4日、気象庁は東京で桜が満開になったと発表した。1月にこのブログで触れた「冬木の桜」も満開になり、木の下では家族連れがお花見を楽しんでいた。東京は曇り空が続き、その下で満開の桜がまさに白雲のように咲き誇っている。
桜の木々は、通りがかりの人々を引きつけ、多くの人がスマートフォンで撮影している。春になると桜の花が咲くのは毎年のことであり、見慣れた景色であるにもかかわらず、桜には人々が自然とカメラを向けたくなる魅力がある。じっくり花びらを観察すると、大きく広がった薄ピンクの花びらが生命の輝きを放っているように見え見とれてしまう。花そのものの美しさはもちろんのこと、咲き始めから散るまでの期間が約2週間というその儚さが、桜の花をさらに特別なものにしているのかもしれない。
いつものジョギングコース沿いでは、色鮮やかな山吹や、早くもツツジも咲き始め、本格的な春の到来を感じる。
4月3日、台湾の東部、花蓮県を中心に大きな地震が発生した。これは過去25年で最大規模の地震である。台湾は日本と同様地震の多い地域で過去にも大きな地震があった。
東日本大震災の際には台湾から250億円以上、能登半島地震の際にはわずか2週間で25億円以上の義援金が送られた。また、被災地への救助隊の派遣や多くの救援物資が届けられた。上川外務大臣は今回の地震を受け、日本政府が1億5,100万円規模の支援を実施すると発表した。その額が多いか少ないかの議論はさておき、迅速な対応は評価されるべきである。
4日の夜、当社でインターンをしている中国人(早稲田大学のMBA課程で勉強中)の若者と食事をした際、彼は「台湾の地震、大変ですね。幸い多くの死亡者は出ていないけれど。」とつぶやいた。中国と台湾の間には敵対的な印象があるかもしれないが、普通の中国人も台湾の状況を心配しているのが一般的な感覚である。
先月、15年来の友人からの依頼により、久しぶりに北京を訪問した。友人は2年前に新たな事業を買収し、事業は順調に成長を遂げている。昨年はタイに進出し、今年は日本進出を目指している。今回の出張は、その日本進出の支援を依頼されたものである。この友人の長男が、上述した若者である。友人である社長は新たな事業を日本で立ち上げることと、同時に自分の息子に何らかの経験を積ませたいと考えている。このような親心は、どの国でも変わらない。子どもの将来を案じ、成長を願う親心は同じなんだなと思う。彼がMBA課程を修了する前に、この新規事業が形になればいいなと思う。
社長とは15年来の友人であり、互いに深い信頼関係が築かれているが、新規事業担当の責任者たちとはこの度が初対面であった。それにもかかわらず、打ち合わせは順調に進み、双方が取り組むべき事項が明確になった。いきなり日本で法人を設立するという計画は立てず、当面はテストマーケティング的な活動を中心に進めることで一致し、目指すビジネスモデルが日本市場でも受け入れられることがある程度確認できた時点で、より大規模な成長戦略へと舵を切ることに合意した。
打ち合わせの際、彼らのオフィスの下にあるラッキンコーヒー(中国語名:瑞幸咖啡、英名:Luckin Coffee)でコーヒーをご馳走になった。「ラテでいい?」と尋ねられた時、昨年読んだ新聞記事を思い出した。それは、ラッキンコーヒーで茅台酒を使用したコーヒーが流行しているという内容だった。それをリクエストし、購入してもらった。
カフェチェーン大手の瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)は酒造会社の貴州茅台酒と協力し、9月に「醬香ラテ」を発売した。この商品は昨年、中国で話題となり、普段手が届きにくい高級酒の風味を手軽に試せることから、大きな注目を集めた。茅台酒は伝統的な蒸留酒である白酒の一種であり、一部の商品は高価で取引され、接待や贈答にも使用される。茅台酒のアルコール度数は53%と高いが、醬香ラテでは0.5%以下に抑えられている。味は甘く、白酒の香りが感じられる。独特な茅台酒の香りがするものの、飲みやすかった。価格は1杯38元(約780円)。
私の友人のように、日本市場への進出を考える中国企業は少なくない。しかし、中国企業が日本で苦戦しているように見えることもしばしばある。以下の点から、中国企業が日本で成功しない理由を考察したい。
1.そもそも、中国国内での成功を収めていない企業が海外、特に日本市場で成功することは困難である。自国で成功していない場合、商品やビジネスモデルが確立していないことが多く、その状態で海外市場に挑むのは難しい。
2.中国で成功している商品が、海外でそのまま受け入れられるとは限らない。市場ごとのニーズに合わせたカスタマイズが必要な場合が多い。
3.各市場に適した価格戦略や価格設定が必須である。競合他社の状況や購買層の価値観に合わせた価格設定が求められる。
4.新規事業の立ち上げそのものが非常に困難である。特に、言語、文化、商習慣が異なる国での事業立ち上げはさらに難しい。異文化への理解と真摯な姿勢が必要である。日本企業が海外で事業を展開する際にも同様であり、その国の文化や商習慣を理解し、尊重する姿勢が求められる。
5.中国企業は日本市場において、中国人に事業を任せる傾向がある。中国から派遣された人材や日本に留学してそのまま日本で働いている中国人に経営を任せるケースが少なくない。TikTokの渋谷本社を訪れた際、多くの中国人が働いていることに驚いた。感覚的には半分以上が中国人であった。私の友人が配属された部門では公用語は中国語で、日本人がいても中国語で会話しているという。また、以前支援していた中国人(日本の大学を卒業)が経営するスタートアップは7名の従業員すべてが中国人か日本と中国のバイレイシャルだった。
20年前、私が中国に初めて駐在した頃、多くの日本企業が日本人駐在員を大量に派遣していたが、現在では現地化が進み、駐在員の数も減少している。
今、日本に進出している中国企業は、私が初めて中国に駐在した当時の日本企業以上に、母国人に依存しているように思う。それがいいのかどうか、私には分からない。ただ、2004年に上海に駐在した際、私はいかに日本人駐在員に依存しない組織にできるかを日々考え、優秀な中国人を採用し引き上げていった。そういった私の経験からすると違和感を覚えざるを得ない。
「国際化」と「現地化」は非常に難しいテーマであるが、試行錯誤を繰り返しながらも、最終的には、その国の事業はやはりその国の人たちを信頼して上手く活用するのが正しい方向なのではないだろうか。
今回の北京出張での会食の場では茅台酒が出され、打ち解けた雰囲気でつい飲み進んでしまった。そのせいか、帰国後、ものすごく体調を崩してしまった。
中国に駐在していた頃は「中国通」に見られたい一心で無理をして茅台酒を飲んでいたのかもしれない。年齢を重ねるにつれ、もうそのような無理がきかなくなったことを痛感するとともに、もはや昔のように「中国通」を気取って茅台酒を飲む必要はないんだなと思った北京だった。
4月7日