社長エッセイ

社長の日曜日 vol.56 薫風 2024.05.20 社長エッセイ by 須毛原勲

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 週末は平日より少し遅めに走り出す。公園にさしかかると6時半。ちょうど朝のラジオ体操が始まる時で、久しぶりに参加した。良い気候になり多くの人々が集い、ざっと見ても100人以上が参加していた。朝の光が木々の緑を通して降り注ぎ、清々しい気分になる。

 ジョギングルートの途中で、以前私に走り方のアドヴァイスをしてくれたランナーに久しぶりに出会った。すれ違いざまに「久しぶりです!」と右手を大きく振って挨拶してくれた。更に進むと、大きなホワイトシェパードに出会った。あまりにもきれいなシェパードで、思わず声をかけたら思い切り吠えられてしまった。話を聞くと、まだ生後1年未満で、体重は36キロと成犬並みだがまだまだ子供のようだ。次に会ったら覚えていてくれるだろうか。こうした何気ない朝の出会いが、心を爽やかにしてくれる。

 今週末はラグビーリーグワンの準決勝2試合が秩父宮ラグビー場で行われた。残念ながらどちらもテレビ観戦だったが、非常に見応えのある素晴らしい試合であった。

 土曜日は、リーグワン1位で16戦無敗の埼玉パナソニックワイルドナイツと4位の横浜キヤノンイーグルスの対戦。元日本代表のSO田村優選手が率いるキヤノンが一時はパナソニックをリードしたが、最終的には日本代表のSO松田力也選手の活躍もあり、パナソニックが20対7で勝利を収めた。新旧日本代表のSOの活躍は見応えがあった。そして何と言っても、今年で引退を表明している堀江翔太選手。後半からお馴染みのドレッドヘアにショーツをまくり上げた姿で登場し、相変わらず至るところに顔を出して縦横無尽に走り回り、引退宣言が嘘のようなプレー振りだった。ファンとして、彼の雄姿があともう1試合観られることがとても嬉しい。怪我で試合に出られなかった南アフリカ代表のファフ・デ・クラーク選手が献身的にサポート役を務め、水を運んで選手に声を掛けている姿は驚きであった。

 日曜日は、東芝ブレイブルーパス東京と東京サントリーサンゴリアスの対戦。一時は東芝がサントリーにリードを許したが、最終的には28対20で東芝が勝利した。リーチマイケル選手の献身的なプレーは相変わらず健在。東芝のSOであるニュージーランド代表のリッチー・モウンガ選手は攻守に自在に動き回り、サンゴリアスの俊足FB松島選手を振り切ってトライしたフランカーの佐々木剛選手も素晴らしかった。左側から松島選手に追われた佐々木選手がすかさずボールを左手から右手に持ち替えた機転は、彼のラグビーIQの高さを示していた。試合後には、東芝のニュージーランド代表SOであるモウンガ選手と、サントリーの南アフリカ代表WTBであるチェスリン・コルビ選手が談笑しているシーンがテレビに映し出されていた。凄い時代になったものである。

 決勝戦は5月26日(日)に国立競技場で行われる。東芝ブレイブルーパスがリーグ戦で唯一負けているパナソニックワイルドナイツとの決勝戦。東芝は実に14季振りの決勝進出であり、リーグワンとしては初の決勝進出、初めての新国立競技場での試合となる。

 さて、米政府は14日、中国製の電気自動車(EV)に現状の4倍に当たる100%の制裁関税を課すと発表した。半導体や太陽光パネル、鉄鋼・アルミなど総額180億ドル(約2.8兆円)分の輸入品の関税を上げる。不公正な取引慣行に対する制裁措置を定めた米国の「通商法301条」に基づく措置である。これは、2018〜19年に当時のトランプ政権が発動した計3700億ドル相当の中国からの輸入品への制裁関税の一部を引き上げるものである。

 もっとも、米国で中国のEVは殆ど販売されていない。2023年では、Geely(吉利)とVolvoの合弁によるPolestarブランドのEVが12,215台、小型トラックが13,773台の販売実績があるのみである。因みに、2023年の米国における自動車の総販売台数実績は16,125,139台。うち、EVは1,194,215台でEV化率は7.4%。中国のEV25,988台の販売実績は2.18%に過ぎない。

