社長エッセイ

社長の日曜日 vol.41 微笑みの国 2024.01.29 社長エッセイ by 須毛原勲

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、月探査機「SLIM(スリム)」が、目標地点からの誤差が100メートル以内の「ピンポイント着陸」に成功したと発表した。JAXAの平野大地主任研究開発員は「世界初となる完全自律の複数のロボットによる月面探査を達成した」と強調した。2台の小型ロボットが連携して得た画像も公開した。世界では、米国、旧ソ連、中国、インドに続いて5カ国目の月面着陸の成功。「ピンポイント着陸」と「完全自律の複数のロボットによる月面探査」はいずれも世界初の成果で、今後の資源探査で日本の強みとなるとのこと。

 元日に発生した能登半島地震による重苦しいムードの中にあっての明るいニュースである。JAXAの素晴らしい功績に心より賛辞を送りたい。当初太陽電池パネルが稼働しないというハプニングもあったが、着陸直前に月面に放出した2台の小型ロボットはおおむね正常に作動し、画像を地球に届けた。撮影したのはタカラトミー、ソニーグループや同志社大学などと開発した超小型ロボット「レブ2(通称SORA-Q=ソラキュー)」で、重さは約250グラム、大きさは野球ボールほどだという。JAXAの小型月着陸実証機SLIMの特設サイトhttps://www.isas.jaxa.jp/home/slim/SLIM/index.htmlで月面の撮影映像が見られるが、月面の岩石に犬の名前をつけているらしい。しばいぬ、(トイ)プードル、あきたいぬ、ブルドッグ、かいけん、セントバーナードなど。今後、新たな石には、「コーイケルホンディエ」と名付けられるかもしれない。

 先週、タイへ出張した。バンコクのスワンナプーム国際空港に到着すると、タイ特有の甘い匂いが鼻をかすめた。

 タイ訪問の回数は数えきれない。初めての訪問は35年前の新婚旅行で、行き先はプーケット島だった。シンガポール駐在時代の1998年から2003年の間には出張で年に4、5回は訪れていたと思う。タイは東南アジアでは大きな国であり、1997年の通貨危機当時は事業再生が急務だった。その後シンガポールを離れ中国に駐在している間も、上海ベースで東南アジアの事業責任者を兼ねていた時期があり、何度もバンコクを訪れた。東南アジアで最も好きな国のひとつである。日本人にとって親しみやすい国のひとつではないだろうか。

 タイは、「微笑みの国」と称されるように、総じておおらかな国民性で、温厚・親切な人が多い。一方で享楽的であり、毎日、楽しく暮らしたいと思う人が多い。気候は一年中、温暖。料理も美味しい。

 タイ人も日本に対して親近感を抱いてくれている。コロナ禍の状況下のアンケートで、コロナ禍が終わったら行ってみたい国ランキングで、日本が37%で1位だったという情報もある。実際、2023年年間訪日外客数でタイは約100万人。国別ランキングで韓国、台湾、中国、香港、米国に次いで6位である。

 一方で、タイの交通渋滞は相変わらずだった。空港から街中に向かう高速道路の渋滞はそれほどでもないのだが、いったん街中に入ると渋滞に巻き込まれ、たかだか1キロくらいの距離に30分以上かかったりする。バンコク滞在中は車での移動だったのだが、渋滞を予想して余裕をもって動いていたら、逆に早めに着いてしまってコーヒーショップで時間を潰さなければならないといったこともあった。ふと気がつくと、バンコクは至るところにコーヒーショップがある。スターバックスとかの有名店ではなく、ローカルのコーヒーショップが多数存在する。渋滞が日常のタイ人は、渋滞にいちいち怒ったりしない。早めに出て早すぎた場合にはコーヒーショップで時間を潰す。だからコーヒーショップが多いのかもしれないなどと思った。

 滞在中、同行してくれた現地パートナー企業の社長さんの気遣いがきめ細かく、とても快適だった。海外と仕事をするとき、コミュニケーションのレスポンスの早さは非常に大事である。今回のプロジェクト開始時から、彼女とは基本はメールのやり取りでコミュニケーションをとっていたが、彼女のレスポンスがもの凄く早い。ほぼ、即レス。すぐに回答が出せないような場合でも、受信確認といつ頃回答するかというメッセージを送ってくれる。海外と仕事をすると相手が何を考えているか不安になるときがあるが、彼女との仕事では全くそのようなことはなく、逆に、こちらが見落としているようなことにも先回りしてアドバイスをくれたりした。会議の場では、発言は控えめながら主体的に参加しサポートしてくれた。こちらが事前にお願いしたわけでもないのに、訪問先へ持参するタイ独特のお土産セット(お菓子等の詰め合わせ)を用意してくれたり、会議中に時間配分についてメモを入れてくれたり、細かい気遣いが嬉しかった。

 

 最近、日本企業の海外展開をご支援する機会が増えているが、中国の景気が精細を欠いている今、東南アジアへの進出を考える企業が増えてきている。その筆頭がタイである。そのような状況ではあるが、実際には日本企業のタイでの事業展開を支援することが出来る企業は多いとは言えないと思う。課題は、現地とのコミュニケーションである。

 当社のタイのパートナー企業とのコミュニケーションは英語である。一方で、これから海外展開を考える日本企業で、新規事業立ち上げをリードする知見を持ち、且つ英語や現地語を十分に使いこなす人材を確保している企業は稀である。その欠けている部分を補完、サポートしていくのが当社の役割。当社がタイのパートナー企業とともに、市場調査や事業性の検討、現地の販売代理店候補の選定や面談の設定等をすべてチームで支援させて頂く。更には、タイだけでなく、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシアにも広くネットワークを有している。今後、彼らと力を合わせ、日本企業の東南アジアへの進出を支援していこうという思いを新たにした。

 さて、私はラグビーや野球が好きなことは過去にも触れてきたが、相撲も大好きである。バンコク出張中も毎日大相撲の結果をチェックしていた。初場所では横綱照ノ富士が13勝2敗で関脇琴ノ若と並び、優勝決定戦では横綱の壁の高さを見せつけて去年の夏場所以来4場所ぶり9回目の優勝を果たした。琴ノ若は惜しくも賜杯に手が届かなかったが、次の場所での大関昇進を確実にしたのは喜ばしいことだ。

 実は、今場所で最も注目した力士は、石川県出身の大の里である。私はもともと元横綱稀勢の里の大ファンだったが、大の里はその二所ノ関親方率いる二所ノ関部屋に所属している。昨年の5月場所で初土俵を踏み、今場所新入幕で11勝4敗を記録し初の敢闘賞を受賞した、弱冠23歳の力士である。

 彼の相撲は、突き、押し、右四つという奇をてらわない相撲。何番かの取組をテレビで見たが、強さと相撲の美しさが印象的だった。

 まだ髷を結えないざんばら髪だが、髷が結えるころには三役になっている可能性もある。楽しみが増えた。

1月28日記

by 須毛原勲

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