社長エッセイ

「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」ー翻訳ソフトDeepLを使ってみた(”個人の感想です”) 2021.12.03 社長エッセイ

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 現在、日経新聞の連載小説が、『ふりさけ見れば』安部龍太郎氏の小説です。

 主人公は、養老元年(西暦717年)に第9次遣唐使に同行して唐の都・長安(現西安、陕西省)に留学し、科挙に合格し、唐の玄宗に仕えた阿倍仲麻呂の物語です。毎日楽しみに読んでいます。

 今回は、小説のお話ではなく、中国語の自動翻訳ソフトの話です。

 仕事柄、中国語の文章を読む機会も多く、また、WeChatやメールで中国の人たちとコミュニケーションをすることがとても多いです。基本的に自力で読んで自力で書いています。たまにGoogle翻訳とかを使ったりもしましたが、Google翻訳は、中国語⇔英語の相互翻訳はそれなりに使えるのですが、中国語⇔日本語の翻訳になると大体の意味は合っていても細部や文章の流れがどうしてもしっくりこなくて、結局ゼロから自分で中国語で文章を書いたり、中国語から日本語に翻訳する方が時間的に早かったりしますので、あまり使わなくなってしまいました。

 最近、知人から『DeepL』(※)という翻訳ソフトを紹介され、試しに使ってみてその翻訳の精度に驚きました。

 冒頭にご紹介した阿倍仲麻呂の和歌、「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」を、DeepLでの翻訳、グーグル翻訳、マイクロソフトの自動翻訳、百度翻訳で比較してみました。

日本語原文

「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」

中国語訳

DeepL版

如果你看一下天空,那将是一个春天的日子 月亮可能出现在三笠的山上

Google版

如果你看看天上的鲑鱼,那就是春日。也许是若草山的月亮

ふりさけ見ればのさけがお魚の鮭になってしまっています。

Microsoft版

天原,如果你看看,这将是春天的一天。也许在三笠山出月

Googleよりは精度が高いかなと思います。

百度翻訳版

纵观天原就是春日 登上三笠山,也许是月亮

英語に翻訳してみるとどんな感じになるのかも比較してみました。

英語訳

DeepL版

If you look at the sky, it will be a spring day, the moon may appear in the mountains of Mikasa.

Google版

If you look at the heavenly salmon, it will be Kasuga.

Maybe it’s the moon on Mt. Wakakusa

残念です。やはり、ふりさけ見ればの“さけ”がサーモンになってしまっています。

Microsoft版

Heavenly Field: If you look at furisaki, it will be Kasuga. Maybe a shizuki in the mountains of Mikasa.

日本語→中国語の翻訳はそれなりに正確なのに、英語になると、全く意味が分からなくなってしまいますね。

百度翻訳版

If you look at heaven, you will find it It is on the moon of Mikasa

天の原が天国になってしまっていますね。

 ここまで読んで気づいた方もいらっしゃると思いますが、実はこの翻訳でDeepLでも中国語訳・英訳ともに致命的な間違いをしています。

「春日なる」は春天(春)でもspring timeでもなく、奈良の”春日”という地名です。三笠の山 は奈良市春日大社の後ろにある春日山の一峰です。

 参考までに、百人一首には多種多様な英語版が発表されており、そのうちの一つは、

Looking up at the sky I see the moon shining brightly in all its glory. It strikes a nostalgic chord in me as I remember that moon over Mt. Mikasa at Kasuga of Nara.

となっています。

 詩的な表現はDeepLでもなかなか難しいようで、完璧とまでは言えないようでが、通常のビジネス文章の翻訳は、やはりGoogle翻訳等に比べれば格段に優れていることも事実です。

 DeepLを使って、省力しながら、最後は自力で確認する作業を怠らない。そうした使い方がやはり必要かなと思います。

 私の使い方は、英語と中国語は文法的にも似ているので、まずは中国語で作成した文章を英語に翻訳してみて、英語でもきちんと文章が成立していれば中国語が正しいことが分かりますし、英語で書いたものを中国語に翻訳してみるとより分かりやすい中国語になっていたりします。

 お薦めの使い方は、中国語⇔英語⇔日本語⇔中国語の何回か修正を加えて文章を作り上げること。この作業を繰り返していくと、確実に文章力が上がると同時に、中国語、英語の勉強にもなります。もちろん、中国語力と英語力のそもそもの向上を図るための努力は続けないといけないとは思いますが、便利なAI技術は使うに越したことはないかなと思います。

 皆さんも一度、試してみてはいかがでしょうか。

※DeepL翻訳(ディープエルほんやく、英: DeepL Translator)は、2017年8月28日にサービスを開始した無償のニューラル機械翻訳サービスで、ドイツのケルンに本拠地を置く DeepL GmbH (Linguee(英語版)) が開発した。Google 翻訳よりも精度が高く、微妙なニュアンスのある翻訳ができると肯定的な報道を受けている。 
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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