原文も読んだが、そこまで言い切る必要があったのかどうかと思わせる表現であった。

 中国の脅威を繰り返し訴えている米国は、一方で、イエレン米財務長官が4日から9日まで訪中し、中国の李強首相や何立峰副首相らと会談している。李強氏が「両国は敵対関係でなくパートナーであるべきだ。」と訴えたのに対し、イエレン氏は「厳しい会話」も避けずに意思疎通を続ける必要性を強調した。

 岸田首相の今回の訪米は評価されるべきではあるが、日本は米国との緊密な関係をさらに強化しながら、同時に隣国である中国との対話を通じた建設的な関係構築にも努めるべきである。

 中国の電気自動車メーカー、BYD(比亜迪)が日本で俳優の長澤まさみさんを起用したテレビCMを開始した。放送開始日は12日であり、実際のCMはテレビではまだ見かけていないが、BYDの公式ホームページで視聴することができる。「ありかも、BYD!」というキャッチフレーズを用い、長澤まさみさんが電気自動車を選択肢として提案する内容である。BYD自社の魅力だけでなく、電気自動車の利点を訴求し、その一環としてBYDを紹介するアプローチが取られている。日本で圧倒的な知名度を誇る俳優の起用からは、BYDの強い意志が感じられる。

 BYDは1995年に中国広東省深圳市で設立された。2022年3月にはガソリン車の販売を停止し、EV(純電気自動車)およびPHV(プラグインハイブリッド車)へ注力している。2023年のBYDの中国国内における新エネルギー車の販売台数は約300万台で、前年比62%増の成長を遂げた。BYDはEVとPHVの販売台数で中国市場において第1位である。テスラも前年比33%増の95万台を販売し成長を見せているが、BYDとの差は大きく広がった。

 昨年5月には、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイがBYDの香港上場株式196万株を約5890万ドルで売却し話題になった。しかし、売却後もバークシャー・ハザウェイのBYD株の保有比率は発行済株総数の10.05%から9.87%に減少するにとどまっている。 

 2023年、BYDのEVが日本市場に初上陸、SUV「ATTO 3」が440万円で販売された。今回のTVCMは、その「ATTO 3」を特集している。2023年日本市場でのBYDの販売台数は1,445台であり、シェアは1.68%に留まった。しかし、2023年の日本市場でのEVの販売総数85,862台の内、日産の小型EV「Sakura」の37,140台を除くと48,722台となり、この部分でのBYDのシェアは2.96%となる。たった1年で約3%のシェアを獲得したことは驚異的であり、BYDとしても、昨年1年間日本市場での戦いを経て勝算があると判断し、長澤まさみさんを起用したテレビCMの展開に踏み切ったのかもしれない。

 中国の新エネルギー車市場の動向は頻繁にメディアで取り上げられるが、記事の内容は断片的で全体像が把握しにくい。テスラの業績が伸び悩む中、「EVの時代は終わり、HVの時代が再び来た」といった意見も見られるが、実際の市場の状況はどうであろうか。

 2023年の世界の自動車販売台数は約8,110万台であり、そのうち中国の販売台数は約2,518万台、世界市場の約31%を占めている。この比率は、米国の1.6倍、EUの2.3倍、日本の5.3倍に相当し、中国は巨大な市場であることがわかる。

 新エネルギー車(EV、PHEV、FCV)の世界販売台数は約1,283万台で、前年比で1.28倍に成長している。特に、新エネルギー車の世界販売台数の62%が中国市場によるものである点は、市場が依然として中国に大きく依存していることを示している。

 弊社では、激動する中国の新エネルギー車業界の最新状況を総括し、以下のレポートを発行することとなった。

「中国新エネルギー車最新レポート 2023年総括 市場概況と各社販売状況」 ※期間限定で無償提供

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4月15日

by 須毛原勲

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