社長エッセイ

社長の日曜日 vol.40 冬木の桜 2024.01.22 社長エッセイ by 須毛原勲

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 1月20日(土)は「大寒(だいかん)」。大寒とは、二十四節気の一つで、1年の中で最も寒い時期を表すものである。今年の大寒は、1月20日から2月3日まで。寒さは最も厳しいが、同時に冬の終わりを告げ、春への準備期間とも考えられている。

 公園の桜の木は、葉がすっかり落ちて枝だけとなり、この木が桜であることを皆が忘れてしまうような姿になっている。しかし、3月下旬には桜の花が満開になる。どんなに冬が厳しくとも、春は必ずやってくる。あと2ヶ月少しで、待ち遠しい春が訪れる。

 先日、遅めの初詣で深大寺へ足を運んだ。深大寺は開創1300年を誇り、東京近郊では浅草寺に次いで2番目に古いお寺であるとされる。深大寺では、護摩祈願を受けた。護摩は、日本やチベットなどで伝わる密教の代表的な儀式で、ご本尊の前で僧侶が様々な供物を焚き上げ、厄や災いを払い清め、ご本尊の加護を祈るものである。本堂の左右で高く炎が舞い上がり、5人の僧侶が、それぞれ太鼓を打ち、鐘を鳴らし、そして全員で唱える読経の響きわたる声は心地良く、それでいて迫力満点。思わず引き込まれてしまった。ご利益があることを願うものである。

 僧侶の法話が印象深かった。今年は辰年で、十二支の中で唯一、想像上の生き物である龍の年。この龍を思い起こさせるのが、「画竜点睛」という成語だ。この成語は、中国の古い伝説に由来し、直訳すると「竜の絵に目を点す」という意味であるが、背後にはより深い意味が隠されている。伝説では、古代中国の画家(一般的に「張僧繇」とされる)が壁に竜の絵を描いた。この画家は非常に巧みで、描かれた竜は生きているかのように見えた。しかし、彼は意図的に竜の目を描かなかった。人々が理由を尋ねると、「目を描くと竜が飛び出す」と彼は答えた。好奇心から、人々は竜の目を描くよう彼に頼んだ。一つの目を点じた瞬間、竜は壁から飛び出し空へ昇って行った。

 この話から、「画竜点睛」という言葉は、「最後の仕上げ」や「肝心な部分を加えることで全体を完璧にする」という意味で使われるようになった。ほぼ完璧なものに、小さな部分を加えることで、その価値や効果が格段に高まる状況を指す。対照的に、「画竜点睛を欠く」とは、重要な最後の一点が欠けている状態を表し、ほぼ完璧であるにもかかわらず、最も重要な部分が欠けているために全体の効果や完成度が損なわれることを意味する。小さな欠陥が全体の価値を大きく損なう状況を指すのだ。僧侶は、何事も最後の詰めが大事であると説いていた。

 さて、1月17日、日本政府観光局(JNTO)は、2023年12月の訪日外国人客数を発表した。この報告によれば、12月の訪日外国人客数は2019年同月比で108.2%増の273万4000人となり、新型コロナウイルス感染症拡大後の単月としては過去最多を記録した。また、12月としても過去最多の数値である。更に、2023年訪日客の旅行消費額は計5兆2923億円で過去最高だった。消費額は政府が目標として掲げていた通年5兆円を初めて突破した。消費額を目的別に見ると、宿泊費が最も多く、買い物よりも体験を重視する傾向が強まっている。「モノ」を買うより、宿泊先をより高価なところを選ぶなど、「コト」への変化が進んでいるようだ。

 2023年の年間訪日外国人客数は、合計2506万6100人に達し、2019年比で78.6%まで回復した。上位国は、1位韓国696万人、2位台湾420万人、3位中国243万人、4位アメリカ205万人、5位香港211万人であった。

 2019年と比較して最も伸び率が高かったのは韓国で、2019年比で24.6%増となった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が2022年5月に韓国大統領に就任し、日韓関係が改善したことが追い風になったと考えられる。政治の力である。

 一方、中国からの訪日客数は全体では3位ではあるが、2019年比で74.7%減であり、完全回復にはまだ遠い状況である。中国の景気後退の状況から海外旅行をするという経済的な余裕がないのが原因か、やはり処理水の問題が尾を引いているのかは分からない。それでも、中国からの訪日客数が回復に向かっていることは事実である。実際、2022年には19万人に過ぎなかった訪日中国人客数が、2023年には242万人に急増しており、2022年と比較すると1182%の伸び率を見せてはいる。環境が更に改善すれば、大きく伸びる可能性は秘めている。

 日本航空(JAL)は、次期社長に客室乗務員(CA)出身の鳥取三津子氏を起用するという発表を行った。1月2日の羽田空港での事故の際、炎上する機体から367人の乗客と12人の乗員、計379人全員が無事に脱出できたのは、客室乗務員の冷静な対応と迅速な避難誘導によるものであるとして、その勇気と専門性を世界中が称賛したのは記憶に新しい。このタイミングでのCA出身の鳥取三津子氏の社長就任は、必然のような気がする。

 辰年と申せば、我がジャイアンツにとっては、創設90年を超える長い歴史の中で特別な意味を持つ年である。この年には、リーグ優勝を5回達成し、さらに日本一に2度輝いたという非常に輝かしい記録を有している。

 辰年の今年、もちろん優勝が願いであるが、少なくとも終盤まで優勝争いを繰り広げてほしいものである。

1月21日記

by 須毛原勲

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