気温が急激に下がってきた。いつものコースを走って自宅の方に戻るころ、通勤する人たちとすれ違うのだが、ダウンや厚手のコートにマフラーや手袋をつけている人が増えた。まるで真冬のようだ。秋は駆け足で過ぎ去り、柔らかな季節はあっという間に終わってしまったようだ。
週末に渋谷と銀座に所用で出かけた。普段は土日に都心に出ることがほとんどないため、その人混みのすごさは驚きであった。特に渋谷の交差点は人でごった返し、ぶつからずに歩くのも一苦労なほどだった。
日本政府観光局(JNTO)が15日に発表したところによると、10月の訪日外国人数は251万6500人に上り、新型コロナ流行前の2019年10月を0.8%上回る結果であった。これは単月としては初めてのコロナ前水準超えで、前月比で約1.5倍の増加であった。訪日客の増加は観光関連消費に大きな影響を与えており、観光庁によると、2023年7月から9月にかけての消費総額は1兆3904億円に達し、四半期ベースでは過去最高だった。円安の影響で、外国人観光客にとっては日本での買い物が実質的に安く感じられるのである。日本人にとっては高価なホテルも、外国人観光客にはそれほど高くなく、高級寿司店も海外の有名な寿司店に比べればかなり安価である。円安の今、海外からの訪問客にとって日本は天国のようなものかもしれない。私の周囲でも、毎週のように海外の友人が日本を訪れている。
先週の最大の話題は、米中首脳会談とそれに続く日中首脳会談であった。米中会談は、バイデン大統領と習近平国家主席の間でサンフランシスコ近郊において15日に開催された。昨年8月にナンシー・ペロシ米国連邦議会下院議長が台湾を訪問して以来、米中両軍高官の対話が停止してから約1年が経過し、今回の会談で対話再開に向けた合意がなされた。台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐため、緊密な意思疎通の維持が目的とされている。
バイデン氏と習近平氏との関係は長期にわたる。米中首脳会談では、バイデン氏が「我々の付き合いは長い」と述べ、習氏も12年前のバイデン氏の訪中時を回想し、「交流を鮮明に覚えている」と表明した。バイデン氏は以前から「世界のどの指導者よりも習近平氏と会っている」と公言しており、通訳のみを同席させた会談で80時間以上を費やし、1万7000マイル(約2万7000キロメートル)を共に旅したと語っている。2011年の訪中では、北京に加え四川省成都を訪れ、大地震で被災した高校も訪問した。公式会談だけでなく、食事などを通じて長時間を共に過ごした。翌2012年には、習氏がバイデン氏の招待を受け米国を訪問し、ホワイトハウスや国務省での公務日程をこなした後、バイデン氏との夕食会に出席した。この時のゴールデンブリッジを背景にした習氏の写真を、バイデン大統領が報道陣にスマートフォンで見せた時の、彼の満足げな表情が印象的であった。報道陣の質問に対し、バイデン大統領が「習近平氏は、われわれとは全く異なる政治形態の共産主義国家を運営する独裁者だ」と述べたことは、バイデン大統領が習近平氏を友人と感じている故のアメリカンジョークと思われた。
その後途絶えていた両大国首脳の直接対話が復活したことは、素直に喜びたい。今回の訪米で、習近平国家主席は米国の主要企業の首脳との夕食会にも出席した。アップルのティム・クック氏、半導体大手のクアルコム、ボーイング、ファイザーなどの幹部も参加。イーロン・マスク氏は夕食会前のレセプションのみに参加したと報じられている。これほど多くの企業幹部が一同に集結し、習氏との会合に参加した事実は注目に値する。
習近平国家主席は16日には、アジア太平洋協力会議(APEC)で演説を行い、「中国経済は回復と改善を続けており、質の高い発展を遂げている」と述べた。また、「市場志向、法治主義、国際的なビジネス環境を維持し、外資に対して差別のない高度なサービスを提供する政策に変更はない」と強調した。日本のメディアでは中国経済の悪化が報じられているが、習氏の演説は中国におけるビジネス環境に対する懸念を和らげる狙いがあると思われる。特に反スパイ法の改正が中国事業を行う海外企業に与える影響に注目が集まっている今、中国経済が世界経済に与える影響は大きく、習氏の発言の信憑性は重要な意味を持つ。
同日、岸田首相が習近平国家主席と1年ぶりに会談した。米中会談が4時間に及んだのに対し、日中会談は約1時間だった。福島の処理水放出問題に起因する中国による日本産水産物の輸入禁止が議題に上った。この問題は中国国民に敏感に受け止められており、短期間での解決は難しいかもしれないが、両国は解決に向けて継続して話し合うことで一致した。岸田首相は、「今後も緊密な意思疎通を重ねることで合意した」と発表したと報じられた。今後の進展に期待したい。
アメリカからは、もう一つ嬉しいニュースが届いた。
大谷翔平選手がアメリカン・リーグの最優秀選手(MVP)に選ばれた。2年振り、2度目の受賞で、満票での2度の選出は史上初の快挙である。打者として44本塁打、打率3割4厘、95打点。投手として10勝5敗、防御率3.14、167奪三振。史上初めて2年連続「2桁本塁打、2桁勝利」を達成し、投打「二刀流」で歴史的な活躍を見せた。
多くの人が彼の活躍に元気をもらったことだろう。まだ来季の所属球団が決まっていないが、どの球団に行っても活躍すると思うし、応援し続けたい。出来れば力のある球団に移籍し、ワールドシリーズの大舞台で投打で活躍する姿を見てみたいと思う。
MVPの発表の際に、テレビに映し出された大谷選手の隣に鎮座していた愛くるしい犬が話題になった。「コーイケルホンディエ」という犬種らしい。コーイケルホンディエは、オランダ産の小型犬の一種で、 日本ではまだ知名度が低く、ブリーダー自体も少ないらしい。私はジョギングの往復で毎日結構たくさんの犬に出会うが、コーイケルホンディエは見たことがない。大谷選手に懐き、賢そうな姿に、飼ってみたいと思ったのは私だけではないだろう。
11月19日記