 今回の関税引き上げは、バイデン大統領の大統領選挙対策のパフォーマンスの要素が色濃く出ている。特定分野に絞ることで、米国の産業全体に対する影響を最小限に抑えつつ、中国との関係にも配慮しているように見える。それでも、中国のEVの脅威が将来非常に大きくなることを危惧しているというメッセージも感じ取れる。一方、日本は中国とRCEP協定を締結しているため、中国からの自動車の関税が0である。以前このブログでも触れたが、BYDが日本でのEV販売を強力に進めている。日本の基幹産業である自動車産業がいずれBYDを初めとした中国のEVに置き換わってしまうことを心配しなくていいのか。米国の中国製EVへの100%関税をメディアは声高に伝えているが、では日本はどうなっていて、今後はどう進んでいくのか、このような点に注目する論調は見当たらない。

 ロシアのプーチン大統領が16日に北京を訪問した。プーチン氏は大統領通算5期目に入って最初の外遊先に中国を選んだ。これは、ウクライナとの戦争が続く中で、中国との関係がいかに重要であると捉えているかを示している。

 日経新聞は、プーチン大統領と習近平国家主席が16日に署名した共同声明で、日本や米国を強く非難したと報じた。声明では、米国をはじめとする西側諸国を「覇権主義」とみなし、対抗を明確に打ち出している。日本に対しても、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について厳しく批判している。プーチン氏は16日に北京で午前と夜の2度にわたって習近平氏と会談し、さらに習近平氏は自らの執務場所である「中南海」にプーチン氏を招いた。

 BBCは「プーチン氏が訪中、習氏と首脳会談  ウクライナ「危機」には「政治的解決」必要」との見出しのもと、中国とロシアが「政治的解決」の必要性で同意していると習氏が述べたと報じた。習氏は「この問題について、中国の立場は明確かつ一貫している。それには国連憲章の目的や原則の順守も含まれている。」とし、中国はヨーロッパの平和と安定の早期回復を望んでいると述べた。プーチン氏も、ウクライナでの戦争が首脳会談で議題になったと認め、「ウクライナ危機を解決するための中国の努力に感謝している」と述べ、「ロシアと中国の双方が「この危機の政治的解決」を望んでいる」と付け加えた。

 人民日報の日本語版は、「中南海」での会談について言及し、習主席とプーチン大統領は水辺に座り、お茶を共に楽しみながらリラックスした雰囲気の中で、ウクライナ危機についても踏み込んだ意見交換を行い、習主席はウクライナ危機の政治的解決を後押しするための努力について詳しく説明し、当面の解決と根本的な解決の双方が必要であることを強調したという。プーチン大統領も、ウクライナ問題における中国の客観的で公正かつバランスの取れた立場を称賛し、政治的解決のために中国が引き続き重要な役割を果たすことを歓迎した。

 「中南海」には通常、親しい友好国の指導者しか招かれないため、その場所で習氏がプーチン氏をもてなしたことには象徴的な意味があるとされている。習氏は2014年には当時のバラク・オバマ米大統領を、その翌年にはベルギーのフィリップ国王を「中南海」に招いている。

 日本、中国、韓国の日中韓首脳会議が今月下旬に韓国・ソウルで開かれる方向で調整されている。岸田総理大臣、李強首相、ユン・ソンニョル大統領が出席する予定である。3か国の首脳会議が実現すれば、安倍政権当時の2019年12月に中国・四川省の成都で開かれて以来、およそ4年半ぶりとなる。米国でさえも、ブリンケン国務長官やイエレン財務長官の中国訪問など、中国とのコミュニケーションを頻繁に続けている。一方、日本は昨年11月にサンフランシスコでのAPECにて岸田首相と習近平国家主席が会談して以降、中国とのコミュニケーションが十分とは言えない状況にある。

 隣国である日本と中国。日本はその立場を最大限に活かし、中国との良好な関係を築き、独自の立場で国際貢献を模索してもらいたい。

5月19日

by 須毛原勲

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