中国新興半導体企業レポート:設計専業企業②

中国新興半導体企業レポート:設計専業企業② 2021.07.21 スタッフレポート by 沖虎令

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 前回の報告の通り、中国の半導体設計会社は急増している。

2000社以上もある中国の半導体設計会社とはどんなものか?まず、半導体設計会社売上上位企業をみてみよう。

(2020年中国半導体設計会社売上上位10社)

(出典:中国半導体協会)

 ここ数年、半導体設計会社のトップは携帯電話やデータセンターで有名なファーウエイの子会社海思半導体(Hisilicon)が不動の地位を占めている。図の通り、売上は2位の韋爾股份(Willsemi)の約5倍で、2位から10位までの総額906億元をも上回っている。

 海思半導体の主要製品は、親会社のファーウエイ向けのスマートフォン用IC。製造を台湾のTSMCに委託していた製品は、アップルのiPhone用ICに匹敵する世界最高水準の性能といわれていた。ファーウエイのスマートフォンのシェア拡大と共に、海思半導体は躍進し、2019年の売上842億元から2020年963億元に。2020年上半期の世界半導体売上で初めて10位になり、大きく報道されたので「ハイシリコン」という名前を聞いたことある人も多いのではないか。

 しかし、海思半導体は2020年米国のファーウエイ制裁の最大の標的となった。TSMCはじめ先端ウエファーファンドリへの生産委託が閉ざされ、製造ができなくなり、事実上スマートフォン用ICから撤退した。現在自動車用IC開発に急速に設計部門の方針を転換して再起を目指している。

 上位10社のうち、北京智芯、華大半導は政府向け需要が大きい国策会社。清華紫光展鋭は大学系のスマートフォンIC設計会社。韋爾股份と格科微電子は携帯電話用のカメラモジュールという特殊な製品が主力。中興微電子はファーウエイと並ぶ通信機器メーカーZTEの子会社。ということで、スマートフォンに関わる設計会社が多い。国有系、政府系企業も多く、これらは米国の半導体設計会社にイメージするベンチャー的な会社とは少し違う。

 とはいえベンチャー的な会社もある。

(半導体関連上場会社時価総額上位10社)

(出典:Chinaflashmarket)

 6月中旬の時価総額に基くランキングで、設計会社は韋爾股份、江蘇卓勝微電子、北京兆易創新、瀾起科技がトップ10入りしている(海思半導体は非上場)。この4社はいずれも民間企業で、海外経験ある創業者が立上げた。

 このうち、北京兆易創新(GigaDevice)を見てみよう。この会社は独立系でセットメーカーの親会社は無い。そのため市場戦略と製品展開が重要で、この点で、現在中国半導体設計会社の中では最も勢いがある会社とみている。

 まず、売上が急速に伸びている。(百万人民元)

   2018年   2019年    2020年
   2,246      3,203       4,497

 過去3年年率40%で成長しており、昨今の米中半導体摩擦・国産化推進の流れにより、2021年も順調に売り上げを伸ばしている。主力製品は中国内に競合が無い、いわばニッチなものだが、市場需要が急増しており競争優位性が高い。そのため収益力があり、2018年―2019年のROSは18%~20%で安定している。

 当初はNORフラッシュメモリーという、NANDフラッシュに比べ市場規模が小さな製品から始めた。NORフラッシュは利益率が低いため大手企業が撤退した分野。だが、スマートフォンはじめデジタル機器に欠かせない。結果的に残存者利益を享受する経営の柱になった。

 その後MCUに手を広げた。MCUはSTマイクロ製のいわばコピー製品が主力で、コピーとはいえ完成度が高い。数年前からRISC-VというARMコアに対抗するオープンアーキテクチャーコアのMCUに力を入れている。RISC-Vについては改めて取り上げたい。

 最近はDRAMの設計にも取り組んでいる。

 兆易創新の創業者で董事長の朱一明は、2018年7月、中国唯一の自国開発DRAMメーカーの長鑫存儲技術有限公司(CXMT)の董事長に就任した。ベンチャー設計会社から国策メモリー製造会社へ、異例の転身である。 

 朱一明は清華大学、ニューヨーク州立大学修士を経て米国の半導体メモリー企業に勤務し、帰国後兆易創新を設立した。

by 沖虎令

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