スタッフエッセイ

中国のカーボンニュートラルに向けた動き 2022.07.27 スタッフエッセイ by BSQ

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 2020年9月の第75回国連総会一般討論会にて習近平主席が、“中国は2030年にカーボンピークアウトに到達して、2060年までにカーボンニュートラルを実現することを目標とする”と発表以来、全世界的に中国のカーボンニュートラルに向けた取り組みが注目され始めた。   

 中国においては、2021年初頭から、共産党中央政府の政策から産業応用技術の開発や全く新しい技術の開発や投資建設に至るまで、あらゆる領域で「カーボンピークアウト」「カーボンニュートラル」という言葉が広く使われるようになった。すべての産業発展と社会活動において、CO2排出削減をメインとした脱炭素社会を建設するという前提条件が当たり前のことのようになってきた。

 カーボンニュートラルという言葉は新しく聞こえるが、“省エネ技術” “排気ガス削減”と言えば以前からあった。しかし、中国はこの数年前まで環境対策よりも経済成長を優先してきており、環境対策を国の大きな目標とはしてこなかった。ここに来て、中国は世界一のCO2排出国として地球温暖化防止と経済の継続発展のために、CO2排出削減、その先のカーボンニュートラル社会実現の重要性を認識し、国家目標として今後40年間の政府の行動方針と経済産業発展における一つの評価項目として掲げている。

 中国は世界の工場と呼ばれて久しく、世界中のグローバル企業が中国において製品を製造している。中国のCO2排出の少なくない部分が海外企業の中国における製造から排出されていると言える。つまり、中国のCO2排出削減に始まるカーボンニュートラル実現には全世界のサプライヤーチェーンの参画が必要であり、世界中の最新技術の応用が不可欠である。

 日本は既にカーボンピークアウトを実現している国であり、省エネ技術及び製品、カーボンニュートラルに使われる新しい技術を有している企業も多くあり、今後の中国のカーボンニュートラル目標実現に莫大な市場チャンスが生まれきて、数多くの日系企業が既に動きだしている。中国政府としてはカーボンニュートラルの実現に向けて、日本の成熟した技術と製品を応用して早く効果を出すことを期待している。

 中国政府・産業界は当然、国として独自の先端技術開発に投資を進めていくが、世界中の成功例を参考にして現地に導入することも多い。その意味で日中間の経済・産業面での相互活動が多くなり、特に水素などの領域で企業間の活動が活発化してきている。

 カーボンニュートラル及び脱炭素社会の実現は、今まではグローバル企業がESG活動を行い自社の社会責任を宣伝してきたが、今後はすべての企業にとって当たり前のことになってゆき、ひいては企業機構だけではなく個人に至るまで履行する責任が生ずる。そのようになって来ると、製造企業だけでなく、非製造企業、例えば弁護士事務所、コンサル会社のような企業も自らの責任を果たすための脱炭素行動を取るべきとなってくる。各企業は専門のカーボン管理部門を設置することまで要求されるとも言われている。

 そうした変化に対応するためには、中国の中央政府、地方政府のカーボンニュートラルに向けた政策を把握していかなければならない。

 私は、2021年にほぼ一年をかけて中国のカーボンニュートラルの政策方針と産業界の動向に関するレポート制作に携わった。

 私は一人の中国人であるが、日本企業に永年関わる一人の中国人として、日本企業が中国のカーボンニュートラルの向けた取り組みに関わりながらビジネスチャンスを掴むことを期待している。カーボンニュートラルへの動きは、今後の数十年間に亘り、日本と中国の友好的な相互発展の礎になるのではないかと思っている。

 人と地球の明日の為にも、両国間の壁を越えて一緒に何とかしたいと思っている。

by BSQ

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