ここのところ、週末になると雨が降ることが続いている。今日もジョギングの途中で大雨になり、雨宿りをしていたらカタツムリに遭遇。カタツムリといえば「梅雨」の季節。今年は梅雨が早いのかもしれない。桜の開花も例年より早かったが、今年は季節が例年よりも2週間くらい早いような気がしている。
連休中ののんびりした生活から一転、先週はとても慌ただしい一週間だった。
11日、東京にて5G ACIAの『インダストリアル5Gデー』に参加。
12日、中国国際貿易促進委員会深圳市委員会主催、深圳市人工知能行業協会、iMakerbase等の共催の『中国(深圳)-日本(東京)人工知能産業連携交流会』というイベントに出席。iMakerbase(深圳のアクセラレーター、当社の戦略的パートナー)の丁総経理と共に無錫市の政府関係の方々との面談。
また、東京ビッグサイトにて開催されていた『AI・人工知能EXPO』にも行き、一通り展示会場を回ってきた。
イベント目白押しだったが、5G ACIAのインダストリアル5Gデーに参加したこともあり、今回はローカル5Gについて考察してみたい。
5G -ACIA(5G Alliance for Connected Industries and Automation)は、産業と自動化分野における5G(第5世代)ネットワークの導入と活用を促進するために設立された国際的な連合体。通信事業者、装置メーカー、自動化企業、産業団体、研究機関などさまざまなステークホルダーが参加するオープンなプラットフォームである。産業用途に特化した5Gの利用に関する情報共有、技術的な課題の解決、標準化の推進などを通じて、さまざまな産業分野での5Gの活用を追求している。その目標は、高速な無線通信、低遅延、高い信頼性、大容量などの5Gの特長を活かし、産業プロセスの最適化、柔軟性の向上、新たなビジネスモデルの創出などを実現することにある。
当社は、昨年から、AI-LINK Networks社という中国のローカル5Gソリューション機器の開発・製造会社の日本事業推進を支援しているが、その会社が5G-ACIAの会員ということで、AI-LINKからの参加者と共に今回のイベントに出席した。世界中から200名ほどが参加、朝9時から18時までの丸一日のイベントであったが、内容も多岐に亘り、非常に興味深かった。海外からはQualcomm, Bosch, Ericsson, Nokiaが参加。日本からは総務省、NTTドコモ、ソフトバンク、NEC、三菱電機、オムロン等の方々スピーカーとしてプレゼンをされていた。
結論から言うと、一言でまとめるのはちょっと乱暴かもしれないが、「ローカル5Gの社会実装はまだまだこれから。みんなで一緒にどうしたら普及していくのか考えて行動していきましょう。」という感じだろうか。
では、そもそも、ローカル5Gとは何なのか。
5GのGはGenerationのG。5Gは第5世代移動通信システムということである。この機会に、1Gから4Gまでを簡単におさらいしてみよう。
1G(第一世代): 1980年代に始まったアナログ方式の通信技術。基本的に音声通話のみをサポート。データ通信はほとんどサポートされておらず、通話品質も今日の基準から見ると低い。また、セキュリティは非常に弱く、通話が容易に傍受されるリスク大。
2G(第二世代): 1990年代初頭に登場し、音声通話の品質が向上、初めてデータ通信をサポート。そのため、テキストメッセージ(SMS)や画像メッセージ(MMS)の送受信が可能になった。また、1Gに比べて通信のセキュリティも向上。データ転送速度は最大で数十キロビット/秒。2Gの中でも、主流な規格がGSM(Global System for Mobile communications)。
3G(第三世代): 2000年頃から始まり、音声通話とデータ通信の両方が可能。データ転送速度は最大で数メガビット/秒で、これによりモバイルインターネットや動画のストリーミングなどが可能になった。因みに、AppleがiPhoneの販売を開始したのは2007年。3Gの普及がiPhoneの販売を後押ししたことは事実である。
