社長エッセイ

社長の日曜日 vol.42 立春 2024.02.05 社長エッセイ by 須毛原勲

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 今日2月4日は立春であり、暦の上では春の始まりである。近所の公園の早咲きの梅は何本か満開になっている。昨日は節分で、夕食には家内が作った恵方巻きを食べた。恵方巻きを節分に食べる習慣は、大阪での商売繁盛を願う風習が起源であり、1980年代の商業キャンペーンを通じて全国に広まったものであるという節がある。関東生まれの昭和世代の私が子どもの頃にはなかった風習で、正直、豆まきの方が馴染み深い。マンション住まいのため少し遠慮しながらだが、豆まきをした。

 先日、久しぶりに人間ドックを受けた。初めて近所の病院で受けたのだが、そのアットホームな雰囲気と丁寧な対応が心地良かった。胃カメラでの検査の際、医師は咽頭、食道、胃、小腸へカメラが進む度に、モニターを通じて詳細な解説をしてくれた。まさに実況中継のよう。幸いにも胃は状態が良く、「素晴らしい胃ですね」、「ヒダも綺麗」、「多分、素晴らしい生活環境だったのでしょうね。」などと褒められた。素晴らしい生活環境のわけがない。海外駐在生活20年、特に中国での13年間は毎日のように接待と白酒の過酷な日々だったが、その間にも健康な胃を維持できたこと、丈夫に産んでくれた母親への感謝の思いが湧いた。モニター越しに見た自分の内臓に、愛おしさを感じた。

 2月1日で、能登半島地震発生から1ヵ月が経過した。仮設住宅への入居や、受け入れ態勢が整っていなかった地域へのボランティア受け入れなども始まり、少しずつ前に進んでいるようだ。

 今から10年以上前になるが、中国駐在時代、中国の販売代理店のトップを和倉温泉や輪島へ報奨旅行で連れて行き、和倉温泉の有名な加賀屋の姉妹旅館「あえの風」に宿泊したことがある。その際のおもてなしに、中国の代理店幹部たちがみな感動していたことが思い出される。ホームページを見ると加賀屋もあえの風もしばらく休業が続くようだ。みんなで訪れた輪島の朝市が火災でほぼ焼失してしまったことにも大きな心痛を感じる。本当に一日も早い復興を願うものである。

 先週、上川外務大臣に対する麻生太郎氏の発言が世の中を賑わした。

 事の発端は、自民党の麻生太郎副総裁が1月28日、地元福岡での国政報告会での挨拶で、上川外務大臣の働きを褒めようとしている中で、上川外務大臣の名前を何度も間違ったり、年齢や容姿を揶揄するような発言をしたということである。

 上川大臣はその後30日の記者会見で、「さまざまな意見や声があると承知しているが、どのような声もありがたく受け止めている。」と答え、事を荒立てずスマートに回答した。その後、蓮舫参院議員などが、この「大人の対応」はおかしい、と発言したり、2日の参院本会議で行われた代表質問では、立憲民主党の田島麻衣子議員が、「なぜ抗議しないのか」と質問した。

 それに対して上川大臣は、

 「私は初当選以来、信念に基づいて政治家としての職責を果たすという活動にまい進してきた。WPS(※)という新しい動きを主流化すべく、根付かせるための仕事に全力を注いでいる。」と述べた上で「世の中には、さまざまなご意見や考え方があるということは承知しているが、使命感をもって一意専心、緒方貞子さんのように、脇目も振らず着実に努力を重ねていく考えです。」と述べ、さらに、「田島議員、ぜひWPSいっしょに頑張りましょう!」と、逆に協力を呼びかけた。

 偉大な緒方貞子さんの名前を出されているのも、上川大臣が目指しているのは緒方貞子さん級の働きであって、「次元が違う」と言わんばかり。冷静に淡々と答えることで、麻生元総理の発言を抹殺し、且つ、志の違いを見せつけ、田島議員に対しても、「代表質問の場で議論すべき大切なことはもっと他にあり、そんなことを質問している場合ですか?」と言っているようで痛快だった。上川大臣の対応には、ルッキズムや女性蔑視を軽視しているのではないか、といった批判もあるようだが、それはそれとして、政治の場で時間を割いて行うべきもっと大きなことに集中したいという極めて志の高い姿勢として私は受け止めている。因みに、1月29日、上川大臣の下、省内横断的な連携を目的とした女性・平和・安全保障(WPS)タスクフォースが設置されている。

 麻生氏は2日夜、「上川大臣の功績を紹介する趣旨であったとはいえ、容姿に言及したことなど表現に不適切な点があったことは否めず、各位からの指摘を真摯に受け止めたい」として発言を撤回した。失言をして、すぐに撤回するような一連の言動はもういい加減にしては如何だろうか。

 以前、このコラムでも取り上げたことがあるが、上川外務大臣のご活躍には就任以来敬意をもって注目していた。

 最近でも、12月にスイス連邦を訪問し、第二回グローバル難民フォーラムに出席。その間、フランス、ヨルダン、レバノン、イランの外相と会談。1月に入ってすぐ、5日から18日まで欧州、北米そしてトルコを訪問。その間、ポーランド、ウクライナ、フィンランド、スウェーデン、オランダ、米国、カナダ、ドイツ、トルコの外相と会談。ポーランドではドゥダ大統領表敬、ウクライナではゼレンスキー大統領表敬、オランダではルッテ首相表敬、トルコではエルドアン大統領表敬と目が回るようなスケジュールをこなしている。まさに、外務大臣の椅子を暖めている暇も無いほどの八面六臂のご活躍である。距離も時差もある。多くの人に会うためには、そのための準備も大変だろうし、会っているときは120%の熱量で語りかけなければならないので気力も体力も消耗する。

 外務省のホームページに各国訪問の写真が掲載されているが、どの写真のお姿もしっかりと背筋を伸ばして、正面を見据えて、凜としておられる。そんな上川外務大臣のお姿に握手をする各国の首脳の方々も敬意を払っているように見える。あのトルコのエルドアン大統領でさえ、上川外務大臣に礼を尽くしているように見える。

 外務大臣としての職務を果たすべく日夜を惜しんで世界中を飛び回り、我が日本国の代表として、凜として、もう一方の国の代表の方と対峙する。

 そのお姿は、美しさを越えて、崇高でさえあると私には思える。

2月4日記

※WPSとは女性・平和・安全保障(Women, Peace and Security: WPS)

 外務省ホームページ    

https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/c_see/pageit_000001_00152.html

by 須毛原勲

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