スタッフエッセイ

中国:変わること、変わらないこと 2023.07.12 スタッフエッセイ by 沖虎令@上海

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 中国ビジネスに関わっている多くの人々は、現在、変化のスピードが加速していると感じているだろう。技術開発の発展だけでなく、国際的要因や政治的要因もビジネスの方向に大きく影響する。

 技術、政治などの通常いわれる堅い要因では予想されていなかった、あるいはここまで発展するとは考えられなかったような社会の動きもある。例えば、中国ではアウトドア活動が急速に普及している。マラソン、登山、サイクリング、キャンプ、釣り、マリンスポーツ、スキーなどだ。これらは7-8年前にはまだマニアックな趣味だったが、2020年ごろには専門の用品店が街中でみられるようになった。コロナで抑えられたが、防疫規制緩和後、今年に入り爆発的に発展している。

 こうした流行が起きるのは、中国の市民が裕福になり、様々なことに関心を持てるようになったからだ。地方生活者も自家用車を持ち、なにより、誰でもネットで情報を得ることができ、購入し、予約できる。アウトドア市場はしばらく拡大が続くとみている。もちろん、変化の激しい中国なので、どこかで急に止まることもありえるが。

 流行のような、いわゆる時事ネタは速報性が命なので、時間が過ぎると文字通り古新聞になってしまう。なので、今回は将来も使われるであろうネタとして、中国の四字熟語(中国語で「四字成語」)をいくつか取り上げる。

 中国で、四字成語は新聞のような従来メディアでは今でも使われている。見聞きすると簡潔にイメージが湧き、以前から中国語表現として面白いと思っている。

 以下は、日本ではほとんど使われないが、個人的に好きな四字成語だ。

「雪上加霜」

 「冬に積雪して寒いところにさらに霜が降りる」とは、「泣きっ面に蜂」、「一難去ってまた一難」という意味。例えば、「コロナで弱っている中国経済に、米国の制裁が『雪上加霜』し、ハイテク業界は厳しい状況が続いている。」という使い方をする。この言葉は経済関係の文章でよく見かける。いかにも大変、という雰囲気が伝わる。

「陰差陽錯」

 「陰」は「隠れた、小さな」という意味で、逆に「陽」は、「目立つ、大きい」。「錯」は「差」と同義で、「違い」。意味は「小さな差が、大きな違いを生む」で、バタフライエフェクトに類似の意味でもある。この言葉は、経済や技術系の報道で、製品開発やビジネスの成功・失敗を分ける原因の説明の中で使われる。小さな違いなので、当事者は意識していなかった点に優位性があるような事例の紹介でも見かける。

 

「鬼斧神工」

 「鬼」は日本の鬼と違い、「霊」に近い。意味は、文字通り「人間技とは思えない」出来栄え、製品を表現している。字面をみると、日本語の感覚では大げさな言い方に感じるが、さほど画期的ではない事柄にも使われているようだ。日常会話で何かを取り上げた時、冗談として使うと受けるかもしれない。

「開門見山」

 「門を開けるとすぐ山が見える」とは、「前置きを抜きに本題から入る/単刀直入に言う」。映画のセリフでも聞く、日常使う言葉。人の家を訪ねて門を開けたら、目の前に相手がいた、という感じが面白い。ビジネスでも、挨拶抜きに、さっそくですが、というときにこういう言い方をすると失礼な感じが弱まるように思う。

「心花怒放」

 最初に見たとき、「怒っている」という意味かと思ったが、全く逆で、「うれしくてたまらない」気持ちを表す表現。「心花」は「こころもち」、「怒」は「怒る」の他に、「盛んな様子」という意味がある。心を寄せている女性に優しい言葉をかけられた男性の気持ちを、「心花怒放」と言ったりする。

「心猿意馬」

 これは、意味が全くわからず、動物のように野蛮な性格、ということかと推察した言葉。実は、「色欲で心が乱れて落ち着かない」という意味。心・意思が、猿のように飛び跳ねて、馬のように走り出すということらしい。男女両方の感情を表す時に使われ、夜中に男女が2人だけになって欲情を感じる、というような場面で出てくる。

 これらの言葉は学校で習うものも多く、時代劇の引き締まった表現で使われたりするので、知っていると中国人に一目置かれることもある。

 

 思いもよらない変化が起きる状況は今後も続き、さらに激しくなることは間違いない。ビジネスだけでなく、中国だけでなく、変わるものと変わらないものを意識してみてゆくことが重要だと考えている。

by 沖虎令@上海

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