「日本の底力は地方にあり」
新・社長対談第1回 青山社中株式会社 筆頭代表CEO 朝比奈一郎氏 Vol.2(全3回) 2026.04.23

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青山社中株式会社 筆頭代表CEO 朝比奈一郎氏にお話を伺う第2回。

今回は地方企業の実情や海外進出への課題、朝比奈さんが定義されている「始動者」についてお話を伺います。

朝比奈一郎氏プロフィール

東京大学法学部卒業。ハーバード大学行政大学院(ケネディスクール) 修了(修士)。

経済産業省ではエネルギー政策、インフラ輸出政策、経済協力政策、特殊法人・独立行政法人改革などに携わる。

「プロジェクト K(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」初代代表。

経産省退職直後の2010年11月に青山社中株式会社を設立。

筆頭代表 CEOを務め、政策支援・シンクタンク事業、コンサルティング業務(自治体や民間企業等の支援)、リーダー育成など教育・人材育成事業を行う。

福井県立大学 客員教授、ビジネス・ブレークスルー大学大学院 客員教授、ハーバード大学ケネディスクール 日本人同窓会 理事。

中央省庁・北九州市・浜松市・川崎市などのアドバイザーや富山県人材育成・確保推進会議座長・神戸市人材育成に関する懇話会委員・静岡市社会の大きな力と知を活かした根拠と共感に基づく市政変革研究会委員など各審議会委員を歴任。

著書に『やり過ぎる力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)や『霞ヶ関構造改革・プロジェクトK』(東洋経済新報社)など。

朝比奈一郎氏
  1. Vol.1「日本の再生を目指して」
  2. Vol.2「日本の底力は地方にあり」
  3. Vol.3「新しい伝統をここからつくる」

世界でもトップレベルのモノづくり産業を支える地方企業のポテンシャル

ー 須毛原

当社は昨年度1年間、新潟県の事業をご支援させていただきました。正直申し上げますと、私は前職に携わる間、日本の地方の企業様とは全くご縁がありませんでした。今回、新潟県の企業様とのご縁をいただき、その中で感じたのが、「日本の企業はすごいな。」ということです。商品の説明をするときの熱のこもりようがすごいんですよ。

日本人は基本的にはシャイで丁寧なのですが、商品の話になると熱いのです。海外の企業とマッチングしたときも、通訳がついていけないくらいのエネルギーでお話されていて。日本の地方の企業はまだまだすごいと思ったのですが、朝比奈さんも地方を行政と連携されたりいろいろな関係でご支援されているかと思います。地方の力、モノづくりの力というのはどのようにお考えですか。

ー 朝比奈

結論から言うと、すごく可能性とポテンシャルがありますよね。日本は人口が1億2000万もいます。例えばアイスランドは世界でも存在感はありますが、人口は35万くらいで、乱暴に言うと日本が200~300個入るほどの規模です。日本にはそれだけの歴史といろいろな積み重ねが各地にあります。例えば、この地域には昔からの農産物の特産品があるとか、農業も一種のモノづくりですし、今は植物工場などもありますから。

私は、お話に出た新潟県の三条市のアドバイザーだったので燕市のほうはそれほど知っているわけではないのですが、燕三条地域では鍛冶技術が400年の伝統があってその技術で生きていくとか、世界で見れば国と同じレベルのかたまりが日本の地方にはたくさんあると思います。それを活かし、国全体の成長戦略、ただみんなで「右向け右」というよりは、各地の自然、文化、歴史、食、といった特徴を活用して、製造業も頑張っていただいていったほうが可能性はある気がします。

ー 須毛原

本当に海外に出て通用する技術、商品を持っている企業がまだまだたくさんあると思います。

ー 朝比奈

ありますね。ですから課題といえば、例えば非常に素晴らしい包丁を作る企業さんがあって、半年待ちです、と。素人考えで言うと半年待つくらいなら生産ラインをもう1、2本増やして大量に生産すれば良いではないですか、という話になるのですが、地域なのであんまり困っていない。

例えば値段をもっと上げて、ライン増やして、というのを経営的には考えがちですが、「値段を上げたりすると今までのお客さんに悪い。」「ラインを増やすにしても職人がきちんと育っていないと質も落ちてしまうかもしれないから。」と地域の企業さんはおっしゃって、あまり儲けようとされない。

ー 須毛原

よくわかります。海外に展開するには資本も必要だし、ラインも増やさないといけない中で、地方のその企業にとってはそれ以上やる意味がない。ですが、良い商品を持っているから海外に行けば外貨も稼げて、日本全体としては良い。ただ、地方の企業で、その一歩を踏み出して、リスクを負っていくという企業は実は少ないかもしれないですね。

ー 朝比奈

そうですよね。良くも悪くもガツガツしていないというか。

地方企業がチームになって海外へ

ー 須毛原

今後、日本がさらに世界で勝っていくためには、次の波を起こさないとなかなか厳しいかなと感じています。既に名だたる企業は、人材もいるし商品もあるし、海外展開もしています。次の波はまさに地方の企業でやっていくところがあるのかなと思います。

