■ 久しぶりの太陽
10月3日、久しぶりに晴れた。天高く、真っ青な空。
東京都心の雨は、8月27日から10月2日まで、37日続いた。統計を取り始めてから、最長となった。
朝のウォーキング。清々しい。肌寒いくらいだ。季節は確実に進み、足元にはどんぐりが絨毯のように地面を覆っていた。子どもの頃、どんぐりを集めてマッチ棒を刺し、動物のようなものを作って遊んだものだ。
夕方、家に帰る途中、「えっさあ、えっさあ」と野太い声が聞こえてきた。声のほうを見ると、神輿を担ぐ男衆。女性も交じっている。提灯には「井の頭 駅前睦会」。威勢のいい掛け声が押し寄せて、私の横を過ぎていった。公園からは、虫の声もする。
■ セミナーで見えてくる課題
9月29日、フィジカルAIセミナーの第3回を開いた。題して「フィジカルAI解体新書」。多くの方にお申し込みいただきご視聴くださった。お忙しいなか、御礼申し上げる。
「解体新書」と名付けたからには、フィジカルAIの代表格であるヒューマノイドロボットを、部品の単位まで解体したかった。15の基幹部品に分け、それぞれの役割、EV由来の部品とロボット固有の部品、技術の課題、日本・中国・米国の強みと弱みを整理した。最後に、日本の勝ち筋について、私たちなりの見立てを示した。
反省が一つある。途中で退出された方が4名いた。32分、32分、39分、44分。4人とも、私が基幹部品を一つずつ解体している最中だった。減速機の精度、モーターの構造。そこが山場だと思って準備したが、違ったらしい。
アンケートの声も、どれも同じ一つの問いに見えた。――で、うちは何をすればいいのか。セミナーで示したのは日本の勝ち筋。聞きたかったのは、自社の一手。中国の部品がどこまで来たかは、求められる答えではなく、あくまでその前提。
だから次回セミナーは、問いの立て方を変える。「フィジカルAIから読む 中国の次の一手」。副題は「EVの次に、なぜロボットなのか」。国と企業と資金の流れを追う。そのうえで、立場ごとに、次に何を確かめればいいかを持ち帰っていただこうと思う。
ヒューマノイドロボットをめぐる情報は、日々更新される。追いかけるのは骨が折れる。だが、面白い。
■ AIの部下たち
9月29日、トランプ大統領と米国のAI企業6社のトップが、AIの安全管理を企業が自ら担う協定に署名した。OpenAI、アンソロピック、グーグル、メタ、エヌビディア、スペースX。外部の監査を受け入れ、取締役会に安全を監督する仕組みを置く。罰則はない。大統領は「道義的な拘束力」と呼んだ。
OpenAIは9月3日、ChatGPTの最上位モデル「GPT-6 Astra」を出した。29日には中位の「GPT-6.1 Sol」を、翌30日にはグーグルが「Gemini 4 Argon」を発表している。Astraを使ってみた。以前とは比べものにならない。ただ、あっという間に利用の上限に達してしまう。
2023年にChatGPTを使い始めた。一時期はGemini、ここ1年はClaudeが中心だ。
最近は、使い方が変わってきた。仕事ごとに担当のAIを分ける。Claudeの出した答えをChatGPTに確かめさせ、Geminiに情報源を当たらせる。3つ、5つの仕事を別々のプロジェクトで並行して走らせ、それぞれ答えが出たところで次の指示を出す。
この仕事の仕方には、覚えがある。
上海で販売会社の総経理をしていた頃、直属の部門長が7人いた。指示を出し、報告を聞き、返す。報告を聞くと、別のことを思い出す。間違いに気づく。振り出しに戻る。そのたびに、部門長たちは苦労したことだろう。
AIは文句を言わない。ただ、こちらがどのAIに何を頼んだかを忘れる。別のAIに続きを頼むと、「その話は記憶にありません」と返ってくる。
使えば使うほど、問われるのは使う側だ。どこまで信用するか。視点は正しいか。情報源はどこか。意見は正しいか、新しいか。使い手の素養、勘、情報量が試される。
これも、人と仕事をするのに似ている。技術、法務、会計、マーケティング、人事。上に立つ者が、それぞれの専門家より詳しいとは限らない。知識の量で、すべては決まらない。ただし、本質を見抜く力がなければならない。
■ 見ないこと
9月29日は、日中国交正常化の日だった。
1971年、ニクソン・ショック。米国が先に中国へ動いた。翌1972年の9月29日、田中角栄首相と周恩来首相が日中共同声明に調印した。あれから54年。
日中関係は、いま異常なほど冷え込んでいる。
その北京を、日本国際貿易促進協会の会長を務める岩屋毅前外相が、企業役員ら約50人の訪中団を率いて訪れた。王毅外相、何立峰副首相と相次いで会談したと報じられた。
米中は、習近平国家主席がワシントンを訪れ、トランプ大統領が国賓として迎えたばかりだ。
今朝の朝日新聞「日曜に想う」で、吉岡桂子さんが書いている。9月、北京郊外の中国人民抗日戦争記念館を1年ぶりに訪ねると、戦後の日中関係を示す展示から、2枚の写真が消えていた。1枚は「中日友好交流大会」の文字を背にした習近平国家主席。もう1枚は、習氏と握手する二階俊博氏。2015年と2017年に撮られたものだという。
同じコラムは、8月下旬に深圳の巨大なAI展示会場を歩いた塩崎彰久衆院議員の言葉を引いている。
「見ないことは、安全保障ではない」
■ ジャイアンツ最終戦
10月3日、巨人の最終戦。巨人はDeNAに2対5で逆転負けを喫し、阪神のセ・リーグ優勝が決まった。
今季は、主砲の岡本がメジャーへ移った。エースの山崎伊織と戸郷翔征が長く離脱した。5月には、阿部監督が辞任した。それでも、最終戦まで優勝を争った。急きょ指揮を引き継いだ橋上秀樹監督代行に、敬意と感謝を表したい。
推し活という言葉が当たり前になって久しい。私の推し活は、巨人軍だけだ。今季の主催試合の観客は、286万2,832人。コロナ禍のあと、最も多い。私は一度も東京ドームに行けなかった。チケットが、なかなか取れなかった。
クライマックスシリーズで、阪神に一矢報いてほしい。
■ 倉本聰さん
倉本聰さんが亡くなった。91歳。
学生の頃、本気で脚本家になりたいと思った時期がある。倉本さんの脚本を、むさぼるように読んだ。
『北の国から』の連続ドラマが始まったのは1981年。私は20歳だった。物語は2002年の『遺言』まで、21年続いた。いちばん記憶に残っているのは、『’87初恋』だ。吉岡秀隆さん演じる純が、横山めぐみさん演じるれいに想いを寄せる。背景には、富良野の景色があった。あの切なさは、いまも覚えている。
物語の最後、純は富良野を離れ、東京へ向かう。富良野とは距離が全く違うとはいえ、私も大学入学の年に故郷を離れて東京に出た人間である。その時の、足もとの覚束なさは今でも昨日のことのように思い出される。
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《今週の写真》神輿の声
井の頭の秋祭り。提灯に灯がともる頃。
2026年10月4日
