社長エッセイ

社長の日曜日 vol.57 スポーツ三昧 2024.05.27 社長エッセイ by 須毛原勲

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 木々の緑をわたる風が爽やかだ。公園では太極拳に勤しむグループを見かけた。ゆったりとした動きだが、みなさん腰が入って動きは本格的だ。

 私はと言えば、ボクシングジムに通い始めてから2ヶ月が経過し、ようやく体がボクシングに慣れてきた。今週、初めてアッパーパンチを教わった。アッパーパンチは腕の振りだけでは威力が出ないため、体の伸びを使って打つ必要がある。膝を軽く曲げてから反動をつけ、一気に突き上げる。生まれて初めてアッパーパンチを打った瞬間だった。

 ジムではプロ選手やプロを目指す研修生もトレーニングをしている。鏡の前でシャドーボクシングをすると、その動きの違いに驚かされる。自分が場違いに感じるほどだ。当たり前と言えば当たり前であるが、自分の身体と彼らの身体の違いに驚かされる。研修生と並んで映し出された自分の姿に愕然とする。

 コロナ禍で太ってしまった体を戻そうとボクシングジムに通い始めたとき、妻に「昔のシュッとした自分をもう一度見せるから」と宣言したが、「出会って以来一度も見たことないんですけど…」と言われてしまった。自分の遠い昔の記憶には、頬がこけ、お腹が6つに割れていた自分がいるのだが、自分でさえその記憶は遙か彼方だ。

 トレーニングの合間にリングサイドに腰掛けて休んでいたら、「頑張ってるね。続けたら必ず体は変わる。体が変わったら、心も変わることを実感するよ。」と80歳を超えた元チャンピオンが声をかけてくれた。身体を絞りきった先に何が起きるのか、自分でも確かめたいと思う。

 先週、ダルビッシュ有選手が日米通算200勝を達成した。これは、日本人投手としては野茂英雄、黒田博樹両氏に続く3人目の快挙である。彼は若い頃はやんちゃなイメージがあったが、前回日本が優勝したWBCでは、後輩たちに積極的に語りかけ、彼の持つ多彩な球種の握り方さえも惜しみなく教え、今や誰もが尊敬し憧れる存在となっている。日経新聞や朝日新聞も大きな見出しでその偉業を称えていた。

 日本では、我が巨人軍の戸郷翔征投手が24日に甲子園球場で阪神相手にノーヒットノーランを達成した。このところ調子が上がらないジャイアンツだが、久しぶりに心躍るニュースだった。NHK BSで観戦していたが、解説の藤川球児氏が試合開始早々から戸郷投手の出来を絶賛していた。5回が終わる頃には、これはひょっとしたらと思い始め、最終回には本当に手に汗握った。甲子園球場での阪神相手のノーヒットノーランは沢村栄治投手以来とのことだ。近い将来、戸郷選手もメジャーに行くのだろう。彼もまた、いつか「日米通算200勝」を達成してくれるかもしれない。

 ラグビー・リーグワン1部プレーオフ決勝で、リーグ戦2位の東芝ブレイブルーパス東京が1位の埼玉パナソニックワイルドナイツに24対20で競り勝ち、リーグワン初優勝を飾った。前身のトップリーグ時代を含め、14季ぶり6度目の頂点である。今季限りで引退を宣言している堀江翔太選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)にとって最後の試合であった。一方の東芝もリーチマイケル選手にとっては初めての優勝がかかった試合。堀江選手を優勝で送りたいというワイルドナイツと、ずっと東芝を牽引してきたリーチ選手に念願の優勝をさせたいというブレイブルーパスの意地と意地がぶつかりあう大熱戦となった。

 試合の最後の最後、堀江選手のパスがスローフォワードと認定され、その後の逆転トライが取り消されて東芝の勝利が決まった。堀江選手には悔しい引退試合となったが、彼の気迫あふれるプレーには大きな歓声が沸き、拍手が送られていた。そして、「東芝、おめでとう」。試合後のリーチ選手の肩の荷がおりたような穏やかな笑顔が印象的だった。

 ラグビーの後は大相撲。新小結、大の里が初優勝。初土俵から7場所目の史上最速優勝である。石川県出身の彼の優勝は、震災からの復興に尽力されている地元の方々にとっても大きな喜びとなったことであろう。

 大の里は元横綱稀勢の里の二所ノ関部屋に所属している。稀勢の里の大ファンだった私は、その愛弟子である大の里が入幕したときから注目して応援していた。近い将来、稀勢の里以来の日本人横綱が誕生することを確信している。怪我をしない強い体を作り、精進してほしい。

 さて、今年1月の台湾総統選で勝利した民主進歩党の頼清徳氏(64)が、20日に新総統に就任した。頼氏は就任演説で、前総統の蔡英文氏と同様「中台関係の現状維持」を唱えた一方で「中華民国と中国は互いに隷属しない」と表明した。中国からの独立は口にしなかったものの、台湾は中国と対等の関係にあり、中国の一部という「一つの中国」原則は受け入れない姿勢を明確にした。翌21日のメディア報道では、「台湾、中国と現状維持」「頼総統、中国刺激を回避」など、前任の蔡英文前総統の路線を引き継ぐといった内容が目立っていた。しかし、中国政府は頼総統の発言を「危険なシグナル」とし、台湾独立は平和と両立しないと反発した。23日、中国軍は台湾周辺での軍事演習を2日間の予定で始めたと発表し、「台湾独立を目指す勢力への懲罰」として異例の説明を行った。今回の軍事演習は、2022年8月にペロシ米下院議長が台湾を訪問した際と同様、台湾を取り囲む形で実施された。当時、本当に台湾有事が起こった場合、中国が台湾を包囲する現実に驚いた記憶が蘇った。

 頼総統の就任式には日本の超党派でつくる国会議員連盟「日華議員懇親会」の31人が出席。これに対して呉江浩・駐日中国大使は、「公然と台湾独立勢力の加担するもの」「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と述べた。この発言に対して、林芳正官房長官は22日の記者会見で、「極めて不適切だ。直ちに厳重な抗議を行った」と強調した。林氏は台湾を巡る問題について「対話により平和的に解決されることを期待する。あらゆる機会を捉え中国側に強く求めていく」と強調した。

 頼清徳総統の任期は再選された場合、最長で8年。日本は少なくとも、台湾と中国の緊張を煽るような言動は極力避けるべきである。台湾と中国の間でさらなる緊張が進まないことを心から祈る。

 折しも、日中韓首脳会議が27日から韓国ソウルで開催される。約4年半ぶりの開催で、中国の李強首相、韓国の尹錫悦大統領が出席する。岸田首相は会談の成功と日中韓プロセスの再活性化を強調し、ソウル到着後に両首脳とそれぞれ個別に会談する予定で、李首相との会談では、東シナ海や南シナ海の地域情勢や日本産水産物の輸入規制撤廃を提起する見通しである。27日の日中韓首脳会談後の共同宣言には、感染症対策や人的交流の拡大が盛り込まれる見通しである。

 あらゆる場を活かし、日本の独自の外交に期待したい。

5月26日

by 須毛原勲

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