新潟県も伝統の金属加工技術を活かしたアウトドア用品や特産の米由来のお酒などは海外展開していますし、あとは、福井の鯖江のメガネとか。福井県もいろいろとお話させていただいたら、実はメガネだけで300億円輸出しているらしいんですよ。最近はJINS(ジンズ)が銀座に旗艦店を作ったらしいですよね。

ー 朝比奈

そうですね。私も実は一昨日JINS会長の田中さんとお会いしていました。旗艦店で銀座モデルというのを作っていて、8万円と9万円の2価格帯で。鯖江で全部徹底的にやっているモデルで、飛ぶように売れているみたいですね。

ー 須毛原

インバウンドでも非常に人気のようですね。

ー 朝比奈

そうです。銀座のお店ではインバウンドが何割だと思いますか?

ー 須毛原

3割?

ー 朝比奈

9割です。

ー 須毛原

9割!それはびっくりですね。これは福井県の方ともお話ししたのですが、福井県のメガネは輸出で300億円稼いではいますが、まだまだ海外に出ていない企業も多いそうです。そういった、ものづくりは完璧だけれどまだまだ知られてない企業は非常に多くて、何でそうなんだろうと考えてみましたが、「日本人のこだわり」なのでしょうか。

ー 朝比奈

私も福井県立大の客員教授をしているのでわかりますが、鯖江とか越前市とか、あの辺りにこれでもかというぐらい伝統技術が集まっているんですよね。越前和紙や刃物、漆器なども得意ですし。コレクティブ・インパクトという言葉がありますが、鯖江のメガネだけでインパクトを出すのではなく集合的なインパクトを出して、もっとそれを活用すれば良いと思います。

須毛原さんもおっしゃった通り、私の言葉で言うと一軍企業はすでにどんどん海外に出ていると私も思います。三条のアウトドア用品で言えば、スノーピークなどですね。一軍企業は放っておいても良い。語弊はあるかもしれませんが二軍三軍企業がいて、この方たちは家族経営で3人ぐらいで良い包丁を作っていたりするのですが、工夫の仕方によってはもっと値段を高くできる、もっと世界に出ていけるとしても「そこまで欲望もありません。」と。だから私は、行政や商工会議所が束としてうまく出していくことができたら良いなと思います。一軍はもう個々で戦えるので、次に続く企業がチームで戦っていけるように。

ー 須毛原

仰るとおりです。一軍というかファーストランナーの人たちは、そういう仕組みが自社のシステムに全部入っているんですよね。マーケティングからロジスティクス、ファイナンス、人、といったものが。

対して、二軍というかセカンドランナーの人たちは、今のところで実は満足されているんですよね。「これ以上は…」と。ただ、集めるとすごい力になる。
だからそれこそ、例えば越前であるとか燕三条のような地域をサブブランド的に立ち上げていくと、結構いけるのではないかと私も思っています。

企業が海外展開を視野に入れる場合、最近は生成AIでも情報は集められますが、最終的にはやはり人にコンタクトする必要があります。この会社は信用できるかできないか、と判断するところはさすがに生成AIではできません。そういった局面では言葉も大事ですが何よりビジネス経験が必要で、そういうところを我が社としてはお手伝いしたいですね。

物流でも、ファーストランナーは20フィートコンテナとか40フィートコンテナが立ちますけど、個々の企業だと立たないんですね。混載になると物流費が20倍、30倍かかる。その段階で収支計算が合わないんですよ。すでに経産省さんや中小企業庁さんやJETROなどがいろいろな仕組みでやってらっしゃいますが、まだまだ支援の余地はあると思います。

ー 朝比奈

そうですよね。

始める動かす「始動者」。大切なのは「基軸力」と「構想力」

ー 須毛原

地方の話から、次に人材の話へ移らせていただきます。
先程お話したように、商品はすごいし、社長さんや幹部の方も非常にその商品への思い入れがある。一方で、言葉の問題があって、と逡巡されている。ただ私は、言葉は表層的な問題で、本質ではないと思っています。

では何が大切なのか考える上で、朝比奈さんが「始める」「動かす」「始動者」という言葉でリーダーのあり方を再定義されているのが非常に面白いなと感じました。どのような思いを込められているのか、どのような人材を「始動者」と呼んで、そういった「始動者」を育てたいと思ってらっしゃるのかを少しお話いただければと思います。

ー 朝比奈

今でこそ私も偉そうにリーダー、人材育成と言っていますが、もともとは自分もそんなにいわゆるリーダーのタイプじゃなかったんです。小中高の頃も学級委員や生徒会の役員、サークルキャプテンみたいな役をやるタイプではありませんでした。どちらかというと図書委員や新聞委員。大学でも集合写真を撮ると、一番前面に座るタイプではなかったんですよね。

影響を受けて変わっていったのは二つきっかけがあって、一つはやはり経産省です。経産省はまあ良くも悪くも、「自分が自分が」という人が多くて。例えば財務省では、「今は財政が厳しいから税収を確保して」というような組織の歯車としての発言をします。組織人としては美しいですよね。

