社長の日曜日

社長の日曜日 vol.47 島人(しまんちゅ) 2024.03.12 社長の日曜日 by 須毛原勲

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 沖縄の方言で、沖縄県のひとを「しまんちゅ」(島人)という。

 先週末、身内の結婚式のために沖縄に行った。空港からタクシーに乗ると、運転手さんがバックミラー越しに「しまんちゅですよね?」と声をかけてきた。大学生の頃、東京の飲食店でアルバイトの店員さんから「沖縄の方ですよね?」と声をかけられたことがある。その店員さんは沖縄出身で、故郷の人に会えた喜びで思わず私に声をかけてしまったと言っていた。あれから40数年の年を重ねて、ここ沖縄で、今度は地元の方に沖縄の人と間違われた。自分は濃い容貌から沖縄出身ではないかと言われることが今までにもあったが、地元の方から見てもそう見えることに、ちょっと驚いた。タクシーの運転手さんは、私が向こうから歩いてくる姿を見て絶対島人だと思ったのにタクシーに乗ってきたのでびっくりしたらしい。

 海外での仕事を通じて、訪れた国は70ヵ国を超え、中国に13年間駐在していた期間には、全22省、5自治区、4直轄都市を含む200以上の都市を訪問した。しかし、日本国内ではまだ訪れていない県が16もある。実は今回の沖縄も初めての訪問だった。

 東京を出るときは雪が降っていたが、訪れた沖縄は温かく、出会う人々の親切さ、話し方のゆっくりさが心地よく、まるで本当に“故郷”に帰ってきたような感覚になった。ブーゲンビリアやハイビスカスの花が、以前駐在していたシンガポールなどの南国を思い出させてくれた。沖縄、好きだな。

 妻と共に早起きして海岸線沿いをジョギングした。心地よい海風と遥かに広がる青い海、白い砂のビーチが格別だった。次に訪れる際は、一週間程度ゆっくり滞在し、車を借りて島を満喫したいと思っている。

 ビーチ近くの会場で開かれた結婚式とパーティーは、新郎新婦の家族とごく限られた友人たちだけのこじんまりした会で、列席者は用意された“かりゆし”を着てくつろいだ楽しい雰囲気だった。

 新郎である甥とは年に1、2回 正月やお盆に帰省した際に会うくらいだったが、祖母父や両親を大事にする心優しき男である。美しい奥様と幸せになることを心から願っている。

 2011年3月11日、午後2時46分に東北地方太平洋沖地震が発生した。

 この日、この時間の出来事は今でも鮮明に記憶に残っている。当時上海に駐在していた私は、偶然日本に出張で帰国しており、芝浦の本社ビル36階で中国環境展出展に関する打ち合わせをしていた。突然、会議室で大きな揺れを感じた。メンバーの一人が立ち上がろうとして床に転んだ。皆、机にしがみつき、なんとか倒れないように耐えた。揺れが収まり、何が起こったのか理解できないまま会議室を出て外を見たところ、お台場の方向で火事が起きているのが見えた。オフィスはパニック状態になり、テレビからは東北沖で発生した地震のニュースが流れていた。その後、津波に流される建物などの映像が流れてきて、その時はじめて事の大きさに気付いた。

 当然のことながら、会議は中止され、エレベーターも停止した。私たちはやむを得ず階段を使って36階から降り、品川駅を目指して歩いた。品川駅近くのホテルに行ってみるとロビーは人で埋まり、多くの人が床に座り込んでいる状態で、宿泊は無理と言われた。とにかく自宅に帰るしかないということになったが、電車は止まっている。日付が変わるころになり漸く一部の電車が動き始め、自宅を目指したのだが途中で止まってしまった。結局、途中下車しタクシー待ちの長蛇の列に並び、最終的に自宅にたどり着いたのは深夜2時を過ぎていた。

 それから8年後、北京駐在から帰任した私は東北の被災地を訪れ、気仙沼、陸前高田、釜石、宮古といった地を巡った。陸前高田では、有名な奇跡の一本松を間近に見る機会があった。震災から8年が経過していたが、海岸沿いには大きな石の防潮堤が築かれている一方で、多くの場所がまだ更地の状態にあることが目についた。復興が進むにはさらに時間が必要だと感じられた。しかし、そうした厳しい状況の中でも、人々が復興に向けて一歩ずつ進もうとする力強い意志を感じ、甚大な災害を経験してもなお前を向いて進もうとする人々の姿勢に感銘を覚えた。

 東日本大震災から13年が経ち、避難者数はピーク時の47万人から約3万人までになり、仮設住宅などの入居戸数は12万戸だったのが605戸までに減少している。海岸の復旧・復興に関しては約96%が完了、復興道路に関しては570キロメートル全てが建設完了している。

 未曾有の震災に打ちのめされた人々が一歩ずつ進んできた結果の数字が、今年起きた能登半島地震の被災者の方々を勇気づけることを願ってやまない。

3月12日記

by 須毛原勲

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