4G LTE(第四世代): 2010年頃から始まり、3Gよりも大幅に高速なデータ転送を可能にし、スムーズなハイデフィニション動画のストリーミングや、より高速なウェブブラウジング、高品質なビデオ通話などを実現。「4G LTE」のLTEは「Long Term Evolution」の略称。この技術は、インターネット接続の高速化と通信品質の向上を目指したもので、最大で数百メガビット/秒のデータ転送速度を実現。
5G(第五世代): 日本では2019年に4つの移動通信事業者に5Gの周波数割当てが実施され、2020年から商用サービスが開始。5Gは4Gよりもさらに高速なデータ転送を可能にし、1秒間に数ギガビットのデータ転送が可能となる。ざっと5Gは4Gの約100倍速いと言われる。これにより、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、自動運転車、IoT(モノのインターネット)などの新たなテクノロジーを支えることが可能となる。
通常の5Gは基本的に移動通信事業者による一般利用者向けの携帯通信サービスであるが、ローカル5Gとは、産業利用や地域課題解決の為に総務省の認可に基づき利用できるサービスである。
ローカル5Gの大きな性能は「超高速・大容量」(Ultra Fast)、「超低遅延」(Ultra Low Latency)、「同時多数接続」(Ultra Numerous Connectivity)と言われる。
以上の3つに加えて、
- 高い信頼性 (High Reliability)
- 本質的なセキュリティ(Intrinsic Security)
- 広い屋外とユビキタスな屋内カバレッジ(Wide Outdoor and Ubiquitous indoor Coverage)
- 完全なモビリティサポート(Fully mobility support)
が、ローカル5Gの特徴的な性能といえる。ローカル5Gの特性を語る時には、先に記した3つの特性ばかりが強調されるが、実際はそれ以下の4つが非常に重要だと思う。これまでいろいろなお客様と話をしている中での実感である。
ローカル5Gは、スマート製造、スマート物流、スマート農業、防災、ケーブルTV、e-Sports、商業施設、イベント会場、観光地等で既に活用されている。今後、自動運転、スマートシティ等での更に広い場面での活用が期待されている。矢野経済研究所によるとその市場規模は2030年には650億円規模に成長すると予想されている。
ドイツが2011年に提唱したインダストリー4.0に対抗するように、日本政府は「第5期科学技術基本計画」(2016年)の中で世界に先駆けた「超スマート社会」(Society 5.0)の実現を提唱している。その「超スマート社会」(Society 5.0)の実現の為には、ローカル5Gが大きな役割を期待されている。
一方、総務省が承認したローカル5Gの免許人(公表を承諾している事業者のみ)は138者。(令和5年4月30日現在)。ローカル5Gはその大きな期待にかかわらず、まだまだ発展の緒に就いたばかりと言わざるを得ない。
一つには、ローカル5Gの性能、特性をフルに活用した実例案が少ないことが言える。要は、「ローカル5Gって良さそうだけど、何に使ったらいいのか分からない」と言うことである。
もう一つは、ローカル5Gの導入が現時点では非常に高コストになってしまっていること。やりたいことがあり、そのためにローカル5Gが有効な手段だとはわかっているが、導入コストが高すぎて、ローカル5Gで実現することで得られるメリットを投資コストとの兼ね合いで経済的に説明することが難しいケースも少なくない。
また、WiFi6 (IEEE 802.11axとも呼ばれる無線LANの規格で、2019年に正式に承認された)と比較してローカル5Gのメリットを伝え切れていないこと。
そもそも、総務省の許認可が必要であり、時間とコストがかかること等。
いずれにしろ、最大の課題は、「ローカル5Gで実現したいこと」を見つけ出すことだと思う。
5Gは「高速道路や新幹線に比肩する、21世紀の新しい基幹インフラ」と表現される(※決定版5G 2030年への活用戦略 総務省片桐広逸氏著から引用)。
日本のソサエティ5.0実現の為に、弊社もローカル5Gの普及に微力ながら貢献したいと思っている。
5月14日記