中国「カーボンニュートラル」ビジネス

中国「カーボンニュートラル」ビジネス 2021.08.30 スタッフレポート by 沖虎令

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 2020年9月の国連総会に習近平中国国家主席がビデオ参加し、2030年の「CO2排出ピークアウト」と、2060年の「カーボンニュートラル」達成目標を表明した。この二つの目標そのものについては、いろいろな解説があるのでここでは触れない。なお、日本の「カーボンニュートラル」目標は2050年。

 中国は現在、発電、工業、暖房などで石炭、石油の消費が多く、目標へのハードルは高く見える。実際、2020年の中国のエネルギー別発電比率は、「石油+石炭+LNG」≒60%。これを2030年≒25%、2060年≒20%にする、という計画が出されている(出典:国家発展委員会エネルギー研究所)。

 非常にアグレッシブ。というより、無茶では?とさえ見える。

 ではこの目標をどのように達成するのか? 

 2021年4月の会議で、中国国務院科学技術部の王志剛部長(大臣)は以下のように話した。

「科学技術がこの2つを同時に実現する上でのカギだ。CO2排出ピークアウトとカーボンニュートラルは一連の科学技術の結論、科学技術の方法及び技術イノベーションの成果を検証し、これらを生み出すよう促進するものとなる。」

「CO2排出ピークアウトとカーボンニュートラルは今後、科学技術革命によって、経済・社会環境の重大な変革をもたらすだろう。その意義は第三次産業革命にも引けを取らないものであり、科学技術に携わる人々が中国の国情に軸足を置き、科学技術イノベーションを通じて中国の未来の低炭素発展を支える競争上の優位性を形成することを願う。」

(出典:2021年4月19日 人民網日本版)

 具体的には、先に挙げた計画でのエネルギー別発電比率目標は、「風力+太陽光」が、2020年≒15%、2030年≒40%、2060年≒60%、となっている。

 自動車についての目標は、全自動車販売における純電気自動車の比率が、2025年20%、2030年40%、2035年50%以上、である。

 また、日本ではあまり話題になっていないが、中国は従来型ガソリン車をハイブリッド車に置き換える政策を打ち出している。ガソリン車中のハイブリッド車比率目標は、2025年50%、2030年75%、2035年100%、と2035年にはすべてが省エネ車になる。(出典:中国自動車技術者学会「省エネと新エネルギー自動車技術ロードマップ2.0」)。

 この政策は2020年6月に発表され、2021年1月から実施されており、それまで中国はハイブリッド車をガソリン車と同じと扱ってきたため大きな転換になった。トヨタのシェアが拡大している背景に、この政府の新方針があり、トヨタはまた、積極的にハイブリット関連技術を中国メーカーに供与して仲間づくりをすすめている。

 しかし、科学技術部王部長のコメントにあるように、発電や自動車の低炭素化だけでなく、全ての炭素排出を削減しなければ、2030年「CO2排出ピークアウト」、2060年「カーボンニュートラル」は達成できない。

  そのため、今後新たな建造物は太陽光発電ができる構造にする。暖房、厨房機器は電化する。製鉄など工業も電化し、溶鉱炉は電炉にする。ごみを分別し、焼却量を減らす。など様々な施策が打ち出されている。

 この動きは環境対策にも通じ、日本企業の得意とする技術が生きる余地が大きい。

 これらの施策を見ると、全てを電気化する、という点に収斂され、電力の大量生成、高効率蓄積が必要になる。そのため、発電、送電の低炭素化は低炭素のために根本的で必須の技術課題となり、この点の実現が前提となる。発電は再生可能エネルギーにシフトする。  

 以下、発展すべき技術の例として、再生可能エネルギーと直流送電について紹介する。

 発電所で生成された電力は、通常交流送電方式で送電している。直流送電は送電効率は優れるが、変電損失が多くて交流送電に劣ることが理由だ。しかし、直流送電は再生可能エネルギーの太陽光・風力発電と親和性が強い。太陽光・風力発電は、共に得られた電力は直流で、そのまま送電できるからだ。

 「太陽光+風力」の発電比率を40%、60%と上げて行くとき、中国ではこれらの発電を直流送電と組み合わせるプロジェクトが多い。現在各地域で進められている直流送電プロジェクトは、高圧直流送電 (high-voltage, direct current 、HVDC)と呼ばれるシステムを採用し、送電時の電力損失が3%程度(交流送電は6%)と少なく、遠距離、大容量送電ではコストが安くなる特徴がある。そのため、遠隔地での太陽光発電、洋上風力発電、水力発電用に技術開発を急速に進めている。

 HDVCは欧州で早くから実用化されており、システムをABBなどから導入してきた。今後の再生可能エネルギーの増強に向けて、中国は独自開発技術、中国製品への置き換えを業界あげて進めている。技術的難易度が高いが、補助金をはじめとする資金投入や、海外企業との共同開発、合弁での部品製造を通じて国産化する方針だ。更には再生可能エネルギー発電とHDVCを組み合わせたシステムインフラの海外への輸出も計画している。

 カーボンニュートラルに向けた産業は、中国で今後大きな規模になるとみられている。

  

by 沖虎令

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