ただ経産省に行くと、「あの政策は俺がやったんだ」という感じの方が多いのです。もちろん篠田さんのように謙虚な方もいらっしゃいますが、仕事ぶりは結構ガツガツしているところもあって。偉くなるというよりは、「自分がこう感じてこうやってるんだ。」というようなカルチャーがあったのです。

私はよく「なりたい族」と「やりたい族」みたいな言い方をするんですけれど、経産省はかなり「やりたい族」が多くて、これはリーダーとしては大事だろうなと思いました。ただ自分がそういう方の部下になってみると、結構大変だったんですね、そういうタイプの方は。「これはリーダーとして優れているのだろうか」と。

国民から見れば、どんどんいろいろなことをやっている方は面白く見えます。でもその下には泣いている部下がたくさんいて、なんだろう、とモヤモヤしていた時に、二つ目のきっかけになった、ケネディ・スクールに入学させてもらいました。そこで『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本を書かれたことで知られるエズラ・ヴォーゲル先生にお世話になりました。

ヴォーゲル先生は「日本人の留学生は増えてきたけれど、あまり面白いやつがいない。」というような話をされていました。数は多いが自分で思いを持って進めているような人が少ない、と。たまたまケネディ・スクールでリーダーシップの研究が盛んだったこともありリーダーシップの必修科目をとって勉強したのですが、そこで「日本人はリーダーの翻訳を間違えたな」と思いました。

よくリーダーは「指で導く者」と書いて「指導者」と訳されてしまいますが、本当の翻訳は「始める」「動く」「始動者」だと思ったのです。指で導くというと、10人や100人、1000人の部下を前提に率いるという感じになりますよね。しかし「始める」「動く」というのは部下と関係なく動くわけです。英語で言うと、10人100人を率いるというのは、どちらかというとマネジメントなんです。

マネジメントを何のためにやるかというと、有名なドラッカーのマネジメント論では典型ですが、ドラッカーは新しい顧客創造などの研究をずっとやっていて、顧客創造しようとすると今の組織を乱してやることになる。それは組織にとって良くないので、マネジメントが大事になる、という。順序で言うと、リーダーシップを発揮するといろいろ乱れてしまうからマネジメントがあるということです。

日本の場合、「マネジメントのためのマネジメント」のような。みんなが慕っていて、うまく円滑に回ることそのものが価値みたいになってしまっているのですが、本当は何か新しいことをやると乱れるから、それをどうにかするのがマネジメントなんです。

話を戻すと、最初に何をするかというのは結局想いとかなんですよね。ケネディ・スクールではケーススタディで、パブリックリーダーとしてキング牧師やガンジーが登場するのですが、ガンジーは弁護士でキング牧師は牧師です。大統領のような地位ではなくて、キング牧師は言葉を選ばずに言うと平社員、平牧師なんです。平牧師でも、黒人の権利向上のために英語で言うインナーボイス、内なる声に耳を傾けて動くのだと。日本流に言うと志とか想いのような。

ー 須毛原

坂本龍馬も土佐藩の下級武士でした。

ー 朝比奈

そうそう、そうなんですよ。彼は下士でちょっと中途半端な身分だったんですが、身分と関係なく志を持って動くという。この志が始動する上での基軸になります。うちの塾では「基軸力」と呼んでいて、細かく言うといろいろな力が必要だと塾では教えるのですが、本当に大事な二つを言えば、この「基軸力」と「構想力」なんですよね。

「日本をなんとかしよう」「会社をなんとかしよう」「家庭をなんとかしよう」という想いはあっても、絵が描けないと次に進めない。なので「この構想をどう描くか」というのも非常に大事で、この二つがリーダーとしてものすごく重要になってくる。自分で動いていくための絵ですね。絵が描けないと、どっちに行けばいいのかわからなくなるので。ここの両軸が非常に大事だというのは、うちの塾での教えです。

ー 須毛原

具体的にその活動をずっとされてきて、そういった人材はどんどん育ってきているのですよね。

ー 朝比奈

そうですね。ありがたいことに。もともとのご本人のポテンシャルとここでの教育と、もちろん両方の効果があると思うのですが。偉くなるのが良いことではないですが、塾をやってきて市長になった人も増えてきていますし、国会議員も3人ほど当選しました。

他にも起業していたり、会社の中で何かアクションを起こしたり、とにかく「始動」することが大事だと想いを持って、どんどん日本社会を活性化させる方向に塾生たちが動いていってくれているという実感はありますね。

ー 須毛原

青山社中さんがやられていることは日本を復活させる種まきであり、素晴らしいことだと敬意を持っております。

地方企業のポテンシャルの高さ、可能性については、共感できるポイントが多くありました。「始動者」の育成は、日本を活性化させる種まきとして非常に意義があり、実際に多くの人材を輩出されていることは素晴らしいと感じます。

次回は、日本企業と世界との接点について、対談の締めくくりに座右の銘や10年後の夢についてお話を伺います。

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